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【筋肉超人伝説】ボディビル最軽量級の男が努力を重ねて日本3階級を制覇(後編)

◆そして世界へ

紆余曲折ありながらも選考され、自費ながら世界選手権に出場する事となったジャガーは、競技人生最後のステージに向け、日本選手権以上の仕上がりを目指してトレーニングと調整に邁進し、遂に夢の舞台であった世界選手権のステージに立った。最初で最後の世界選手権のステージだ。
出場する70㎏級には田代誠選手の姿もあった。
田代選手は、2001年から2004年にかけての日本選手権での四連覇を始め、ワールドゲームズ、世界選手権、そしてアーノルドクラシックなど、世界の舞台でも活躍する日本が誇るワールドクラスの選手の一人だ。2006年からの6年間、ステージから退いていたものの、2012年に7年ぶりに復帰すると、ブランクを全く感じさせない完成度の高い体で優勝争いを演じ、その圧倒的なポテンシャルで再び存在感を示す事となった。
田代選手についてさらに触れると、現役の日本選手権出場選手中、トップアベレージの戦績を誇っている。1998年の日本選手権初出場でいきなり3位表彰台を獲得すると、 2001年からの4連覇を含み、17年までに出場した全ての日本選手権の舞台で表彰台に立っている。 これは7連覇中の鈴木雅選手を上回る安定感を示す素晴らしい戦歴で、長年にわたって完成度の高い体とコンディションを維持し続けているという証拠だ。 ジャガーにとっては雲の上の存在とも言える田代選手、そして世界の強豪
とのタフな戦いだが、競技人生を締め括るに相応しい最高の舞台となった。

吉田:世界選手権での目標はあったのかな?

ジャガー:世界は初出場ですし、レベルがどのようなものか分かりませんでしたから、明確な目標は立てていませんでした。それよりもベストなコンディションで臨めるように気持ちを注力しました。

吉田:同じクラスに田代選手も出場していたよね。

ジャガー: 田代さんには色々お声掛け頂いたりして、心強かったです。自分の中では他の日本人も含めてチームという意識が強かったです。

田代誠選手と佐藤貴規選手

吉田:確かに国際大会では、「個人」というより、「チーム」という意識が強くなるよね。日本チームが一致団結して大会に挑んだわけだけど、力を出し切れたのかな?

ジャガー:与えられた状況の中では最大限の力を出し切れたと思います。

吉田:出し切った上での7位という順位については?

ジャガー:あと一歩で入賞だった事を思うと、もう少し何とかならなかったのかという思いはありますが、タラレバを言えばキリがないので、それが実力だったと思います。

吉田:過去最高の体を作り上げて、まだこれから成長する余力が残っているにも関わらず引退とはもったいない気もするけど、悔いはない?

ジャガー:悔いはやっぱりあります。でも、自分の性格上、日本選手権で表彰台に上がっても、世界選手権で入賞しても満足はしないと思うんです。そうやってここまで来ましたので、自分で期限を設定しないといけないと思っていました。その期限内のゴールがここだったと思っています。

吉田:これまでの競技人生を振り返ってみて何を感じる?

ジャガー:競技を始めた当初は、まさか自分が東京を獲れるとも、日本選手権で入賞するとも思っていませんでした。目の前の一歩を登り続けて、周りを見てみたら高いところまで登っていたという印象です。反面、もう出来ないと限界まで取り組んでいたつもりですが、翌年には更に限界値を上回り、やはり振り返るともっと出来たのではないかと感じる事も多々あります。現役中は「少しでも上に」と現状に満足する事は出来ませんでしたから、振り返って自分の実績に何か思うのはもう少し後になってからだと思います。

吉田:最後に、これまで応援してくれたファンの皆さんにメッセージをもらえるかな。

ジャガー:競技生活をスタートする時から、本当にたくさんの方に支えて頂きました。成功したかどうか分かりませんが、ここまで来られたのは皆さんのお陰だと心から思っています。才能や努力は人並みだったと思いますが、自分が一番秀でていたのは環境だったと思っています。その環境を与えて頂いた皆さんにただただ感謝しています。これからも何らかの形でボディビルと接点を持ちたいと思っており、そこで恩返し出来ればと思います。競技を志してから18年間、ありがとうございました。

引退を決意し挑んだ世界の舞台で大きな輝きを放ち、有終の美を飾ったジャガー。6位以内の入賞まであと一歩及ばなかったものの、田代選手(9位)を抑えての7位獲得は、引退へ向けての素晴らしいはなむけとなった。競技人生に幕を引く事となったが、それは同時に人生の第二幕のスタート でもあるはずだ。ジャガーのこれまでの努力と功績に賛辞を送り、人生の新たな門出を見守り、今後の活躍を楽しみにしたいと思う。


佐藤貴規(サトウ・タカノリ)1979年6月28日生まれ 東京都出身

〈大会成績〉

2002年東京オープン60㎏級優勝、東京クラス別60㎏級2位 2003年東京クラス別60㎏級優勝、日本クラス別60㎏級5位 2004年東京クラス別65㎏級5位、日本クラス別65㎏級予選敗退 2006年東京クラス別65㎏級優勝、日本クラス別65㎏級5位、東京選手権8位 2007年日本クラス別65㎏級2位、東京選手権5位、東アジア選手権65㎏級優勝 2008年日本クラス別65㎏級2位、ジャパンオープン6位、東京選手権6位、東アジア選手権65㎏級優勝、日本選手権予選敗退 2010年日本クラス別70㎏級2位、ジャパンオープン6位、東京選手権4位 2011年日本クラス別70㎏級優勝、ジャパンオープン2位、東京選手権2位 2012年日本クラス別70㎏級優勝、ジャパンオープン2位、東京選手権優勝、日本選手権7位 2013年日本クラス別75㎏級優勝、日本選手権7位、アジア選手権70㎏級予選敗退 2014年日本クラス別75㎏級優勝、日本選手権6位 2015年日本クラス別65㎏級優勝、日本選手権5位、アジア選手権65㎏級4位 2016年日本クラス別75㎏級2位、日本選手権5位 2017年日本クラス別75㎏級優勝、日本選手権5位、世界選手権70級7位

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