JBBF選手 コンテスト

日本4度優勝のベテランを抑え体重別日本一に “バキバキすぎる背中”の富沢理恵 殻を破れたのは「弱み」でなく「強み」を伸ばす思考【筋トレ】

2位がコールされた瞬間、会場は大きくザワついた。日本選手権4度の優勝を誇る澤田めぐみを抑え勝利したのは、昨年一気にブレイクした富沢理恵。「強みをとことん伸ばす」方向にシフトし、精神面、肉体面ともにアップデートを遂げた富沢の次なる目標はミス日本でのさらなる躍進だ。

[初出:月刊ボディビルディング2025年11月号]

【写真】富沢理恵選手のバキバキな背中&筋肉質な身体

富沢理恵選手

──まずは日本クラス別初優勝おめでとうございます。番狂わせを起こしましたね。

富沢 ありがとうございます。正直、予選を通過できるかどうかすごく不安でした。実績のある選手が多く、自分がどれだけ通用するのか分からなくて。だから「せめてフリーポーズまで行けたら」と思っていたんです。それが優勝につながるなんて、本当に驚きでした。まさか自分が、トップ中のトップである澤田(めぐみ)選手を抑えて優勝できるなんて……考えていなかったので。

──大会後の反響はいかがでしたか。

富沢 SNSでも多くの方々がコメントしてくれて。「おめでとう」だけじゃなく、「自分のことのようにうれしかった」とか「勇気をもらった」といった声をいただきました。面識のない方からもそう言ってもらえて、応援してくださっていた方々の存在を改めて感じることができました。

記事が掲載されている月刊ボディビルディング11月号

──惜敗となった7月の東京選手権からの約1カ月半で変えてきたことはありますか?

富沢 東京のときは「ウエストを細くしなきゃ」「もっとプロポーションを良く見せなきゃ」など弱点ばかりを気にしてしまっていました。でも、それでは自分らしさが出せないと改めて感じたんです。そこで「弱点克服」ではなく「強みをとことん伸ばす」方針に切り替えました。自分の強みは〝デカさ〟だと。背中の広がりや厚みをさらに磨いて、重量感を最大限に出すことをテーマにしました。

──具体的な取り組みで言えば、どこを主に修正してきましたか? トレーニング? ポージング?

富沢 主にポージング面です。トレーニングはほとんど変化させていません。サイドポーズではひねりを強めてシルエットをはっきり出すなどの工夫をしてきました。

──独学で?

富沢 いえ、実は小沼敏雄さんのポージングアカデミーに通っていました。小沼さんは「肩の角度を数度変えるだけで腕の見え方が違う」「胸を張って腹を締めろ」「脚のカットを出せ」と、とにかく基本を徹底して指導してくださいます。自分で考えたポーズを一度作り、それを小沼さんに見てもらって修正を受ける。その繰り返しでしたね。
また、これまではステージに立ったときに横の選手との間隔が狭く、圧迫感を感じて少し遠慮がちにポーズをすることが多かったのですが、このポージング練習会では男子選手に混ざって練習するので、身体がぶつかる距離感にも慣れることができました。これまでは、「隣の人に腕が当たっちゃうかな……?」などと考えて少し後ろに下がったりしていたので。

──ポージングの洗練だけでなく、ステージング面もアップデートできたのですね。

富沢 あと、昨シーズンからの変化で大きかったことは、須江(正尋)さんからのアドバイスです。昨年のゴールドジムジャパンカップ後、審査員をされていた須江さんから「もっと堂々としないと、埋もれちゃうよ。参加者で唯一のファイナリストだったけど、最初のラインナップではどこにいるのか分からなかった」と言われました。そこから意識を切り替えて、ラインナップ時から迫力やオーラを出していけるよう意識しています。

──ある種、昨年の東京クラス別から一気に躍進されたので、まだ「挑戦者感」が抜けていなかった?

富沢 だと思います。そこの意識を変えていきましたし、今回の優勝でさらに意識を高めていかないといけないと感じています。

富沢理恵選手

──レジェンドたちの指導や言葉が進化の鍵になったということですね。次に、クラス別当日のコンディション面はどうでしたか?

