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減量期こそ筋肥大!筋肉が風船のように膨らんでいく!?世界王者・五味原領が語る“逆転のボディメイク”術

減量したら筋肉が落ちるのは仕方がない……と、思う人もいるだろう。五味原領選手は「逆だ」という。国内外の大会に出場するため、一般的な増量・減量期間が設けられないからこそ、編み出した独自の方法論があった。

減量初期が身体作りの要
減量食を食べながら 筋肉量を増やしていく

━━五味原選手は減量をスタートさせてから、逆に筋肉量を増やしていくと伺いましたが、それは本当ですか?

五味原 そうですね、まずは私なりの言葉の定義をお伝えします。一般的に〝オフシーズン〞といえば増量期を指すと思います。たくさん食べて、トレーニングして筋肉量を増やしていく時期。
ですが、私にとってのオフシーズンとは、〝ボディビルから離れた生活〞のことです。好きなものを好きな量だけ、好きなタイミングで食べます。時には1日2食だけ、なんて日もあるぐらいです。トレーニングも休んでいることが多いですね。やったとしても重量を扱わず、1時間以内で終わるようなトレーニングが多いです。
そして減量をスタートした最初の1〜2カ月が、一般的に言われる〝オフ(増量期)〞になります。毎日、脂質を抑えめにした減量食をたくさん食べます。カロリーはそれほど気にしていません。そして、トレーニングは筋肉量を増やすためのプログラムを行います。休んでいる期間があるからこそ、トレーニングへの熱も入りやすいです。

━━それだけボディビルから離れると、筋肉量が減ってしまうかも、という怖さを感じてしまいませんか?

五味原 恐怖心はありませんね。もちろん見た目としてはしぼんでいくので「ヤバいな」とは思うんですが(笑)。私はこれを〝筋肉が溶ける〞と呼んでいます。そしてその溶けた筋肉ですが、どのようなプランで食事やトレーニングを徹底すれば筋肉が戻ってくるのかを知っているので、焦りや怖さはありません。むしろ、この休みがあるからこそ、私は毎年ボディビルに出場し続けることができています。ボディビルを続けるために私にとって最も大切な時期となります。

━━筋量が戻るということは、減量初期に体重が増える?

五味原 いえ、体重は増えもしませんし、減りもしません。ですが、見た目が変わってきます。身体が風船のように膨張していくような感じになるんですよ。この時期の食事内容は、あくまで減量食。なので、除脂肪しながら筋肉量を増やしている、と捉えています。
そして膨らみきったら次は除脂肪のフェーズ。これが一般的に言われる、PFCバランスやカロリー管理などもきっちり行う〝減量期〞。このタイミングでカロリー設定をします。身体のサイズはそのままで、脂肪や皮膚が薄くなっていく感じです。

━━溶けた筋量を戻すため、トレーニングも変えていく?

五味原 トレーニングのメニューが変わることはありますが、目的はどのタイミングでも一切変わりません。減量中でも常に筋肥大を狙い、毎日ノートを取って、少しでも重量の更新をしようと取り組んでいます。トレーニングの質が常に上がり続けるように配慮しています。逆に落ちてしまうようなら、食事の仕方を変えるなどの工夫をしますね。
体重がストンストン、と落ちていったら筋肉量は増えないし、体重がどんどん増加する状態では逆に除脂肪ができない。ちょうどその間を探って食事を取っています。

減量初期は、除脂肪しながら筋肉量を増やしているという段階です。体重の増減はありませんが、見た目が膨らんできます。

魚の脂質はゼロカウント
カーボサイクルならぬフィッシュサイクル

━━五味原選手は減量期の食事にもこだわりがありそうです。

五味原 オフ期間と減量期で大きく違うのは、脂質を制限しているかどうかです。減量期に入ったタイミングで、脂質制限を一気にスタートするのですが、〝魚の脂質はゼロ〞とカウントしています。
朝と夜は魚、昼は鶏胸肉300gで固定。魚の種類は、サバやブリ、マグロなど、脂質の高いものから低いものまでなんでも食べますし、量も決めていません。
減量が停滞したときに、カーボサイクルで打破することがあると思いますが、私の場合は自然と摂取カロリーに波ができます。それは、日によって食べる魚が変わり、それに伴って脂質が変わり、摂取カロリーが変動するから。これを大会当日まで行うので、カーボサイクルならぬ〝フィッシュサイクル〞をしていますね(笑)。

