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HYROX(ハイロックス)がくれた絆と夢――母と走る日を目指して【HYROX WARRIORS no.11】

世界的に話題のフィットネスレース「HYROX(※)」で活躍する選手に迫るコーナー。第11回は、HYROX横浜大会で笑顔のレースデビューを飾った前川早紀(まえかわ・さき/30)さんを紹介する。

※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。

【写真】好タイムを叩き出し世界を見据える前川さん
前川早紀さん

HYROXとの出会いがくれたワクワク

「いろんなスポーツをやってきましたが、何をやっても“そこそこ”止まり。でも、HYROXを知ったときに“これなら私も戦える!”と思えたんです」

前川さんにとってHYROXは、自分の可能性を信じられるきっかけになった。初挑戦は横浜大会。周囲から期待の声も多く届いたが、本人はあくまで冷静だった。

「ありがたいことにたくさん応援してもらいましたが、自分では“チャレンジャー”の気持ちでした。まずは今の自分を知ること。結果はその先でいいと思っていました」

大会に向けては、CrossFit世田谷のHYROXクラスを中心にトレーニングに取り組んだ。空き時間には自らメニューを組んだり、低酸素ランニングジムでのランニングインターバルにも取り組んだり、地道な積み重ねが確かな自信へとつながっていった。

支えてくれた仲間たちの存在

得意種目はローイング。大会前には1万メートルを漕ぐトレーニングや、高強度なインターバルトレーニングも重ねた。その結果、本番では女子カテゴリー1位のタイムを記録。スレッドプルも1位タイムで通過し、最終的にはエイジカテゴリ(24〜29歳)優勝、オーバーオール(総合)準優勝という素晴らしい結果に繋げた。

「どちらも得意という自覚はなかったので驚きました。練習の成果が報われて、結果も残せたのでホッとしました」

一方で、バーピーブロードジャンプには苦戦したが、終わってみれば楽しかった記憶しか残っていないと語ってくれた。

「永遠に終わらないかと思いました(笑)。でも、全種目を通して友人たちが応援に来てくれて、ずっと声をかけてくれました。走っている途中もどこかで誰かが名前を呼んでくれる。後半の苦しい時間も、その声に何度も助けられました」

次は母と一緒に笑顔で完走!

HYROXと聞くと”ハードな競技”という印象を持つ人も少なくない。しかし前川さんは、その魅力を穏やかに語る。

「確かに高強度なメニューもありますが、HYROXには制限時間がないんです。諦めなければ、誰でもゴールできます。走れなければ歩いてもいいし、不安ならダブルスやリレーでも挑戦できます。少しでも興味を持ったなら、出てみてほしい。きっと“出なかったこと”を後悔します」。

レースを通じて前川さんが得たのは、結果だけではない。

「HYROXを通して、仲間や応援してくれる人の存在の大きさに気づきました。挑戦を支えてくれる人がいるから、最後まで頑張れるんだと思います」

そして、前川さんの胸には新しい夢がある。

「一つは3年以内に日本人初のElite15世界選手権への出場です。そしてもう一つは、いつか母と一緒にダブルスに出場したいと思っています。親子で同じ目標に向かって走れたら、絶対に感動的なゴールが待っていると思います」

HYROXは、限界を競う場でありながら、人と人がつながる温かい空間でもある。笑顔で語る前川さんの姿から、HYROXが持つ“人を前向きにする力”がしっかりと伝わってきた。

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文:林健太 写真提供:前川早紀

執筆者:林健太
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロで出場。

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