マッスルゲート選手 コンテスト

乳がんで胸、病で卵巣など“女性らしさ”の象徴を失ったからこそボディコンテストで頑張る48歳の奮闘 「“伝説のビキニ婆さん”と呼ばれたい」【筋トレ】

7月12日(土)、仙台電力ホールで開催された『マッスルゲート仙台大会』。ビキニフィットネス・マスターズ35歳以上の部で見事優勝を果たしたのは、鈴木由佳さん(すずき・ゆか/48)。その裏には、病院ではなく“ジム”を選んだ、自分自身との挑戦の記録があった。

【写真】鈴木由佳さんの明るい笑顔とメリハリボディ

乳がん乗り越えジム入会へ!

「以前、駅のホームで炭酸ジュースを飲んでいたら、向かいのホームから“そんなもん飲むから脚が太いんじゃねーかよ!”と幼馴染に叫ばれたことがあるんです。神様、どうか脚を細くしてください……そんな気持ちで過ごしていました(笑)」

今の体型からは想像できない過去を振り返る鈴木さん。ボディメイクを始めたのは、身体と心の不調を抱えていたころだった。

「月の半分以上は頭痛に悩まされ、仕事以外はほとんど寝て過ごす日々。精神的にも限界で、カウンセリングを受けようかと検索したときに、出てきたのが“ジムの無料カウンセリング”だったんです。病院の薬代を、身体を鍛えることに使ってみようかな……と半ばやけっぱちでした(笑)」

過去に患っていた病気についても話してくれた。

「実は、10年前に乳がんが見つかり、治療によって命は守られたものの、ホルモンバランスが崩れ、体力が激減。日常生活すらしんどくなる中、それでも仕事や家事をこなそうと無理を重ね、精神的にも追い詰められていました。ボディメイクを始めたのは、そんな状態から抜け出したいと模索するなかでした」

最初は筋肉をつけるためでなく、健康を取り戻すための一歩だったそうだ。

「ジムに通ううちに体調もメンタルも安定し、“もしかしたら自分にもできるかも”という気持ちが芽生えてきたんです。気づけば身体も引き締まり、やめられなくなっていて(笑)。トレーナーの勧めと、大会に出ている方々の身体のかっこよさに惹かれて、“あの舞台を目指したら自分も変われるかも”と、大会出場を決めました」

大会を目指すことが、ボディメイク継続の大きなモチベーションになったのだ。

「今回の大会に向けては、弱点だった下半身を重点的に鍛えました。各種スクワットやヒップアブダクションなどで、お尻と太ももを徹底的に強化しました」

食事管理も徹底していたという。

「普段からPFCバランスを意識していましたが、大会3週間前からはカーボサイクルを実施。なかなか落ちにくかった体脂肪に刺激を入れました。さらに大会3日前からはカーボアップに切り替え、果物や餅を中心にエネルギーをしっかりチャージ。糖質が減ると頭の回転が鈍くなった感じはありましたが、むしろ余計なことを考えずに淡々と過ごせたのが良かったと思っています」

こうした努力の積み重ねが、優勝という形で花開いたのだった。

減量中に病気が発覚……それでも続けた挑戦!

「昨年のマッスルゲートは仙台大会で6位、北関東大会で2位という結果に悔しさを残し、全国大会『ゴールドジムジャパンカップ』への出場は叶いませんでした。その北関東大会の直前、減量の最終調整中に卵巣の腫瘍が見つかったのです。ただ、筋トレで仕上がった身体と持ち前の明るさで、病院でも筋トレの相談に乗ったりしていました」

「腫瘍は腹腔鏡手術で切除し、3月には無事に社会復帰。幸いにも手術痕はビキニに隠れる位置でしたし、体力の激減もなく、5月には通常のトレーニングが再開できました。トレーナーが無理のないようにメニューを組んでくれて、本当に感謝しています」

続けてこられた理由について尋ねると、こう語ってくれた。

「努力が成果に表れると信じられるようになったこと、家族や仲間が応援してくれたこと、親身になってくれるトレーナーがいたこと。すべてがそろっていたからだと思います。本当に皆様のおかげです」

そして、鈴木さんが目指す理想の身体は『100歳を過ぎてもビキニが似合うボディ』

「生涯現役で活動的な身体を育て続けて、“伝説のビキニ婆さん”と呼ばれたいですね(笑)。今は12月のマッスルゲートジャパンカップでの優勝を目指しています。仙台大会の優勝で出場権を得られたので、これからが本番です!」

さらに、同じジムの友人もジャパンカップ出場を決めており、「ペアで優勝しよう!」と励まし合いながら進んでいるという。

最後に、鈴木さんはこんな言葉で締めくくってくれた。

「病気のせいで失ったものが、胸や卵巣など“女性らしさ”の象徴だったからこそ、ビキニフィットネスという“女性らしさを輝かせる競技”に挑み続けたい。たぶん、心の奥でそう感じているのだと思います」

年齢も、過去の言葉も、変化の可能性を奪う理由にはならない。失ったものを嘆くのではなく、今ある力を信じ、前を向いて歩き続けた鈴木さん。その歩みは、人生をやり直すのに“遅すぎる”ことなどないと、力強く教えてくれているのではないだろうか。

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取材:佐藤佑樹 撮影:北岡一浩

執筆者:佐藤佑樹
主にFITNESS LOVEで執筆中。自身も大会へ出場するなどボディメイクに励んでいる。料理も好きで、いかに鶏胸肉を美味しく食べるかを研究している。

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