━━新しいサイクル!減量末期になるほど低脂質の魚を選んでいるというわけではないのですね。

五味原 はい、むしろ疲労感があったら脂を多く含む魚を選んだり、脂が多い魚の日が続いていたら少し控えたり、とか。スーパーで安売りしている魚を選ぶことが多いので、自分の食べたい欲に引っ張られずにいろんな種類の魚を食べられます。その日に安くなっている魚を選ぶというのも、結構いいのかな、と思いますね。

━━魚の脂質はそこまで気にせずに摂取されていることで、身体へのいい影響はありますか?

五味原 ホルモンバランスが乱れにくい、というメリットがあると考えています。減量期にストレスを感じるのは、ホルモンバランスが崩れているから。そしてこの乱れは脂質量に直結するな、と。私の場合、毎日食べている魚の脂質が、すごくうまく働いてくれているんじゃないかと思います。

━━良質な脂質といえば、肉やナッツ、MCTオイルなどもありますが、試されたことは?

五味原 もちろんありますが、私はそれで太りましたね。魚は食べても体重が増えなかったのと、日常的な過ごしやすさを感じました。それに気づいたのが2021年ぐらいのときで、そこからずっと魚を採用しています。脂質を魚で摂取するのがダメな人は、ほとんどいないだろうな、と思っています。

やるべきことは淡々と
トレーニングにおいては気持ちを高めていく

━━大会のシーズンが長いのも五味原選手の特徴です。だからこそ、独自のサイクルを設けられているのだと分かりました。

五味原 国際大会に出場すると、必然的に長くなります。さらに、開催月は決まっていないので、その年によってシーズンの期間も変わります。毎回短いな、と思いながら減量に突入しています(笑)。

━━大会と大会の間で休みを設けることは?

五味原 ほとんどありません。あっても1週間ぐらいです。始まってしまえば、集中力を高く保ち続けているような感じです。
私が考える、減量において最も大切なのは〝精神の安定〞です。そして淡々とこなしていくこと。「つらいことをしている」という気持ちになると、減量に対するハードルとしんどさが上がってきてしまう感じがします。だから、無心で淡々と減量を進めていくのが重要なのかなと考えています。
一方で、気持ちを高めていくことも、減量において重要な要素です。相反しているようですが、闘志を燃やしていけばトレーニングの質も高まります。

━━淡々と、というのは日常生活や食事面のことですね。

五味原 そうです。食事や日々のやるべきことは、タスクとして消化していくようなイメージです。一方、トレーニングは熱量を高めていく。大会前の最後1カ月は特にグッと燃えています。

━━ここまで自分なりのメソッドが確立されていれば、減量で失敗したことがなさそうです。

五味原 大会出場し始めた最初の2年間は「地獄だなぁ」と思っていました。トレーニングは頑張れていたけど、日常生活が普通に送れない。駅から大学までの20分が歩けなかったこともありました。
現在の私には〝オフ期間〞があるので、休んでいると除々に減量したくなってくるんです。「もうこれ以上休まなくていい、さすがに減量したい」と(笑)。毎回そういうマインドで減量に入るので、苦しいものではなく、むしろ楽しいもの。減量といい関係性を築くのも大切かもしれません。

減量期にストレスを感じるのは、ホルモンバランスが崩れているから。そしてこの乱れは脂質量に直結するな、と。

ごみはら・れい
1997年12月26日生まれ。東京都港区出身。セミパーソナルトレーニングジム『FitnessLounge Sync』経営。パーソナルトレーナー (ゴールドジム代々木上原店)。2023年IFBB世界選手権クラシックボディビル168cm以下級優勝。2024年IFBB男子ワールドカップ クラシックフィジークオーバーオール優勝。減量中のご褒美は旅行に行くこと

取材・文:小笠拡子 撮影:AP,Inc. 取材協力:Fitness Lounge Sync(フィットネスラウンジ シンク) 〒214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸2494 Salvere 6F 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美

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