「大会で結果を残す、などの目標ももちろん素晴らしいですが、自分自身と向き合い続け、様々な経験を得ることで身体はもちろん、人間的にも向上させてくれることがボディビルの魅力だと感じています」
4月6日、門真市民文化会館で行われたマッスルゲート大阪大会。ボディビル65kg以下級では「ムキムキー」「がんばれー」という幼い子どもたちの声援が会場に響いた。その瞬間、会場全体がほっこりした雰囲気になり、「あの応援には他のどんな応援もかなわんなぁ」という声が聞こえた。応援されていた宮本理玖(みやもと・りく/25)さんは、2位の成績を収めた。
宮本さんは、サッカーを幼稚園から20歳まで続けていた。
「高校サッカーを引退し卒業した後、身体を動かしたかった、太りたくなかった、強そうな身体になりたかったという理由で筋トレを始めました。現在筋トレは7年目、週5回で1時間半前後、各部位週2回ずつトレーニングしています」
以前通っていたジムで、大会に出ている会員さんの、「出てみたら?」の一言で宮本さんも大会に出るようになった。公安系の公務員に内定していたが、そのタイミングで初めてコンテストに出場し、トレーニングの世界にのめり込んでいった。
「2019年、身長161cmで仕上がり体重が54kgしかなく、骨と皮くらいの状態だったのでノリと勢いでしたが、そこからハマり抜け出せなくなりました。好きなことを通して人の役に立てること、そして、仕事の都合でトレーニングできない日が増えるのは絶対に嫌だと思ったことが決定打となり、トレーナーという道を選びました」
「奥さんと付き合い始めた当初は、減量の影響で喧嘩ばかりして迷惑をかけていた」という宮本さん。大会でもなかなか結果が出ずに苦しんでいたという。
「コンテストである以上、他者との競争はつきものです。そこでなかなか結果が出ないことや減量がうまくいかないことに苦しみ、トレーニング自体が嫌になってしまう人もいます。実際に僕も4年間入賞できず、自分の身体が嫌になる時期がありました。でも、正しい努力を積み重ね、自分自身と向き合い続けることで、自ずと結果もついてきます。思うようにいかず苦しむ方に、少しでもこのことが伝わればいいなと思います」
宮本さんが大会で結果を出したのは2023年8月のマッスルゲート神戸大会。クラシックフィジーク新人の部で優勝し、メンズフィジーク168cm以下級でも優勝した。
「結婚してからは『好きにしていいよ』、と言ってくれているので定期的に挑戦することができています」と宮本さんは言う。
「付き合っているころとは違い、外食などができなくても同じ家に住むことで一緒に過ごせる時間が増えたこと、また、僕自身が彼女に負担をかけないよう気を配るようになったことで、以前よりも楽に感じてくれているようです。はじめは、なぜ大会のために減量し、苦しい思いや不便をしてまで挑むのか理解できなかったそうですが、初めて大会を見に来てくれたときに、『真剣さに感動し、心を動かされた』、と話してくれました。真剣に頑張っているのがかっこいいそうです」
「応援団は妻と妻の姉、妻の姉の息子、娘です。その他にもトレーニングを教わっているコーチや職場の元同僚、お客さんが来てくれていました。いつも仲良く遊んでいる甥姪の声が聞こえてきて、良いところを見せたい!とやる気にさせてくれました。結果がついて来ず、かっこいいおじになれなかったと思っていましたが、甥姪からは、『かっこいい、優勝!』の評価をいただけたのでよかったです(笑)」
宮本さん自身には新生児のお子さんがいる。
「こんな時期に好き勝手ボディビルをさせてくれる妻と、妻の母には頭が上がりません。その分週7で働いています」
54kgから始まった宮本さんの仕上がり体重は今回61kgまで増えた。ボディビルを通して身体も人間的にも成長してきた宮本さん。たくさんの応援を原動力に、これからも挑戦を続ける。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材:あまのともこ 撮影:上村倫代
主に『FITNESS LOVE』で執筆中。自身もボディコンテストに出場している。JBBF京都府オープン大会ビキニフィットネス(身長別)3位。マッスルゲート四国大会ビキニフィットネス2位。