筋トレ

【美尻の極意】男性も必見!美尻のスペシャリスト岡部友が語る効果絶大・尻トレ術

下半身のトレーニング内容を今一度思い出してみよう。スクワット、レッグプレス、レッグエクステンション、レッグカールといった種目は誰もが行っている。しかし、お尻のみをピンポイントで鍛えようと考えている男性は少ないのではないだろうか。
今回は、そんな状況に一石を投じる考え方を、お尻のスペシャリストである岡部 友さんに教えていただいた。

取材・文:舟橋位於 撮影:中原義史 写真提供:岡部 友

女性だけではない!男性もお尻に目を向けてみて!

ジムに行くと、女性が熱心にお尻を鍛えている様子はたくさん見ますが、男性の姿を見ることは少ないです。しかし、私は男性にももっとお尻のトレーニングに力を入れてほしいと思っています。

まずは一般のトレーニーに向けてなのですが、実は、女性は意外と男性の下半身をチェックしています。これは私だけが意識しているということではなく、周りからも同じような意見をたくさん聞いていることです。男性はやはり胸や腕のトレーニングに気合を入れて臨むと思いますが、「女性は胸や腕だけでなくお尻も意外と見ているよ」と伝えておきたいです。上半身の筋肉も確かに大切ですが、それに釣り合うような下半身がないと、魅力的なスタイルには見えません。鍛えられてヒップアップされたお尻は、良い姿勢と相まって、さらに格好良いスタイルを作り出すのではないでしょうか。

男性アスリートもお尻強化のために岡部さんのもとを訪ねるという

アスリートについても、お尻を単独で鍛えることにはメリットがあります。大殿筋は身体の中でも特に大きな筋肉で、それだけ強い力を発揮することができます。スクワットなどのベーシックな種目はもちろん大切ですが、お尻を鍛えることで他の種目の重量アップにつなげられたり、競技力を向上させたりすることが期待できます。

しかしながら、女性に比べると、まだまだ男性のお尻への意識は高くないと思います。今回はその背景を踏まえ、お尻のトレーニングが持つメリットを解説します。そこからさらに、おすすめの種目も2つ紹介しますので、本文のポイントを思い出しながら、ぜひチャレンジしてみてください。

「ビキニの女王」安井友梨さんもお尻強化のために岡部さんに師事した(撮影:田中郁衣)

お尻トレーニングで関節の使い方を取り戻す

ジムに来る方の中には、腰痛や膝痛に悩む人もいると思います。これらを改善していくためには、私は、身体本来が持っている力を取り戻していくことが大切だと考えています。そしてそれは、「殿筋の力を取り戻すこと」と言い換えても過言ではないと思います。

現代人は、日常的に座っている時間が長すぎるため、お尻の筋肉が寝てしまっている人がすごく多いです。そしてそれに加え、股関節の使い方も本来あるべき姿から変わってしまっています。お尻のトレーニングのポイントは、この間違った股関節の使い方を正しいものに戻していくことでもあります。特定の筋肉にすごく負担がかかっていたり、逆に別の筋肉はうまく使えていなかったりという状態を正していく必要があります。

「股関節の使い方ってこうだよね」、「膝関節を動かさずに股関節を動かすってこうだよね」というように、頭で理解したことと実際の身体の動きが結びついてくると良いです。こういったことは、ごく普通のライフスタイルを送っている方でも意識できるようにしたいです。そうすると、身体の一部分への負担が軽減され、腰痛や膝痛がなくなっていくことにつながるのではないでしょうか。

男性のクライアントに見られる共通点として、股関節が硬いというのもあります。股関節が硬ければ、十分な可動域が取れないため、お尻へのストレッチ効果も下がってしまいます。そういった方には、内転筋をほぐすようなストレッチから始めることもあります。身体の硬さに心当たりのある方は、ぜひコンディショニングにも力を入れてみてください。

岡部さんは定期的に海外へ行き、世界で一流のトレーナーに教えてもらう機会を作っている

お尻のトレーニングと姿勢

お尻は良い姿勢とも密接に関わります。お尻のトレーニングを上手に行っていくためには、腹圧の意識が欠かせません。腹圧は、背骨しか支えがない体幹部分に対して、筋肉を上手く使って強化することだと思っています。腹圧がきちんとかかっていないと、どこかにもたれかかったり、脚を組みたくなったりしてしまいます。こういった姿勢は全て体幹部が弱いことの表れであり、長く続けば腰痛やヘルニアの原因になることがあるでしょう。

トレーニングがお尻そのものに与える効果だけでなく、トレーニングを行う過程で、姿勢を維持することもできるようになるといった考え方ですね。

少し視点を変えて、ライフスタイルについても考えてみましょう。スクワットやレッグプレスのような高重量を扱う種目は、基本的には両足で行います。しかし日常生活を見ると、両足で踏ん張る動作よりも、歩く・階段を上る・横に踏み出すなどの片足の動きの方が多いはずです。ランジウォークやブルガリアンスクワットを通じて、片足でどのように筋肉を使うかを学習することは、機能面では非常に良いことだと思います。

