「努力すれば必ず報われるわけではないですが、本気で努力すれば絶対に無駄になることはない、その経験は必ずこの先自分自身の力になって返ってきてくれます。自分を信じてやり切るという大切さを今回の大会を通して学びました」
JBBF関西ブロックの開幕戦は2025年6月1日、神戸市産業振興センター・ハーバーホールで行われた。クラス分けなしのオーバーオールで行われた『第4回兵庫県クラシックフィジーク選手権大会』では、田中敬祐(たなか・けいすけ/31)さんが優勝した。田中さんは、同日行われた『第38回兵庫県クラス別ボディビル選手権大会』ボディビル65kg以下級でも5位入賞の成績を収めた。
田中さんは元々レスリングの選手
「学生時代、レスリングの大会で後輩に負けたことがきっかけで強くなりたいと思い、練習後一人で残ってウエイト場でトレーニングを始めました。そこから競技成績が伸び始め、身体も変わりだし、やれば変わるとわかって筋トレを続けました」
筋トレを始めてから数々の大会で入賞するようになった田中さん。2015年全日本学生レスリング選手権大会グレコローマンスタイル59kg級3位、2016年全日本選抜レスリング選手権大会グレコローマンスタイル59kg級 5位、2017年には日本代表としてブルガリア・ペトコシラコフイワンイリエフ国際大会に出場し、14位の成績を残した。
社会人になってトレーニングは継続していたが目標がなかった
「自分ではきれいな身体になったと感じていたけれど、周りからどう見えているのか、という他者評価が欲しくなり、同じ目的の人たちと比べてもらえるボディメイクのコンテストに出てみようと思いました。クラシックフィジークは筋肉、身体の美しさ、表現力、彫刻のような美しい身体の表現を自ら魅せる、というところが魅力だと思います」
田中さんは昨年も同大会に出場している。
「昨年、メダルを獲れると思って出場したのですが、予選落ちしてしまいました。そこからこの日のために、勝つために、トレーニングを行ってきました。この一年は競技者に会うのが怖くて、ジムに行くのも人と会わない時間帯に行ったり、基本的には職場や自宅でトレーニングを行なったりして過ごしてきました。孤独感も強く、劣等感を感じながらの一年。夢でも昨年の大会のことが出てきて、飛び起きるようなことも何度もありました」
減量時は一日2回のトレーニング、食事は常にクリーン
「筋トレは基本的に週6回で5分割。脚、肩、腕、背中、胸で、時間は脚を2〜4時間、他は1〜2時間ほどです。減量時は頻度を増やして1回1時間トレーニングを2回で、週10〜14回。午前中のトレーニングが5分割で脚、肩、腕、背中、胸。仕事終わりに脚の収縮種目メインのトレーニングのみ1時間を行います。トレーニングができない日が多い週はPPL法(※)で、動かしていない部位がないようにしています」
(※)Push(押す)、Pull(引く)、Legs(脚)の3つの部位のトレーニングを分けて行う筋トレ方法
「胃腸が強くないので増量、減量関係なくクリーンな食事を取るようにしています。食べているものはあまり変えずに、量やPFCバランスを変えて減量、増量を行っています。タンパク質は卵、魚、鶏肉、牛肉。脂質は卵、MCTオイル、ナッツ、魚。炭水化物は米、餅、芋をメインに取るようにしています。気をつけていることは神経質になりすぎないことです。体重を測り、週ごとの増減を見て食事を見直すようにしています」
戦いを終えて安堵の大号泣
「今回のクラシックフィジークは、今までとは賭けている思いが違いました」と田中さん。優勝が決まった瞬間、大号泣して観客ももらい泣きするほどだった。
「うれし泣き、というより報われた安堵で泣いたのは初めてでした。筋トレしてよかったことは明るくなれることです。他の趣味にも当てはまることだとは思いますが、本気で何かに取り組んでいれば、応援してくれる方や、同じ趣味の方との交流が増えていくこともうれしいです。戦ってくれた人たち、支えてくれた人たちに感謝したいです」
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材:あまのともこ 撮影:岡暁
主に『FITNESS LOVE』で執筆中。自身もボディコンテストに出場している。JBBF京都府オープン大会ビキニフィットネス(身長別)3位。マッスルゲート四国大会ビキニフィットネス2位。