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85年の歴史を誇るアイアンマンマガジンの歴史とは?元発行人ジョン・バリック氏が語るボディビルへの情熱

アーノルド・シュワルツェネッガーとのトレーニングで学んだこと

私は幸いにして何度もアーノルド・シュワルツェネッガーとトレーニングを行う機会に恵まれた。彼から学んだこと?それはもう山ほどある。それについて話し出したら、ここで何時間も、何日もかけて話をすることになってしまうほどだ。それをあえてひとまとめにして言うなら、彼のボディビルに向かう姿勢と凄まじいほどのトレーニング強度を私は彼から教わった。
アーノルドはエドと一緒に『パンピングアイアン』の映画に主演した。撮影のためにトレーニングしていたとき、私は実は3人目のトレーニングパートナーだった。残念ながら私が一緒にトレーニングしているシーンは使われなかったけどね。でも撮影のための6週間、私はアーノルドと寝起きをともにし、一緒にトレーニングを行い、共通の時間を過ごすことができたんだ。
アーノルドはよくフランコ・コロンブとも一緒にトレーニングをしていた。私も何度もその仲間に加えてもらった。そのたびにいつも感心させられたのはアーノルドのとてつもない集中力だった。あれほど高い集中力を注いでトレーニングを行うボディビルダーを私は知らない。現在のボディビルダーたちの中でも、彼ほど集中してワークアウトする選手はいないと断言できる。どんな内容のワークアウトを行うときもそうだった。その一方で彼はユーモアも忘れなかった。ジムにいるときの彼は実に楽しい男だったんだ。
あるとき、私たちはゴールドジムで一緒にトレーニングをしていたんだけど、そこにひとりのボディビルダーがやってきた。彼はコンテストに出場するための調整を行っているのだと言った。でも、出てくる言葉はトレーニングがうまくいかないとか、食事がうまくいかないといった不平ばかりだった。それをしばらく聞いていたアーノルドがついにこう言ったんだ。
「そんなにイヤならやめたら?他に好きなことを見つけた方がいいよ。はっきり言って、嫌々調整しても絶対にいい結果なんかでないから」ってね。
そのボディビルダーは一見しただけで素質に恵まれていた。でも、結局ボディビルダーとしては成功しなかった。アーノルドの言葉通りの結果になったんだ。
すでに現役を引退し、ハリウッドで活躍するようになり、世界的な知名度を持つアーノルドだけど、彼は今でもウェイトを手にしただけで気分が盛り上がると言っている。彼はトレーニングが好きで好きでたまらないんだ。それと集中力だね。あるとき私が腕のワークアウトの最中にもうあと4セットを行うと彼に告げると、彼は即座にこう言って私の言葉を否定した。
「違うよ、ジョン。今行っているレップスのことだけを考えなきゃダメだ。先のことなんか考えてる場合じゃないよ」って。今行っているレップスのことだけを考える。それ以外のことを考えるのは無駄だってこと。それだけ集中して、今行っているレップスのことだけに意識を注ぐことが大切だってことを私は教わったんだ。

アーノルドと一緒にセミナーを行う

私はボディビルダーのための栄養学について過去に小冊子を数冊発行したことがあった。タイトルは『体脂肪を屈曲させることはできない』というもので、理想的な筋肉を作り上げるための食事についての記事を執筆して小冊子にした。食事についての知識は持っていた方だから、アーノルドの栄養士を務めたこともあった。あるとき、私はアーノルドと一緒に食事についてのセミナーを開くことになった。
と言うのも、ちょうど私の友人がセミナー開催を専門に行う男がいて、彼がそれを提案してきたんだ。私はアーノルドにその話をしてみた。アーノルドは是非やろうと乗ってきた。ただし、彼は私にこう言ったんだ。
「実際にセミナーをするのはジョンだ。僕はセミナー会場でサクラになる」ってね。あの一言には笑った。でも、実際私たちはそのセミナーを開催したんだ。
セミナーに備えて、私は100ページ相当の小冊子を作成した。食事やサプリメントが体内でどう消化されていくのか。食事とサプリメントはどう違うのか。そんな話を山ほど盛り込んだセミナーだった。もちろん宣伝したら確実に出席者は集まるはずだったけど、私たちはセミナーの定員を15名に制限した。その代わり、セミナー代金を150ドルにした。当時の150ドルはもの凄く高額だった。でも15名は確かに集まったよ。
最初に行ったセミナーはシカゴが会場だった。果たしてセミナーは成功したのか。正直、私はセミナーを終えてがっかりしてしまったよ。なぜなら、食事がどれほど身体作りに大切なのかってことを真剣に知ろうという人がほとんどいなかったからだ。私が何ヶ月もかけ、膨大な量の情報を集め、それをまとめて下準備をしたセミナーだったけど、出席者は対して関心を示さなかった。ではなぜ150ドルもの高額なセミナーに15名は集まったのか。みんなが興味を持っていたのはアーノルドだった。アーノルドがセミナーにやってくる。アーノルドに教えてもらえる。それだけで人々はセミナーに出席したんだ。誰もがアーノルドの食事法を聞きたがった。アーノルドの口から、彼がどのような食事をしているのか、さらにどのようなやり方でカール種目を行ってあれだけの腕を作り上げたのかを知りたがった。
でも、あのときの経験は役に立った。『アイアンマン・マガジン』ではできるだけ難解な表現は避け、ハウツーものの記事を盛り込むことが読者のモチベーションを高めるってことを学んだ。そういう情報こそが実践的であり、読者のやる気を高め、読者が情報を活かすことができるんだ。
アーノルドと私はその後、もう1回だけセミナーを行った。アーノルドはその後、まもなくして『スポーツイラストレイテッド』誌で取り上げられ、映画『パンピングアイアン』で主演し、たちまち世界的な著名人になっていった。

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