食事あってこその身体づくりであり、基本は日々の食生活から多種多様な栄養素をバランスよく摂取することが大切である。本記事はそうした身体づくりのための食事について米国フィットネス専門誌が「身体作りのための効果的な影響摂取の方法」「ミールプレップを取り入れるコツ」「心血管疾患とカルニチンの関係」「クレアチンをサプリメントとして効果的に摂取する方法」などを中心にまとめたレポートである。
(IRONMAN2026年1月号「from IRONMAN USA」より転載)
食事があってこその身体づくり

「必要な栄養素はできるだけ食事から取りたい」そう思っている人は少なくないだろう。できるだけサプリメントに頼らず身体づくりをするためには、多様な食事から多様な栄養素を摂取するのが理想的だ。
特に動物性タンパク質は筋発達に大きく貢献する。ベジタリアンのアスリートも確かにいるが、穀類や豆類のみで必須アミノ酸を確保するためには、より厳密に食事管理をしなければならない。
それに対して、肉や魚を取り入れた食事は、タンパク質や脂質だけでなく、植物からは取りにくい微量栄養素も含まれている。
自然界にはゾウやゴリラのような筋量の多い草食動物もいるが、それをヒトに当てはめるのは合理的ではない。人間は雑食性であり、様々な食材を食べることで血肉とする。実際、私たちの歯列や消化器官は人間特有の食生活に適応した構造になっている。
したがって、特別な理由がない限り、肉、魚、野菜、穀類などを幅広く食べることが、最も人間に適した方法であると言える。
ミールプレップを習慣にする

トレーニング内容にこだわる一方で、食事をおろそかにしたり、サプリメントに頼りがちになったりするケースは少なくない。サプリメントはあくまでも補助食品であり、身体づくりの基礎となるのは固形食だ。
ボディビルダーのように1日の食事回数や摂取量が多い場合、毎回の調理時間を確保するのは難しい。そのため、サプリメントで補うという考えになりがちなのも理解できる。
しかし、身体づくりで成果を出す人々の多くは、やはりきちんとした食事を重視している。彼らがそのために実践しているのが「ミールプレップ」だ。 例えば、週末に鶏肉や牛肉をキロ単位で購入し、1食分ずつに小分けして、冷凍保存する。野菜も同様に下ごしらえをしておけば、平日は温めるだけで済む。
確かに、この準備には週末の数時間を割かなければならないかもしれない。しかし、これによって平日の調理の手間はほぼゼロになり、計画通りの栄養摂取が可能になる。筋発達は「トレーニング」「栄養」「休養」の組み合わせで成り立つ。その「栄養」を確実に実行するための現実的な方法として、ミールプレップは非常に有効な手段なのだ。
ミールプレップのメリット
- 時間を節約
- 献立を考えるストレスをなくす
- カロリーを厳密に管理
注意点
- 冷蔵庫・冷凍庫の
- スペース確保
- 衛生管理
カルニチンは至る所に

これまでの研究で、牛肉の摂取が心血管疾患に与える影響が多数報告されている。一般には飽和脂肪やコレステロールが原因と思われがちだが、2013年の学術誌『ネイチャーメディスン』では、牛肉に含まれる「カルニチン」が関連している可能性が示された。
これは12年も前の研究であり、現在も長期的な因果関係は検証中であるため、確定したわけではない。とはいえ、もしカルニチンが心血管疾患の発症に影響するなら、減量期にサプリメントを利用するボディビルダーにとっては不安材料となるだろう。そこで、ここでカルニチンについて詳しく解説したい。
カルニチンとは
カルニチンは、アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されるビタミン様物質である。アミノ酸から作られるにもかかわらず、その構造や体内での機能が通常のアミノ酸とは異なっている。
カルニチンの最も重要な役割は、脂肪を細胞内のミトコンドリアへ運搬し、エネルギーを産生することだ。ただし、この働きはカルニチンだけで完結するものではない。ビタミンC、ビタミンB6、ナイアシン、そして鉄分といった補酵素やミネラルの助けが不可欠である。
したがって、カルニチンさえ摂取すれば脂肪が燃焼するという単純な話ではない点は、誤解のないようにしたい。
カルニチンと心臓の関係
動脈内のコレステロール増加

なぜカルニチンが心血管疾患に影響すると言われているのだろうか。 厳密には、カルニチンそのものが直接的な原因なのではなく、その代謝物であるトリメチルアミンオキシド(TMAO)が問題であるようだ。
食事由来のカルニチンが体内に入ると、まず腸内細菌によってトリメチルアミン(TMA)に変換される。このTMAが肝臓でさらに酸化されることで、TMAOが産生される。 研究によれば、このTMAOの血中濃度が上昇すると、動脈内膜に沈着するコレステロールが増え、結果として心臓発作や脳卒中などのリスクが高まるのではないか、と考えられている。
これらは元々マウスを用いた実験結果であったため、ヒトでも同様のことが起こるかについては疑問視する声もあった。しかし、現段階では、ヒトの腸内でもカルニチンがTMA に変換され、肝臓でTMAOが作られるという基本的な代謝経路は確認されている。
興味深いのは、食生活による腸内環境の違いだ。カルニチンを多く含む牛肉や豚肉、卵黄などを食べないベジタリアンは、肉食のヒトとは腸内細菌の構成が異なるとされる。実際、ベジタリアンのTMAOレベルを調査したところ、非ベジタリアンよりも明らかに低かったと報告されている。
心筋の治療薬としての一面

