ハードなウエイトトレーニングを実践している人であれば、腰を痛めた経験は1度や2度はあるだろう。また、慢性的な腰痛に悩まされている人も少なくない。
怪我や障害の際は専門医の診断と指示に従い、しっかりとしたリカバリー期間を設けるべきであるが、大会で上位入賞を狙うプロのボディビルダーやアスリートは、早くトレーニングを再開したいという気持ちが強いはずだ。しかし、焦りから不適切な再開をすれば悪化や再発を招くため、正しく段階的に復帰することが欠かせない。
そこで、本記事では米フィットネス誌がまとめたトレーニング愛好者のための腰痛に関する基礎知識や注意点、腰痛予防や腰周りのコンディショニングを目的としたストレッチなどを詳しく解説する。
本記事は、海外のフィットネス事情やトレーニング文化に関する情報をもとに構成された翻訳・編集記事です。日本国内の事情や環境とは異なる部分も含まれます。
(IRONMAN2025年9月号「from IRONMAN USA」より転載)
トレーニングによる腰痛
ジムに入会し、トレーニングを始めた途端に腰痛に悩まされるトレーニーは少なくない。原因としては主にトレーニングによる下背部の緊張持続や痙攣などが挙げられるが、「ただの腰痛だからすぐに治る」と放置すべきではない。
トレーニングで腰や下背部に痛みを感じるのは、何らかの組織損傷が起きているからだ。腰痛になると、トレーニングではなく場合によっては日常生活や仕事への影響も考えられる。
さらに、脊柱の中には全身につながる神経が通っているため、腰痛の原因となる損傷が下半身の炎症などの合併症を引き起こす可能性もあるのだ。そのため、腰に痛みを感じたら自己判断をせずに、改善する必要がある。
トレーニングが原因で起こる腰痛は、腰部に限定した痛みであり、脚への痛みやしびれを伴うような腰痛とは異なる。
考えられる要因
バーベルロウ、Tバーロウ、バックスクワット、デッドリフト、レッグレイズ、ローマンチェア・シットアップ、シーテッドツイストなど

もし腰痛になったら?
トレーニングをすぐに中止する
セット中であっても、腰に不快感や痛みがあればすぐに中止すべきだ。中には腰の痛みを我慢してトレーニングを続ける人もいるが、さらに負荷をかけることで、怪我がさらに悪化する危険性がある。

低強度の運動をする
○ 推奨される動き
- ウォーキング:毎日10~15分程度の早歩きを2、3日間続けると、痛みが軽減される可能性がある
- 水中エアロビクス
- 自転車漕ぎ
- 心地よい範囲でのストレッチ
× 推奨されない動き
- ランニング
- 垂直跳び
- 胴部のツイスト
- 下背部や腰の伸展
- 頭上にウエイトを押し上げる種目、肩を刺激する種目
アイシングを行う
痛みが起きたとき、氷嚢などがすぐに用意できる環境ならすぐにアイシングを行おう。翌日の痛みの程度が大きく軽減されることがある。10分ほど患部に押し当て、問題がなければ時間を伸ばす。保冷材は凍傷の危険があるため、絶対に使用を避ける。
絶対安静は逆効果? トレーニングで腰痛を治す
脊椎に関する専門誌『スパイン・ジャーナル』に、椎間板の変性による腰痛はウエイトトレーニングで改善される可能性があることが示されている。
研究では、トレーニング量と頻度を制限した中でランバーエクステンションを行うことで、損傷した椎間板に再生効果が得られることが判明した。
この結果に基づくならば、慢性的な腰痛がある人は量や頻度を制限した上で、負荷をかけたハイパーエクステンションやマシンエクステンションで改善する可能性がある。腰の負荷を抑えたい人には、ヨガの「コブラのポーズ」も有効だ。
1週間経過しても痛みが引かないときは病院で診察を受ける
腰を痛めないためにできること
正確なフォームを修得
骨格には個人差があり、厳格に手本のフォームに沿わなければならないというわけではない。しかし、一般的に正確なフォームはケガを避けながら対象筋に最大限の刺激を与えられる。
正しい姿勢を保持するためには、日頃から背中と腹筋を鍛えておくことも有効だ。体幹部を鍛えると脊柱を囲む筋肉が強くなり、姿勢を保ちやすくなる。

スクワットで関節が痛い
- 視線を斜め下に向ける(背中を平らに保ちやすい)
- バックスクワットからフロントスクワットに変える
レッグレイズで腰痛が起きる
- 種目変更も検討
レッグレイズは股関節の屈筋が固くなりやすく、腰が反って椎間関節に負荷がかかることもある。
筋力向上を目的としたストレングストレーニングでは、どの種目も脊柱をニュートラルの状態に保持して行うこと、つまり脊柱に余計な負担がかからないことが推奨されている。
脊柱をニュートラルの状態に保つと、対象筋が無駄な動作をすることなく、確実に刺激を与えられる。また、動作中、脊柱周りのケガや腰痛などを予防することにもなる。
姿勢を保つエクササイズ
① 壁に背を付けて真っすぐに立つ(後頭部、上背部、尾てい骨が壁に触れる)
② そのまま手を後ろに回し、下背部と壁の間に指が入る隙間があるか確認する
③ ②の背中の状態を保ったまま、再び手を真下に下ろす
トレーニングでは、このときの背中の感覚を保ちながら行おう
記録をつけて予防に役立てる
[基本の記録内容]
- 大まかな部位のサイズ測定
- 全身の写真(正面、背面、側面)を撮影
- 体組成の測定(体重、体脂肪率など)
- トレーニング内容
トレーニング前後にストレッチ

| 5~10分程度 低~中強度の有酸素運動 |
↓
| 2~5分程度 ダイナミックストレッチ(動作を伴う)+ スタティックストレッチ(対象筋を伸ばす) |
↓
| +α トレーニング後のクールダウンにストレッチ |
リフティングベルトを活用する
高重量でのトレーニング動作中、脊柱を立てて動作を行うことは下背部や腰を守るために必要不可欠だ。リフティングベルトを巻くと、腹筋が圧迫され、高重量でも腹圧を高めた状態を維持することができる。
使用する種目としては、スクワット、デッドリフト、ハイパーエクステンション、ミリタリープレスなどだ。
セット後はベルトを緩める習慣を
リフティングベルトで腹圧を高めて高重量トレーニングを行うと、血圧も高くなりやすい。身体の負担を減らすためにも、セットを終えるごとにベルトを緩めるようにしよう。
ウエストトレーナーはベルトの代用になる?

コルセットのように腹囲に巻きつける「ウエストトレーナー」は、あくまでウエスト矯正が目的であり、腹圧の保持や腰痛緩和が目的ではない。
それどころか、長時間の着用を続けていると呼吸障害、消化器系の問題、臓器の変異、骨折などの原因になりかねないので注意が必要だ。










