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「立ち技の時代は必ず来ますよ!」K-1プロデューサー須藤元気が語る”Kー1の未来と展望”

2.8 K-1 WORLD GP 2026 -90kg世界最強決定トーナメント PREVIEW
今年9月に電撃的にK-1の新プロデューサーに就任した須藤元気氏。さっそく改革案を披露するなど話題を振りまいているが、就任初年が終わる今、K-1の現状や来年以降の展望についてどう考えているのか?率直なところを聞いた。

取材・文_高崎計三  撮影_宮下祐介 Web構成:中村聡美

「2026年はK-1をコンテンツとして跳ねさせます。
立ち技の時代は必ず来ますよ!」

━━お久しぶりです!こういう形で再びお話を伺うことになるとは、という感じなんですが(笑)。最近は、格闘技界についてはどれぐらい認識があったんですか?

須藤 正直、完全に離れていたので。もう浦島太郎状態でしたね(笑)。

━━その中でK-1プロデューサーを引き受けられたというのは?

須藤 以前に一度、お話をいただいた時があったんですが、当時は自分自身、政治活動が中心だったので、中途半端な形で引き受けるわけにはいかないなということで、お断りしたんですね。それで選挙の方は自分の力不足に終わったんですが、そこでもう一度お声がけいただいて。自分自身、政治だけでなく、自分のバックグラウンドを生かしたものでも活動していければというのも踏まえて、引き受けさせていただきました。

━━ただ、以前と比べてもやっていることがすごく増えてますよね。

須藤 そうですね。逆にその政治のときは政治一本で、いわゆるどぶ板と言われる地元回りとか、自転車で街を駆け巡るのを中心に1年半ぐらいやっていたんですが、その分、他の活動をほとんどやっていなかった部分もあって。今は逆に、政治以外の部分をもう一回いろいろやって、自分自身の経験値だったりをもっと高めていかないとなというところはありますね。やってみたいことは常にやるタイプなので、今着ている着物も自分のブランドなんですけど。

━━その中で今の須藤さんにとって、K-1プロデューサーという仕事の比重はどんな感じなんですか?

須藤 僕の中では、全てのことを100%でやってるつもりですけどね。いろいろやってるからって別にK-1の仕事をないがしろに思ってはいないですし。ただ、僕自身は実務をやるポジショニングではないので、あくまで自分の感じたことだったりをお伝えして、社員やスタッフの方が動いてくれるという形なので。

━━なるほど。

須藤 もちろん踏み外したこともあるかもしれないけど、そこはちゃんとみんなと意思疎通しながらやっているつもりです。

━━須藤さんの現役時代とは、K-1のみならず格闘技界を取り巻くメディアだったりの環境ってものすごく変わってますよね。そこはどう感じていますか?

須藤 プロデューサーになる前に、一昨年、K-1MAXのアンバサダーになって大会を見に行ったんですが、そこでまず感じたのが、「大会が長いな」と。長すぎて楽しめなかったというのが正直なところで。僕らの頃って、試合数は多くても13試合ぐらいじゃなかったですか?後楽園ホールとかだと8試合とかで。3時間ぐらいのパッケージで、終わった後にご飯食べに行ったり飲みに行ったりとか、それが格闘技の楽しさだったんですよね。でも今のK-1は昼から始まって夜までかかって、自分自身が疲れちゃって。格闘技ファン以外の人に見てもらう時って、「疲れたな」って思わせちゃダメじゃないですか。

━━そうですね。

須藤 あくまでエンターテインメントなので、いかに見てる人たちに楽しんでもらうという、そこの根本的なところがちょっと足りないんじゃないかなというところはありますね。ただ、そこにはやはり問題があって、今は選手がチケットを売ってお客さんを集めるという構造になっていると。もちろんチケットを売ってくれる選手が大切なのは分かるんですけど、そこをバランスを取りながら、何とか変えていかなきゃいけないなというのはすごく思います。

━━それで最近は二部制を導入して、先日の大会では後半だけのチケットも売り出されました。

須藤 開会式とかも長いですよね。もっと短くていいんです。別にファンの人たちは開会式を見に来てるわけじゃないし。もっとタイトでいいし、試合が終わった後のインタビューとかフォトセッションとかも、今の半分でもいいですし。もっとテンポよくやっていかなきゃいけない。試合数を減らさなくたって、全然あの進行でどうにでも短くできるので。

━━試合の中身や今の選手の陣容については、どう思いましたか?

須藤 MAXのトーナメントは全員外国人でやったり、対海外に向けてのアプローチというところで、日本だけでなく世界のK-1なので、そのアプローチはやはりアリなのかなと。ただ、MAXも、次にやる90㎏のトーナメントも、やはり日本人がなかなか勝ちづらい状況ではあるので、そういった意味では軽量級も、華のある選手がいっぱいいるので、そこはそこで国内向けと海外向けっていう、うまくそこの二軸でできるんじゃないかなと思いますね。あとは格闘技ファンじゃない人たち、ライト層だったりとか、女性ファンもやはりもっと増やせるなというのは感じますね。

━━女性ファンですか。

須藤 2月にタイトルマッチをやる金子晃大選手と大久保琉唯選手、2人ともカッコいいし、いくらでも人気出ると思うんですよね。松山勇汰選手もカッコいいし、もっとどんどん強くなってもらって。朝久兄弟とかもキャラが立ってるじゃないですか。キャラがいろいろ立ってる選手はいるので、もっとそこをフィーチャーしたアプローチができるなと。

━━格闘技界の中では、K-1はメディアの活用において進んでる方だと思うんですが、まだ違う角度が必要だと感じられてますか?

