トレーニング、食事と同じくらい大切な要素である睡眠。人生の3分の1は眠りだともいわれています。一方で、現代は不眠に悩まされている人も少なくありません。今回は、桑原弘樹氏が睡眠を味方につける方法を伝授します。
※Woman's SHAPE&Sports vol.27に掲載された「桑原流・ボディメイキングの鉄則~睡眠を理解してボディメイクに役立てる~」をWEB用に編集したものです。
睡眠環境を見直してみよう
夜寝るときにはどうすればいいか。まず、睡眠は大きく3つの要素で構成されています。ひとつは長さ。長ければ長いほどいいわけではなく、かといって5時間を切ると免疫が落ちるともいわれています。一般的には、最低6時間以上の睡眠が推奨されていて、長生きの人は7時間睡眠らしいので、できれば6~8時間を日々確保しましょう。
2つめの要素は深さです。人は深い・浅い眠りのサイクルを繰り返しています。仮に時間が短くても、浅いときに目覚めると気持ちよく起きられますが、深いときに起こされると不快なはずです。深い睡眠のことを「ノンレム睡眠」、浅い眠りを「レム睡眠」といいますが、とりわけ最初に来るノンレム睡眠が大事になります。スタートから深い谷を経て次の浅い眠りの頂点までが、およそ105~110分。ここで大量の成長ホルモンが分泌されるので、この谷をいかに深くしっかりとるかが重要です。ちなみに、最初のノンレム睡眠が深くないと、2番目の谷はもっと浅くなり、浅い眠りが続いてしまうので、最初の谷がしっかり深いことが大切です。
3つ目がリズム。最初の谷がだんだん浅くなっていくリズムも、睡眠の構成要素のひとつです。夜目が覚めるのは、このリズムを崩してしまっていることになります。要因は、加齢だけでなく深酒もひとつ。寝ている間のリズムが安定すれば、睡眠の質がよくなります。
では、どうしたらこれらの質がよくなるのでしょうか。現代人は、起きている間にとてつもない情報量を受けています。ストレスはもちろん、うれしくて興奮することも含めて、常に交感神経がピリピリしている状態。寝るときには副交感神経を優位にしてあげないといけません。
第1ステップは、「NG集」を作ること。睡眠の妨げになることを書き出していきます。例えば「電気をつけたままにする」「音楽をかけたままにする」「室温・湿度を過度にする」「直前に熱いお風呂やシャワーに入る」「激しい運動をする」「カフェインをとる」「ハラハラドキドキするドラマを見る」など、たくさんあります。なかでも最近のライフスタイルの中でよくないのがスマホです。スマホには無限の情報が入っているので、自然と交感神経を刺激します。寝る前に脳にどんどんと刺激を入れるスマホやパソコンは睡眠にとってはマイナスの要素。こうしたことを書き出して、経験的にはそのうちの3つくらいを我慢するだけで睡眠の質はよくなります。特に一番効果的なのは寝る前のスマホやPCをやめることです。最初の2日くらいは不便に感じますが、慣れると気にならなくなるので是非スマホを枕元におかないようにしてみましょう。
第2ステップは、少しでもいいから寝る環境をより快適にすること。布団をきちんと干して枕カバーを洗って清潔にするなど、ちょっと工夫するだけで寝やすくなります。私は冬場はオイルヒーターをつけて、部屋に厚手の洗濯物を干して寝るんですが、それによって温度と湿度が快適になります。寝ているときは優しい温かさと柔軟剤のいい香りに包まれ、起きたら洗濯物も乾いています。また、ぬるま湯の半身浴は、寝入りばなをシャープにできるのでおすすめです。寝るときは省エネモードの睡眠時代謝になるので、体温がほんの少し下がります。その生理現象を活用して、寝る前に少しだけ体温を上げておくと、布団に入る段階で元に戻るので、睡魔が来るという仕組みです。可能なら、ホットミルクを飲むとより効果的。カフェインレスで内側から体温が上がるのと、牛乳に含まれるトリプトファンというアミノ酸が脳内でセロトニンという神経伝達物質になるためです。ほかにも、リラックス系のアロマや、リラックスできる音楽を静かにかけるのもいいでしょう。
3番目はサプリメント。エキストラアミノアシッドは睡眠を意識して開発しましたが、ほかにも睡眠をコンセプトにしているサプリメントはあります。素材的にはグリシンやテアニンなども眠りにいいので、こうしたサプリメントを活用することもおすすめします。
桑原弘樹
Kuwabara hiroki
1961年4月6日生まれ愛知県出身。立教大学卒業後、江崎グリコに入社。スポーツサプリメント事業を立ち上げ、スポーツフーズ営業部長などを歴任し、現在はアドバイザー。桑原塾を主宰し、100人以上のトップアスリートのコンディショニング指導も行っている。
取材・構成=飯塚さき Illustration=JUNKO(小泉純子)