富沢 当日は52・6㎏でした。今回、初めてカーボアップを試して、餅を一日に10枚ほど食べてみました。少しずつ食べて腹の張りを抑えつつ筋肉の張りを出せて、かつ体重も食べ込む前と変わらなかったので、一応成功なのかな?(笑)。

──ファイナリスト入りして初めてカーボアップを試す。凄まじい伸びしろを感じます。

富沢 まだまだこれから、進化していけると思います! あ! あと、トレーニング面はほぼ変えていないと言いましたが、脚に関しては変えました。毎日少しだけでも刺激を入れるようにしたんです。

──毎日ですか? それはなぜ?

富沢 太ももやお尻のもたつきを削りたかったんです。重いスクワットやプレスは週2回程度に抑え、それ以外の日は軽いエクステンションなどで、毎日刺激していました。そのおかげか、代謝を落とさずうまく減量を進められた面もあるのかなと。脚も血管がどんどん浮いてくる感覚がありました。

富沢理恵選手

──普段、スタジオレッスンなど身体をハードに動かすお仕事なだけに、疲労が溜まりそうですが……。

富沢 疲労……あったかな?(笑)。あまり感じなかったです!

──そのタフさも富沢選手の魅力の一つですね。さて、先ほどのお話にもありましたが、今回の優勝は富沢選手の競技生活の中でも一番と言えるほどのターニングポイントになったと。

富沢 澤田選手に勝ったことで、「もう中途半端な想いや身体ではステージには立てない」と強く感じました。もし私に勝って優勝した選手が、その後の大会でふがいない身体で出ていたら、すごく嫌な気持ちになるから。勝者には勝者の責任があり、敗者には敗者の潔さがある。私は何かに挑むならしっかり勝ちきりたいし、負けるときは完膚なきまでに叩き潰されたいんです。
特にそのことを実感したのが、昨年の東京選手権。漆島美紀さんに敗れて2位でしたが、もちろん負ける要素はたくさんあったのですぐ納得はしましたが、少しだけ心に引っかかるものがあり……。でも、その後の日本選手権で漆島さんは6位まで上がっていった。そのとき、数カ月前の敗戦がスッと腑に落ちる瞬間があったんです。「あ、だからこの人に負けたんだ」と。「この人に負けてよかった」とも感じました。

──確かに、自分に勝った相手が優勝したり活躍してくれると、少しうれしさを感じたりもしますね。

富沢 大会に行くと、フリーポーズ練習を何時間とやり込んできたのに、それを披露できずに帰っていく選手の姿を見ることもあります。それを見てしまうと、「フリーポーズ嫌い」なんて言っていた自分が恥ずかしくなってきて。フリーポーズができる権利を与えられた人は、敗けてしまった人の分まで全力で挑まなければならないと思うようになりました。

富沢理恵選手

──その責任を背負って日本選手権へ挑むと。

富沢 はい。さらに絞り込み、特にお尻のストリエーションをもっと出したいです。今は大会後に食べてしまって一時的に体重が増えていますが、ここから少し落として脚のシャープさを保ちながら全体の質感を高めていきます。昨年10位だったので、今年は表彰台を狙っていきます。

次ページ:富沢理恵選手のバキバキな背中&筋肉質な身体

取材・文:月刊ボディビルディング編集部 撮影:中原義史

●とみざわ・りえ
1970年1月13日生まれ/55 歳/埼玉県出身/身長;160cm/体重:52kg(オン)、56kg(オフ)/スポーツクラブのインストラクター、介護予防運動指導員、介護職員/ 2024 年東京クラス別158cm超級優勝、2024 年東京選手権2位、2024年日本女子フィジーク選手権10位、2024年ゴールドジムジャパンカップ優勝。2025年日本クラス別選手権女子フィジーク163㎝以下級優勝

-JBBF選手, コンテスト
-, ,

次のページへ >

おすすめトピック



佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手