フィットネス HYROX

「隠す」から「ありのまま」へ――上肢障害を乗り越え、HYROXで掴んだ真の自由【HYROX WARRIORS no.25】

世界的に話題のフィットネスレース「HYROX(※)」で活躍する選手に迫るコーナー。第25回は、サラリーマンの宮本晃輔(みやもと・こうすけ/35)さんを紹介する。

※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。

【写真】ゴール後に江崎さんと熱い握手を交わす宮本さん

宮本晃輔さん

障害を理由に諦めない――「挑戦の火」

宮本さんは、右手指4本、左手指3本という上肢障害があり、握力もほぼない。かつては自分の体を隠すように夏でも長袖を着て、人の目を気にする日々を送っていた。

しかし、日本障害者ゴルフ協会の活動を通じて「ありのままで楽しめる仲間」に出会ったことで、心の壁が崩れ始める。

「クロスフィット宝塚のオーナー・江崎千晶さんからHYROXという競技を教わりました。様々な障がいを抱える人でも参加できる『アダプティブディビジョン』が設定されている点に、大きな魅力を感じました」

1kmのランと8種のワークアウトを繰り返すこの過酷なレースは、握力が必要な種目も多く、宮本さんにとっては不安の大きい挑戦だった。

しかし、「障害があっても、やればできることを証明したい」という強い意志と、江崎さんとの「どうすればできるか」を共に考える姿勢が、不安をワクワクとした期待へと変えていった。

できない理由よりもできる方法――「不屈の精神」

トレーニングは、まさに創意工夫の連続。握力のない宮本さんにとって、重いソリを引く「スレッドプル」などは最大の難関だった。

しかし、江崎さんと共に、ロープを体に巻き付けて全身で引くといった独自のフォームを開発。

「できない理由を探すのではなく、できる方法を探し続けました。障がいがあるからこそ創意工夫をして様々なトレーニングを行い、本番に臨みました」

仕事前の早朝には、地元・高砂市の高御位山に週2〜4回登ることを自らに課し、下半身と基礎体力を徹底的に強化。

バーピーブロードジャンプやサンドバッグランジといった、得意の脚力を活かせる種目での自信を深めていった。

「レースで一番キツかったのは、やっぱりスレッドプルでした。全身を使って引くため、想像以上に体力の消耗が激しく、タイムロスをしてしまいました。それでも練習の成果はしっかりと発揮できたと思うので、これからの課題種目として磨いていきたいと思います」

ゴールで見えた自分らしい生き方――「ありのままの姿」

本番当日、宮本さんはかつてのように腕を隠すことはなかった。

「クロスフィット宝塚のタンクトップを着て、スタートラインに立ちました。今までの自分は夏でも長袖を着て隠して生きていました。人の目をばかり気にして、正直、生きにくかった…でも今は多くの仲間と出会い、そしてHYROXと出会い、ありのままで生きることに決めました」

レース中は江崎さんが常に傍らで「あともう少し!いけるよ!」と声をかけ続け、仲間の声援が会場に響いた。

「ゴールした瞬間、感極まって江崎さんにハグしました。それは、これまでの葛藤や努力が報われた、一生忘れられない最高の瞬間でした」

この挑戦を通じて、宮本さんは「ありのまま生きること」の尊さを確信。HYROXは年齢や国籍、障害の有無を超えて互いを称え合う温かな場所だと感じたと話す。

「本当に幅広い人たちが一堂に集まり、互いに励まし、称え合える素晴らしい空間でした。自分を変えたい、何か一歩を踏み出したいと思っている人には心からおすすめできるレースです」

宮本さんの次なる目標は、2時間を切り、上肢障がい部門での優勝。ありのままを見せ続ける宮本さんのその背中は、生きにくさを感じる多くの人たちの心を、力強く支え続けていくだろう。

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文:林健太 写真提供:宮本晃輔

執筆者:林健太
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロ、大阪はミックスダブルスで出場。

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