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胸筋を上部から鍛える!インクラインダンベルプレスの魅力

dumbbell

※IRONMAN 2024年8月号に掲載された「検証!ファンクショナルエクササイズ」をWEB用に編集したものです。

著者プロフィール

井上大輔

井上大輔(いのうえ・だいすけ)

兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCA CSCS/NPO 法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本選手権第6位。

インクラインダンベルプレス

ダンベルの特性を理解する

大胸筋のトレーニングや上肢のプッシュ種目のエクササイズを採用するときに2つの選択肢があります。それはバーベル/ダンベル種目や自重トレーニングを行うか、もしくはマシンで行うかという選択です。

バーベルを使った種目はバーが身体の中心を通るため、可動域に制限がかかります。ダンベルは自由度が高いですが、スタートポジションに持って行くのに労力とテクニックが必要です。自体重は体幹にかかる負荷が多くなり、機能的に身体を鍛えることができますが負荷の増減に制限があります。

一方マシントレーニングは身体が固定されているので、主動筋を集中して鍛えることができますが、体幹に負荷がかからないので機能性の向上は期待しにくくなります。

このようにそれぞれに長所と短所があります。大胸筋のトレーニング種目を例に図1にまとめてみます。

大胸筋のトレーニング種目

図1

今回はインクラインダンベルプレスについて解説します。インクラインダンベルプレスの短所はスタートポジションにダンベルを持って行くのにテクニックが必要な点です。そのためには「オンザニーテクニック」が必要になります(写真1)(写真2)。

ダンベルを膝に置いた姿勢(オンザニーテクニック)

【写真1】ダンベルを膝に置いた姿勢(オンザニーテクニック)

膝でダンベルを蹴り上げスタートポジションに持っていく

【写真2】膝でダンベルを蹴り上げスタートポジションに持っていく

筋肉は一度伸ばしてから縮めると強い力が発揮できます。この機能をストレッチ、ショートニングサイクル(SSC)と言います。バーベルを用いたインクラインプレスの場合、このSSCが最初から使えるので(写真3)(写真4)、1レップ目から強い力が発揮されます。

バーベルインクラインベンチプレスのスタートポジション

【写真3】バーベルインクラインベンチプレスのスタートポジション(大胸筋が収縮した状態から始まるのでSSCが使われやすい)

バーベルインクラインベンチプレスのフィニッシュポジション

【写真4】バーベルインクラインベンチプレスのフィニッシュポジション

ダンベルを用いた場合、スタートポジションでは筋肉が伸びた状態から始まるので、このSSCの機能が1レップ目に使えなくなります(写真5)(写真6)。

ダンベルインクラインベンチプレスのスタートポジション

【写真5】ダンベルインクラインベンチプレスのスタートポジション(大胸筋がストレッチされた状態から始まるのでSSCが使われない)

ダンベルインクラインベンチプレスのフィニッシュポジション

【写真6】ダンベルインクラインベンチプレスのフィニッシュポジション(ダンベルを近づけることで、大胸筋を強く収縮させる)

皆さんも経験があると思いますが、インクラインダンベルベンチプレスで一番大変なのは、エクササイズの最初に写真6の位置にダンベルを持って行くことでしょう。そして肩を痛める危険性が高いのもこの局面です。つまり動作を始める前に一番労力を使わなくてはいけないのがダンベルを使ったインクラインプレスであると言えます。

インクラインダンベルプレスは自由度が高い分、テクニックが必要な種目ですが、肩を安定させるために肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)が刺激されます。そして肩の安定性が高まることにより、大胸筋の収縮、伸展をより効率的に行え、大胸筋に強い刺激が入ります。

したがって大胸筋の肥大という点ではインクラインバーベルベンチプレスよりもインクラインダンベルベンチプレスの方が効果的な種目とも言えるのではないでしょうか。

インクラインダンベルプレスの行い方

最初にベンチの角度の設定です。大きく分けて30度と45度に分けられます。大胸筋上部に刺激を与えたい場合は、45度に設定します。角度が大きくなればなるほど、大胸筋上部への刺激が増し、可動域もそれに応じて大きくなります。

つまり使用重量も若干落ちるでしょう。最初に膝の上にダンベルを置きます(写真1)。膝でダンベルを蹴り上げることでスタートポジションに持っていきます(写真2)。大胸筋がストレッチされた姿勢がスタートポジションになります(写真5)。そこから左右のダンベルを近づけるように挙上します(写真6)。インクラインバーベルプレスとの違いはこの収縮ポジションになります。ボディメイクが目的ならば、このとき大胸筋を最大限に収縮させるように意識します。

上肢のトレーニングで大事な点は、肩のインナーマッスルを上手く使うことです。インナーマッスルが活性化することで、肩関節が安定し大きな筋力を発揮できます。つまりダンベルを用いたエクササイズがうまくできるようになれば、さらなる筋肥大が可能になると思います。皆さんもぜひダンベルエクササイズの達人になってください。

 

文・写真:井上大輔

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