ボディビルダーの食事は、筋発達のために動物性タンパク質を豊富に取るのが一般的だ。幸いなことに、カルニチンは心臓の機能を助ける性質を持っている。心筋は、エネルギー源としてブドウ糖よりも脂肪酸を好んで利用する傾向があるが、カルニチンは、心筋がより効率良く脂肪を利用できるよう促すのだ。実際、ATPを十分に生成できず機能不全に陥った心筋の治療薬として、カルニチンが役立つのではないかという研究も進められている。
つまり、TMAOレベルの上昇は懸念材料である一方、カルニチンは健康な心臓機能を維持するために貢献する物質でもあると言える。
アメリカの総合医療機関「メイヨークリニック」が発行する機関誌には、カルニチンが心臓発作後の患者の予後に貢献した可能性が記載されている。3600人以上を対象にした複数の研究を分析した結果、以下の事柄が明らかになったという。
カルニチンによる心臓発作後の予後改善
- 全死因死亡率が27%減少した。
- 心臓発作の主な原因である不整脈が65%減少した。
- 狭心症(心筋の酸素不足による胸の痛み)の発症が40%減少した。
- 心臓発作によって破壊された心臓組織のサイズが、著しく減少した。
ボディビルダーへのメリット

カルニチンは心臓の敵にも味方にもなり得る。では、高タンパク質食を基本とするボディビルダーは、動物性タンパク質の摂取を続けるべきなのだろうか。答えは「イエス」である。なぜなら、動物性タンパク質に含まれるカルニチンには、身体づくりにおいて無視できない多くのメリットがあるからだ。
1 体脂肪をエネルギーに
カルニチンには、脂肪酸をミトコンドリアへ運搬する働きがある。これは、体脂肪をエネルギーとして利用するのを助け、減量期に役立つ可能性がある。
2 テストステロン利用効率の向上
カルニチンが細胞のアンドロゲン受容体を活性化させ、筋発達に重要なホルモンであるテストステロンの利用効率を高める可能性がある。
3 筋肉の異化抑制
研究によれば、カルニチンは筋肉の異化経路を遮断し、同時にアナボリックホルモンであるIGF-1を増加させることで、筋肉の分解を抑える可能性があると報告されている。
4 運動効率の向上
カルニチンには、運動中の筋グリコーゲン消費を抑制する作用があるとされる。これにより乳酸の産生が抑えられ、持久力の向上が期待できる。ある実験では、カルニチンの摂取が運動継続時間を延長させ、運動効率を11%も向上させたという結果が得られた。
5 一酸化窒素レベルの向上
実験では、カルニチンが血管内の一酸化窒素量を18%高めたというデータがある。一酸化窒素が増加すれば血管が拡張し、血流が増加する。そのためトレーニング中の強力なパンプ感や、酸素や栄養素の運搬効率を高め、筋肉の疲労回復を促進する効果が期待できる。
クレアチンは溶かすのが正解!

クレアチンがサプリメントとして登場してから30年以上が経過したが、その人気は衰えず、専門家による研究も継続されている。市場にはさまざまな製品が登場し、他の物質と組み合わせたものも多く開発されてきた。
ボディビル界では無味無臭のクレアチンモノハイドレートが人気だが、フレーバー付きや単糖類と組み合わせた製品もある。ちなみに、単糖類と組み合わせる理由は、インスリンの分泌を促し、クレアチンの細胞への取り込みを助けるためである。
実際、クレアチンはその効果を発揮するためには吸収されることが必須条件となる。そのため、炭水化物や他の栄養素と組み合わせた「総合型クレアチン」も販売された。
クレアチンの吸収率を高める工夫はさまざまで、胃酸対策の発泡性タイプ、粒子を細かくしたマイクロナイズド、あるいは最初から溶かしているリキッドタイプなどがある。手軽なキャンディやガムまであり、クレアチンがアスリートにとって欠かせない存在であることが分かる。
肉のクレアチンVSクレアチンサプリメント
クレアチンは肉などの食材にも自然に含まれている。吸収が難しい物質であることを考えると、サプリメントより食材から取る方が良いのではないか、という疑問も生じるだろう。
この点を検証した興味深い実験がある。クレアチンモノハイドレート溶液、肉、錠剤のクレアチンモノハイドレートの3つを用意し、被験者(過去にクレアチン摂取歴なし)の血しょう中濃度を6時間にわたり測定した(※肉のクレアチン2gは、モノハイドレート2.3gに相当)。
その結果、肉由来のクレアチンと溶液中のクレアチンは、生物学的には同等であることが確認された。しかし、血しょう中濃度には差が見られ、肉を食べたグループのピーク値は溶液グループより低かったが、濃度はより長く維持された。そして、錠剤のグループは、溶液グループよりピーク値が20%も低かったのである。
これらの結果から、クレアチンは溶液状態で摂取するのが血しょう中濃度を最も素早く高められると分かる。クレアチンの効果を最大限に引き出すには、登場当初から言われてきた通り完全に溶かすことが、やはり最適解のようである。
【参考文献】
Koeth, R.A., et al. Intestinal microbiota metabolism of L-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis. Nature Medicine.Dinicolantonio, J.J., et al. L-carnitine in the prevention of cardiovascular disease: Systemic review and metanalysis. Mayo Clinic Proceedings.
Keller, J., et al. Supplementation of carnitine leads to an activation of the IGF-1/P13K/Akt signalling pathway and downregulates the E3 MuRF1 in skeletal muscle of rats. Nut Metabol.










