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ヨガは逃げ道ではなく、はっきり見るために──都会を生きる、ヒマラヤ育ちのヨガ講師 Part2【インドヨガ修行体験記#14】

大都会・ジャカルタ(インドネシア)でヨガを教える、インド出身のビピン(Bipin Singh Pharswan)氏。ヒマラヤの山奥で育った彼は、たとえ都会の喧騒の中にいても、心の調和を保つことの大切さを教えてくれる。今回はヨガ的な視点から「身体を作ること」を掘り下げる。日々忙しく生きる私たちにとっての「本当の強さ」とは。ビピン氏の言葉が、自分自身の在り方を見つめるきっかけとなるように。

外の“力”と内の“気づき”──筋トレとヨガを組み合わせると

「筋トレは外側のフレームを作り、ヨガは内なる世界を整えてくれます。ヨガを組み合わせることで、筋トレのパフォーマンスは深まります。神経系のバランスを整え、可動域を広げ、ケガを防ぐ。そして、それ以上に大切なのが、“気づき”が育まれていくということです」

ヨガ的な視点から見ると、身体はただの筋肉の塊ではなく、プラーナ(エネルギー)の器。外側の筋肉だけを追い求めず、内側も見つめることで、身体・呼吸・心がひとつにまとまり、それまでにないシナジーが生まれるのだ。

「ヒマラヤでは、自然のリズムとともに生きる中で、本当の強さとは「調和」から生まれることを学びました。山が強いのは、激しい嵐に抗うからではなく、静かに立ち続けるからです。それと同じように、ヨガは私たちに今この瞬間、“地に足をつけること”や、肉体を超えた何かとつながることを教えてくれます」

成果を追い求める現代人にとって、彼の言葉は真逆の価値観に映るかもしれない。しかしジャカルタで彼のクラスに通うビジネスマン・ウーマンたちは、次第にこの「静けさの強さ」に惹かれていく。

ヨガは逃げ道ではなく、人生と向き合うためにある

ビピン氏がヨガを教えるのは、人々に説教をするためではなく、“思い出させる”ためだという。

「私は仏陀(悟った人)ではない。でも、彼の存在と、彼が歩いた道に深くインスピレーションを受けています。この騒がしい世界が忘れさせてしまった“内なる静けさ”は、私たち誰の中にもあると信じています。私の存在、言葉、動きや呼吸の仕方を通して、ヨガが僕に与えてくれた静かな叡智を、少しでも映し出せたらと思っています」

ビピン氏にとってヨガを教えることは、ただの役割ではなく祈りだ。

「寺院の中ではなく、呼吸の中に、沈黙の中に、動きの中に。人生から逃げるためではなく、もっとはっきりと見るために。気づきを持って、今を自由に生きるために。どこかの誰かが、少しでも深く呼吸してくれるようになったら、少しでもまっすぐに立って、自分はすでに“完全”なんだと思い出せるように──そのために私はヨガを教えています」

都会に生きる私たちは外ばかりに意識を向けがちだ。自分の価値を証明するかのように「肩書き」というラベルを貼り、頑丈な要塞を築くように自分を固めていく。しかし、本当に大切なことは、その逆方向にあるのかもしれない。

ジャカルタという忙しない街で、山のように静かに佇む彼のヨガは、今この瞬間を生きる人の心に問いかける。

Bipin Singh Pharswan @brahmshaktiyog
ジャカルタのHŌM YOGA STUDIO所属。インドのヒマラヤ(ウッタラーカンド州チャモリ)で生まれ、14歳のとき瞑想の練習を始める。その後、シヴァ神を祝う「マハシヴラトリの吉祥の日」に生まれたことを知り、本格的にヨガ(フィジカルアーサナ)に取り組む。

HŌM YOGA STUDIO @hom.yogastudio
Kembangan Sel., Kec. Kembangan, Kota Jakarta Barat, Daerah Khusus Ibukota, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 11610

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