世界的に話題のフィットネスレース「HYROX(※)」で活躍する選手に迫るコーナー。第8回は、横浜大会プロ部門35〜39歳グループで準優勝に輝いた青山直美(あおやま・なおみ/36)さんを紹介する。
※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。

自分を高めるための新しい挑戦
「筋トレとランニングで“動ける体”を作る――それが私の理想でした」。
そう語る青山さんは、HYROXに出会ってから、日々のトレーニングを通してただ筋肉をつけるだけでなく、現実的な動作を通して体を使う面白さに魅了されてきた。しかし、初めてのレースを前にしたときは、不安の方が大きかったという。
「完走できるかどうか、本当に自分が最後まで動けるのか……。脚が攣らないかも心配でした。それでも、未知への挑戦で自己成長ができるというワクワク感が勝っていました」
不安を抱えながらもスタートラインに立ったその一歩が、青山さんの人生に新たなモチベーションを与えることになる。
限界を超えるのは仲間の力
出場に向けては、クロスフィットジムを中心に、筋トレとランニングを軸にしたトレーニングを積み重ねた。HYROX特有の種目を意識したワークアウトも多く取り入れ、ひとつひとつの動作を実践的に磨いていった。
「得意種目はバーピーブロードジャンプとファーマーズキャリーです。全身の連動性と持久力は自分の強みでもあるので、しっかりと実力を発揮できたと思います」
一方で、スレッドプッシュとウォールボール」には、想像以上に苦しめられた。
「スレッドプッシュは2つ目のワークアウトでしたが、かなり体力が削られました。最後のウォールボールは何度も心が折れそうになりましたが、周りの仲間の声があったからこそ乗り越えられました。」
青山さんにとって、HYROXは単なる個人競技ではない。共にトレーニングし、支え合う仲間の存在が、限界を超える力を与えてくれる。
「一人では絶対にできなかったことも、仲間がいるから挑戦できる。ハードなトレーニングも終わった後に『やり切ったね!』と笑い合える時間が最高なんです」
ゴール後に仲間と共に健闘を讃えあった瞬間は、今でも鮮明に心に残っているという。
HYROXがくれた変化、そして次なる挑戦へ
HYROXを通じて、青山さんの体と心は確実に変わった。トレーニングを重ねる中で、体は引き締まり、心の奥底にあった「自分にはまだできることがある」という思いが確信へと変わっていった。
「2024年11月には香港、2025年5月には韓国の海外レースにも挑戦し、韓国大会ではプロ部門の35〜39歳グループで優勝することもできました。言葉も環境も違う中で、同じ目標を持つ人たちと競い合えた経験は本当に刺激的でした。」
HYROXの魅力について尋ねると、青山さんは即答した。
「HYROXは、本当に“カッコいい”空間。みんなが同じ方向を向いて努力しているからこそ、自然と応援し合える。自分の力を思う存分発揮してゴールした瞬間は言葉にならないほどの達成感があります」
青山さんの次なる目標は、プロシングルのカテゴリでの自己ベスト更新。年齢を理由に限界を作らず、自分の可能性を信じて走り続ける。
HYROXの舞台は、誰もが同じルールのもとで、それぞれの目的に合わせたカテゴリで挑戦できる場所。自分で決めたことをやり遂げてゴールを迎えたその瞬間、きっと“自己成長”という最高の喜びが心を満たしているはずだ。
文:林健太 写真提供:青山直美
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロで出場。
-筋トレ, フィットネス
-HYROX, ハイロックス, HYROX WARRIORS