須藤 いや、もっと必要ですよね。僕は忖度なしで言いますけど、あまりいいイメージを持たれてないんですよね。僕がK-1プロデューサーになるというときに、「今、K-1は全然盛り上がってないよね」的なことを言う人が大多数なんですよ。そこのイメージ戦略というのはどんどん変えられるというか。ファイトマネーをいっぱい出したら、そりゃあ選手はそっちに行きますよ。ただ、別にK-1は全然ギャラは悪くないんですよね。そこでいろいろ尾ひれをつけて言われてるんだなというのが分かってきたんですけど、それは別に大した問題じゃないなと。ただ、選手がK-1に出たいというステージにもっともっとできると思うので。立ち技では、やはりK-1が一番だと思ってるので、もっとブランディング力を高めればいけるなと思いますね。昔、K-1って言ったら選手の憧れだったじゃないですか。「あの大舞台に出たい」っていう雰囲気を、もう一度取り戻したいなと思っています。

━━他団体と言えば先日、Xで「スーパーボンよりサルシチャの方が上」というポストをされて、いろんな反応がありました。あれはどういう意図だったんでしょう?

須藤 いや、あれは反応してもらうためのポストなので。やっぱりプロデューサーとしてはもっと盛り上がってもらわないといけないですからね。そういうところで盛り上がってくれれば、それはそれでいいなと。ONEも来年から日本大会中心でやっていくようなウワサを聞いていますけど、もしかしたら対抗戦もゼロではないと思うし。片手で殴りながら反対の手で握手するっていう、そういうところは必要だと思いますね。別にやらせじゃなくて。

━━そういう意味で、来年はどう仕掛けていきたいですか?

須藤 来年は、4月にちょっと自分のやってみたいことをやらせてもらおうかなと思っていて。ちょっと「それはないだろ」的なものだったり、モンスター路線みたいなものをちょっと入れたりとか。「そこ来たか!」と話題になるような。実験的にそういうのは必要だと思っていますからね。それをずっと続けるわけではなく、王道のK-1というものはありつつ、ちょっとエッジの効いたマッチメイクっていうのはあった方がいいと思うんですよね。今は幻想がないので、もっと「これ、どうなっちゃうんだろう?」的なものも見せたいなと思います。

━━そもそも須藤さんが最初にK-1に出たこと自体が、異質なことでしたからね。

須藤 そうですね。まさしく僕も「何だお前?」みたいな感じで出たので、そういったちょっと違う角度の選手が出てくることによって、王道で戦っている選手が引き立ったりもあると思いますし。今は選手が誰が誰だかよく分からない、というか個性がうまく生きてないなと思っていて。しっかりと個性を生かしていけるような選手を作っていきたいですよね。

━━今K-1で戦っている選手にも、これだけいい選手、面白い選手がいるんだよというのを見せていくと。

須藤 おっしゃる通りですね。いくらでもできると思うんですよ。演出面も含めて、やはり平成時代から変わってないんですよね。開会式含めほとんど変わってないし、あんまりカッコよくないんですよね。でも他団体とか見るとけっこうカッコいいんですよ。真似できるものは真似したりとかも必要だと思いますし。K-1GIRLSも必要なんですけど、ちょっとそのポジショニング、使い方が昭和、平成から変わらないんですよね。もっと今のZ世代の子たちがクールだと思えるようなアプローチは全然できると思います。

━━あと、須藤さんが就任されてからのトピックの一つに「HEROʼS」があります。そこは?

須藤 あれは僕の就任前から決まっていたところもあったんですが、ただ、あまり試合がよくなかったので、そこは課題でしたね。4月の大会にはHEROʼSルールの試合も1〜2試合は入れてみようかなとか思ったりしてます。4月は本当にお祭りみたいな感じにしたいなと。もちろん、きちんとしたK-1ルールの試合も半分はやりますよ。ただ、いろんなものがあることによって、両方引き立つんじゃないかなと。何でも新しいことをやらないと次に進まないですからね。

━━ところで「Krush統合問題」は、その後どうなんですか?

須藤 Krushは実際見ないと始まらないなというので見に行ったんですけど、正直言って、やはりKrushに出てる選手とK-1に出てる選手はレベルがちょっと違うんだなというのを改めて思いました。ただ継続するのであれば、K-1とKrushのスタッフをちゃんと分けた方がいいと思うんですよね。今は同じスタッフがやっていますけど、僕は独立した方が、もっと華やかになるんじゃないかなと思います。

━━では改めて、本当のお楽しみは来年、というところですね。

須藤 そうですね。やっぱり世の中にいろんなコンテンツがある中で、もう来年、とにかく跳ねさせないとダメだなと。でも何だかんだ言って、やはりK-1はK-1ですから。世界一の知名度があるわけで。そこを最大限に生かしていきたいですね。その中で「何じゃこれ?」を適度に入れていく。そこは僕のポジショニングだからこそやるべきで。やはり爪痕を残していくっていうことはものすごく大切なことですからね。K-1は絶対的なブランドがある中で、強さプラス、カッコいいというイメージをもっと強調して、女性やライト層もきちんと取り込みつつ、モンスター路線だってできるし、海外路線もどんどんやっていって、いろいろな軸を作りながら展開していけば、僕はもう勝ち確だなと思います。

━━では最後に、来年以降のK-1はここを見逃すなというポイントはどこでしょうか?

須藤 まず、全体的に見やすくする。そして、もっといろいろなメディアに出ていくというのが、やはりポイントですね。試合自体はね、選手たちが本当に一生懸命頑張ってくれているので、僕はもう言うことはないですよ。今は話題的にちょっと押されているかもしれないですけど、「立ち技の時代」は必ず来るなというのは感じているので、そこをもっともっと盛り上げていきたいなと思っています。

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