トレーニング ヘルスケア mens

「無理をしなければケガは防げた。無理をしないと世界大会には出られなかった」レジェンドたちの失敗から学べ!~トレーニング法再点検~小沼敏雄

情報過多の今の時代若い人たちを見て感じること

股関節もひどく痛めました。私はスクワットなど、股関節を使う種目を多くやっていました。レッグプレスもハックスクワットも、ワイドスタンスで深くしゃがんでやっていました。その疲労が蓄積されていたんだ
と思います。左の股関節に痛みを感じながらもトレーニングを続けていました。ある日ワンレッグのレッグカールをやったときにバキバキ!という音がしたんです。そこからはもう、全然ダメですね。足を引きずって歩くようになってしまいました。
でも、痛めていないほうの脚だけで、何とかがんばれるものなんです。そうこうしているうちに、 今度は右の股関節を痛めてしまいました。ストレッチをやっていなかったということも原因だと思います。腸腰筋というものの存在を知らなかったんです。四頭筋や内転筋などは伸ばしていましたが、腸腰筋のストレッチはやっていませんでした。インナーマッスルをケアしていく。そこが長くトレーニングができるかどうかの分かれ道になるかもしれません。
最近の若い人たちを見て思うのは、ガムシャラに取り組むような人は少なくなりましたが、キッチリとしたフォームでやる人が増えたように感じます。昔はフォームを崩してでも上げるという人が多かったですが、今はきれいなフォームでやる人のほうが多いように感じます。
雑誌やインターネットを見れば、トレーニングフォーム、栄養、サプリメントのことなどが分かる。トレーニングに関する情報が溢れているので、きれいなフォームで上げたほうがいいということを分かっているんです。トレーニングがうまい人が増えたという印象を受けます。

世界マスターズでの苦悩直前の調整での失敗談

調整で失敗したのは世界マスターズに出場したときです。40歳のころですね。私の仕上がり体重は82㎏でした。ですが、世界マスターズでは80㎏級に出場していました。バリバリに仕上がった状態から、さらに2㎏を落とさなければいけない。早い段階で落としてしまうと、そこから体を戻せなくなって、萎んだままの状態で出場することになってしまいます。だから、現地に到着してから、大会直前に落とすようにしていました。
お風呂に入ったり、出たりを繰り返しながら落としていくのですが、落しすぎるのもよくはありません。79.8㎏など、計量をパスできるぎりぎりの体重を狙って調整していくのです。そこで私は、乾燥したままのオールブランを食べました。乾燥しているものだったら、食べても体重が増えないだろうと考えたからです。体重が落ちたら食べて、落ちたら食べて…を繰り返しました。体重は狙い通りにいきました。でも、そのあとが大変でした。水分をとらずに食べていたものだから、便秘になってしまったんです。もう、お腹がパンパンに張ってしまった状態です。
さらには、無理に出そうとしたら、痔になってしまいました。腸が飛び出してしまったんです。どう対処したらいいのか分からなかったので、一緒に行っていたウチの(典子夫人)に聞いてみたら、指で押し戻せばいいと(苦笑)。出てきたら指で押す、それを何度も繰り返しました。大会当日は痛くて、パンプアップどころではありませんでした。体を膨らまさなきゃいけないから、欲張ってしまったんです。体重を落としながらも、体の中にたくさん詰め込みたかったんです。
79.8㎏で計量をパスして、試合のときは82㎏以上にしたかったんです。ただ、82㎏にしようと思って食べても、82㎏の体重は残せません。かなり食べて84㎏くらいまで持っていかないと、大会当日に82㎏は残せないんです。計量が大会前日の18時くらいにあるのですが、朝はあまり食べられないので、体を戻すには計量後の夕食が勝負になります。そこでものすごい量を食べたら、すべて戻してしまい、萎んだままの状態で当日を迎えてしまったこともありました。
そこで思いついたのは、味がついていないものを食べているから、なかなか体重も戻らないんだろうと。ホテルで出されるビルダー食には味がついていませんでしたから。塩やオリーブオイルなどを日本から持っていき、味付けをするようになりました。そこから少しはマシな仕上がりで出場できるようになりましたね。


小沼敏雄(こぬま・としお)1959 年1月2日生まれ。埼玉県出身。1978 年、大学2年生のときにコンテストデビュー。1983年、ミスター東京&ミスター関東優勝。1985 年、ミスター日本初優勝。87年から99 年までミスター日本13 連覇。14 回優勝という前人未到の大記録を打ち立てる。2002 年、世界マスターズ40 歳以上80kg 級優勝。日本ボディビル界の生ける伝説。


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。


-トレーニング, ヘルスケア, mens
-, ,