「ビキニ競技で求められる体型は、自分にとって理想のスタイルであり、そこに向かって努力することで、70年間使い続けた身体にわずかながら変化を感じています。あきらめかけていた美に対する意識がよみがえってきた思いです」
今年2月、70歳でビキニフィットネスデビューを果たした石川多津子(いしかわ・たづこ/70)さんが、8月2日神戸芸術センターで行われたマッスルゲート神戸大会に出場し、マスターズの部で3位、一般の部で4位の成績を収めた。今大会がビキニ競技3戦目、大会ごとに進化し続ける石川さんに、これまでの道のりを伺った。
40歳から運動を始める
運動経験のなかった石川さんは、40歳のときスポーツクラブに入会し、水泳を始めた。はじめは25m泳ぐこともできなかったが、徐々に距離を伸ばし、1年後にはマスターズの大会に出場。現在も週1回2500m泳いでいる。
「45歳からはダンスも始め、ZUMBAやリトモスなど、今も週4回スタジオレッスンに参加しています」
スタジオレッスンで筋トレの要素が入ったクラスには参加していたが、本格的な筋トレは3年ほど前から始めた。半年間パーソナルトレーニングでマシンの使い方などを習い、2023年、マッスルゲート京都大会でレギンスカテゴリーに初出場。翌年には入賞し、今年はビキニフィットネスに挑戦した。
難関の10cm以上あるヒールとビキニ
レギンスカテゴリーとの大きな違いはヒールを履き、ビキニを着ることだ。
「ビキニフィットネスにエントリーするにあたり、10㎝ヒールを履けるのかが一番の問題で、まず公式ヒールを購入し、確かめることにしました。想像以上に難しいです。硬くなった足首を回して柔らかくしたり、足の指先を揉んだりして、歩く練習をしました。どうにか立てるようになったものの、ほほえんでポーズをとるほどの余裕はありません」
「第2の難関は、今までに着たこともない露出度の高いビキニです。『こんな格好で公共の場に立っていいのだろうか』と思いました。年齢に見合ったグリーンのビキニを中古品で見つけ、購入しました。下腹のたるみや落ちたヒップなど隠すことができないので、ヒップスラストで強化しました」
3大会での実戦と課題
2025年2月、1戦目大阪高槻大会。
「初戦の大阪高槻大会では、脚が震え、顔はこわばり必死でした。舞台に慣れるには場数を踏むのが一番と考え、今年の残り、関西圏の3大会すべてにエントリーすることにしました。初挑戦だからという甘えは通用しない2戦目に向け、ポージングのレッスンを受けました」
2025年4月、2戦目大阪大会。
「ポージングレッスンでは、基本動作の指摘事項が多すぎて、本番で固まってしまいました。この大会での反省をふまえ、姿勢を保持したままで流れるような腕のさばきができるよう練習しました。脚の筋トレを強化し、舞台映えするメイクを習いました」
2025年8月、3戦目神戸大会。
「気分を変えるため、以前より明るめのビキニを購入し、プロの方にヘアメイクをお願いして3戦目の神戸大会に臨みました。バランスを崩すところがあり、ポージングについてはまだまだ練習が必要だと痛感しました。審査員、観客の皆さんの表情がうかがえるようになったのは、少し進歩したところかと思います」
ビキニ競技のためのトレーニングとストレッチ
「3年ほど前に本格的に筋トレを始めたときは、週5日以上、各部位ごとに負荷をかけた状態で追い込むという形でしたが、ビキニ競技に出ようと思ってからは、サイドポーズに必要な、『ウエストをねじる』、『ローラーで背筋を反らす』といった、ビキニ競技に特化したストレッチを行うようにしました」
石川さんは今もフルタイムで働いており、17時に仕事を終えてジムに直行するという毎日を30年間続けている。
「ビキニフィットネスはまだ始めたばかりで、これからが成長期だと思っています。大会に出るたびにぶつかる課題に向き合いながら、『40歳のときよりきれいになった』と言われるよう自分を磨き上げたいと思います」
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
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取材:あまのともこ 撮影:上村倫代、岡 暁
主に『FITNESS LOVE』で執筆中。自身もボディコンテストに出場している。JBBF京都府オープン大会ビキニフィットネス(身長別)3位。マッスルゲート四国大会ビキニフィットネス2位。