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攻めるだけでは勝てない!ボディビルダーこそ"ケア"が必要な理由【元世界チャンピオン✖️米国認定カイロプラクター】

ジムでがむしゃらにトレーニングしたり、綿密な計画の元に食事を取ったりしたことのある読者は多いだろう。しかし、休息やケアという観点に同じくらいの労力を割いたことはあるだろうか。
今回は、ケアを見直すということに焦点を当て、ボディビル元世界チャンピオンの鈴木雅氏と、主にアスリート中心の施術で世界的に活躍される河合智則先生のお2人に解説をお願いした。

取材・文:舟橋位於 撮影:中原義史 撮影モデル:五味原領 Web構成:中村聡美

リカバリーピラミッドからケアを考える

身体の問題を考えていく場合、それが全体的なものなのか局所的なものなのかを考えることは重要だ。それから施術を行うことを考えるかもしれないが、その前段階として、リカバリーピラミッドという考え方が存在することを知っておきたい。

「コンディショニングの基本は睡眠であり、ピラミッドの最も重要な底辺部分に該当します。続いて栄養や水分の摂取が来て、さらに上位にある小さな部分が器具を利用したマッサージ等になります」(河合)

コンディショニング全体として見た場合、根底にある睡眠や栄養摂取が崩れると、大きな効果は得られないということだ。根底の部分がクリアできた上で、追加で補助的に行うものがセルフケアとなることを知っておこう。

怪我で「継続」が破綻する

怪我の起こりやすさを模式的に表すと、下式のようになる。

ここで、IはInjuryで怪我の起こりやすさ、FはForceで運動強度、NはNumber of repetitionsで反復回数を表す。ボディビルダーのトレーニングは往々にしてFやNが大きな値になりがちだ。そうすると、A:Amplitude (振れ幅)やR:Rest(休息)という数字を十分に取っても相殺できない状況が生じる。そうすると結果として怪我の発症につながってしまうことがある。

「身体への負荷とそれに対する身体の耐性についても考えないといけません」(河合)

耐性の中には、「組織の耐性」、「神経と筋肉の耐性」、「心因的なストレスへの耐性」、「メンタルの耐性」など、多くの要素がある。これらを総合した耐性よりも負荷が強くなってしまうと、やはり身体の不調や怪我が生じてしまうというわけだ。

「こういったことを踏まえると、ケアが追いつかなかった部分を補うという目的で、セルフケアを取り入れる考え方が自然かと思います」(河合)

その場限りの対処では再発を防げない

「重さによる負荷が普通よりかかっていることもそうですが、トレーニングフォームやアライメントによって、特定の箇所に負荷がかかりがちになるのも悩みの一つです」(鈴木)

自分の身体で崩れている部分があると、どうしてもその部分に負荷がかかって怪我が起こりやすくなるようだ。また、もう一つ別の例ではバルクアップ期の怪我も挙げられる。体重が増えて使用重量も増えるような段階にあると、特定の部分に負荷がかかった結果として怪我が起こることも多いだろう。
こういった問題を解決するためにも、セルフケアの活用は勧められる。

「セルフケアと並行して、なんで問題が発生するのかの原因を見ていくことも必要ですね」(鈴木)

セルフケアを行うことで、最終的にはフォームやアライメントの修正にもつなげていけるとなお良いだろう。

関節は「裏切る」
トレーニー特有の局所ストレスに対抗するために

「高負荷のトレーニングでは、関節の局所ストレスが上がってしまうという特徴があります」(河合)

重量を扱うトレーニングをしていて、関節に痛みを感じた経験は誰もがあるだろう。セルフケアでは、こういった関節の問題を解消するためにもアプローチしていく。河合先生によれば、高強度のトレーニングをする人が訴える怪我としては、筋肉に関するもの、腱炎のような腱に関するもの、それから関節に関するものがあると言う。

「筋肉や腱は強くすることができますが、関節はそれができないため、簡単に裏切ります」(河合)

だからこそ、関節のセルフケアを通じて位置覚を改善し、骨格のアライメントを整えるリポジショニングにつなげることが大事だと言えそうだ。

「知識が増えてくると、単に筋肉をほぐすだけでなく、身体の構造をちゃんと考えないといけないんだなと思うようになりました」(鈴木)

なぜ自分の身体には局所的に負荷がかかっているのかの原因を突き止めることが一番大事だ。そしてその際に、特定のポイントだけを見るのではなく、全体として見て考えていくことが重要だと言えそうだ。

今回はこれに関連して、肩関節や腰椎のスクリーニングテストを用意した。ぜひそれも参照して、自分の身体の状況を知ってもらいたい。

■知識編
https://www.fitnesslove.net/conditioning/145186/

■スクリーニング編
https://www.fitnesslove.net/conditioning/145188/

■実践編❶
https://www.fitnesslove.net/conditioning/145190/

■実践編❷
https://www.fitnesslove.net/conditioning/145192/

すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINK フィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2018年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在トレーナーとしては主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる。他にもアスレティックトレーナーや理学療法士に対して身体の原理原則をいかにトレーニングに落とし込むかといった指導にも携わる。

かわい・とものり
愛知県出身、ドクターオブカイロプラクティック(専門職博士)、スポーツ健康科学博士号(学術)を取得。日本でのトレーナー活動の後、スポーツ医科学を追求すべく2005年渡米。カイロプラクティックドクター号(専門職博士)、スポーツ科学修士号を取得。アメリカにてアメリカ州立大学柔道チーム、総合格闘家、NFL、MLB選手などのサポートの他USLPGAツアー公認カイロプラクターとして活動。2011年帰国後プロ野球選手などトップアスリートを中心に臨床を行う。並行して筋膜(Fascia)とスポーツ障害の研究に従事し博士号を取得。ボディビルダーでは鈴木雅氏、相澤隼人氏、現役だと嶋田慶太選手、五味原領選手などの施術も行っている。現在シンガポールで起業し日本と往復生活。

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佐藤奈々子選手
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