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トレーニングは「ぶっ飛び」が大事だと、ボディビルのスーパー高校生が日本王者に学んだ大切なこと

――まず、今回坂本選手がベンチプレスを行っていく中で、相澤選手から多くのアドバイスが出てきました。
坂本 そもそもの話ですが、僕はいつも一人でトレーニングを行っていて、指摘をしてくれる人はいないんです。また、今までもいませんでした。今回多くのことをアドバイスしていただいて、発見できたことが多かったですし、アップデートするものが多いと感じました。僕は今まで“閉じる”という感覚を知らなかったんです。今回相澤選手に「内転筋で閉じて踏ん張る」ということ初めて聞きました。それもあって、大きく改善しようと思いましたし、今日からベンチプレスの質を上げていけるんだと思いました。
――特に「ここの改善をしなければならない」というものはなんでしょうか。
坂本 相澤選手にも言われて気が付いたのですが、“ケツ上げ”は良くないと言われて、これは人それぞれだと思いますが……。でも、トップ選手の方から言われると、そこに自問自答してしまいます。どうしようかなと……。そこは、やはりべた寝でやっていった方が良いんでしょうか?
相澤 私が教える立場だとしたら、ケツ上げベンチプレスは絶対に教えません。ケガのリスクの面が多いからという理由です。でも私自身はやっています。それは私が選手であり、ある程度腹をくくって取り組んでいるからです。それを、坂本選手や他の方に指導するのはリスキーであり、それこそフリーウエイトのベンチプレスは身体の接地している面積が少ないので、動作が不安定になります。それを指導してケガをさせたら、取返しのつかないことになります。だからこそ、私自身は自己責任として取り組むべきだと考えています。
今回アドバイスしたポイントを押さえつつ、正しい動作ができるようになってから重量を伸ばしていく必要があります。ケツ上げは、可動域が少ないので必然的に扱える重量は上がります。でも、それにも限界がありますし、坂本選手でも分かるかと思いますが、300㎏などという重量は挙がりませんよね? そういうふうに考えたときに、自分自身の挙げられる重量の天井が見えてくると思います。例えば、天井に達したときに、「コントロールして達した天井」なのか、「がむしゃらに上がってきた天井」で比べたら、筋肥大においてはコントロールして達した天井の方がはるかに上回って強いと思います。そういうふうにコントロールする感覚は坂本選手の中にもあるはずなので、そこで重量を伸ばしていくのもありだと思います。
ただ、扱えるキャパシティを大きくできる点では、どんな形であれ重量を持つということも大事だと思います。でも、重量が全てではないということも大事にしてほしいと思います。
坂本 競技者としてレベルアップを図るなら、僕は今後もケツ上げでいこうと思います。また、リスクを理解するということも必要なんだと感じました。
相澤 リスクを理解できれば、それに対しての対処法を同時に知ることができます。しかし、リスクを理解しないまま取り組んでいたら、「何が良くなかったのか」ということが分からなくなります。そうなると、再び同じケガをすることとなります。その同じケガをしてきた人が私自身でもあります。最近また椎間板ヘルニアを発症して、今度は2つのヘルニアが分かりました(笑)。そうなると、トレーニングには大きく影響してしまいます。
坂本 気を付けていてもヘルニアになってしまうんでしょうか……。
相澤 私は気合が先行していたので、リスクの面を考えていませんでした。だから、そのケガを経て、リスクを少しずつ理解してきて、長く続けられるトレーニング、ケガをしないトレーニング、でも結果が出るトレーニングを追求しています。それでも、まだまだ私自身分からないことは多くありますし、勉強不足だなと実感しています。
坂本 いわゆる“気合”で行うトレーニングは、短い命のトレーニングになってしまうんでしょうか。
相澤 言ってしまえばそうなりますよね。
坂本 僕は、その短い命のトレーニングを、運良くケガをしないでここまで来れたのかなと思います。
相澤 肘はどうなんですか……?
坂本 いつの間にか治っちゃいましたね(笑)。そもそも、最初からケガなんかしていなかったのかもしれません。僕はエビデンスにはまらないやり方でここまで来ていました。言い方を変えれば、知らないことが多くてエビデンスにはまっていなかったのかと思いました。もしかしたら、エビデンスにはめようとしていないだけなのかも分からないですが……。僕がエビデンスにはめられたときに、自分はどうなるのかというところは非常に気になります。そういう意味では、上京して体育系の大学に進学できるのは楽しみであり、正解だったのかと思います。
相澤 環境は大事ですからね。
坂本 応援してくれる方はいましたが、教えてくれる人はいませんでした。
相澤 私の周りにも教えてくれる人はいませんでした。コーチもいないですし、大学でも多くは教わってきていませんでした。
 
最後に、坂本選手が伸び悩んでいる部位である「脚の外側」について、相澤選手から改善策となるアドバイス教えていただいた。

――以前より課題だとおっしゃっていた脚の外側に関しては、今回はハックスクワットを用いて実践していきました。
坂本 普段から、強化するためにハックスクワットは取り組んでいます。相当やっています。
――今日教えていただいたハックスクワットとの違いは感じたのでしょうか。
坂本 僕は、どちらかと言うと内側で押すタイプなのですが、外側を意識して足を真っすぐにするやり方は初めてでした。そういう意味では良い機会となりました。
――相澤選手が、動作中に「足の指をパーにしてみてください」とアドバイスをしていました。
相澤 実際はパーではないんですが、極端に言ってみました。坂本選手は、ハックスクワットの動作中に足の指でフットプレートを握っていました。そうなるとつま先重心になってしまうので、そういうときの対処法としてアドバイスをしました。指に力が入ると膝関節が優位になるので、膝周りしか発達しなくなります。また、膝ばかりが動作して股関節の外側広筋の起始である大転子の部分が動かなくなります。そういう理由で、指をパーにする意識で股関節から落とすように意識すると良いかもしれません。実際、私もそうやって取り組んでいく中で、外側への効きはよくなりました。
――坂本選手は実際に行ってみてどうでしたか?
坂本 相澤選手の言う通り、すごく感覚が掴めるようになりました。次回の自主トレーニングから早速取り入れていきたいです! すでに、自分のものにした感覚です。
相澤 ちなみに、私の大学の直属の先輩で、大腿直筋を研究している先輩がいて、私が被験者となり大腿直筋に効かせるレッグエクステンションをやったんです。大腿四頭筋に対してMRIと超音波検査を行ったときに、股関節屈曲位かつ膝関節屈曲時に力を入れた際に外側広筋が一番反応した。その状態のときが、外側広筋が反応するという結果が出ました。そういう研究を、今後大学でするのも非常に参考になると思います。
坂本 僕、身体を固めるのが下手ですよね? 
相澤 うーん……。ベンチプレスも見ていて思ったんですが、少しだけ関節が正しいポジションからズレている感じがしました。でも、それは続けていくうえで上手くなっていくものですし、いきなり完璧を求めてはいけないと思います。そこで、完璧を求めようとすると重量が伸びないですし、かといって重量に走るとケガをします。なので、そこの中間を求めていくのが王道ではないかと考えています。
坂本 今日、相澤選手に気づかせていただいたことが多かったです。教えていただいたことは一発でできるので、来週から成長するのではないかと思います!
――相当な自信ですね!?
坂本 はい。もとからそういうタイプで、二度聴くタイプではないです。なので、今日の指導は本当に有益な時間となりました。

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