私とお尻トレーニングの出会い

そもそも私がお尻トレーニングに力を入れ始めたきっかけは、パーソナル指導をする中で、女性は単なるダイエットだけでは美しい理想の体にならないと気づいたからです。骨格に恵まれていれば痩せるだけでも良いかもしれませんが、そうでない場合は必要な場所に筋肉をつけていくことが大切だと思います。ただし、何も考えずにトレーニングをしていると、「脚は太くなって筋力も伸びたけど、結局きれいにはならないよね」となってしまうかもしれません。そこで、今のようにお尻のトレーニングに特化して勉強を進めるようになりました。

左からアースロー・ガルシア(ArturoGarcía)さん、岡部さん、ブレット・コントレラス(BretContreras)さん

お尻のトレーニングの権威として、ブレット・コントレラスという方がいるのですが、私はブレットの論文を読み込み、どうすればトレーニング効果が上がるかを考えました。今でこそお尻のトレーニングは普及していますが、当時は本当にブレットしか知識のある人がいない状況でした。その後、ドイツのトレーニング器具展示会で知り合ったアースローという凄腕トレーナーのもとで、お尻のトレーニングの研修を受けました。それにより、今までの自分のトレーニングとは全く違う理解を深めることができ、今のトレーニング指導へとつながっています。

ドイツのトレーニング器具展示会。ここで「凄腕トレーナー」と評すアースローさん(右)に出会った岡部さん

今の日本では、女性の指導も男性トレーナーが行うことが多いです。その中で私は、女性の視点から身体を理解した指導を提供していければと思っています。

アースローさんに指導を受ける岡部さん。「今までの自分のトレーニングとは全く違う理解を深められた」と語った

男性に行ってもらいたいお尻トレーニング2種目

男性のトレーニーの考え方として、「下半身の代表的な種目を行えば、自然とお尻も発達するよね」というのがあると思います。しかしながら、お尻単独で鍛えていくことには、これまでに説明したように多くのメリットがあります。種目の選択は同じだったとしても、お尻を優先的に使うための工夫が存在することを知ってもらいたいと思います。そこで今回は、特にお尻に対する効果が高くおすすめである「ブルガリアンスクワット」「ヒップスラスト」の2種目を解説します。

ブルガリアンスクワットはお尻のストレッチを狙う種目で、ヒップスラストはトップでの最大収縮を狙う種目です。両者の違いを理解してそれぞれを取り入れられると、股関節がどのポジションにあっても上手く使えるようになります。そうしてトレーニングを続けると、日常生活のさまざまな場面でもお尻が使えるようになっていくはずです。

ブルガリアンスクワット

まずブルガリアンスクワットについてです。この種目は男性の間でもメジャーですが、ほとんどの人は脚とお尻の両方を使って動作しています。もちろん、膝関節が関与する種目なのでお尻の割合を100%にすることはできないのですが、フォームを工夫することでお尻の刺激を増やし、前ももの負担を減らすことはできます。これはまさに、股関節が上手く使えているかと、膝関節に頼って動作しているかの違いになります。

ブルガリアンスクワットでお尻を狙うために大切になるのは、股関節のヒンジです。しっかりとお尻を後ろに突き出すようにしながらしゃがんでいくことで、強いストレッチをかけることができるようになります。上手くヒンジ動作をするために、しゃがむ動作が深くなるにつれて、上半身が前傾していくところも、ジムでよく見かける一般的なブルガリアンスクワットとは異なる点ですね。後ろの膝が地面につくようにしゃがんでいくと、上手くヒンジ動作を出していきやすくなります。

脚(足)に関する意識も大事です。お尻を狙う場合は、前ももには負荷を乗せたくないので、前脚の膝を固定して、お尻を強くストレッチすることだけを考えます。そうしてお尻を引いていくと、今度はベンチに乗せている後ろの足に体重が乗りがちです。これを防ぐためには、スタートポジションで後ろ足はベンチに軽く乗せるだけにすると良いです。体重はしっかりと前脚に乗せ続けて、後ろの支える足はなくても動作できるようなイメージが適切ですね。

しゃがんでいく際には、膝はつま先より前方に出ないようにしたいです。しかし、それを意識して前方に足を置くと、今度は後ろ脚も使いながら挙上するフォームになってしまいます。しっかりと前足で踏み込める位置を見つけてあげることが大切です。

両足で行うスクワットも良い種目なのですが、大腿骨の長さや関節の柔軟性によって、しゃがめる深さが限定されがちです。ところがブルガリアンスクワットのような片足種目だと、両足種目のときよりも比較的深くしゃがむことができるようになります。スクワットで得られるストレッチよりも強いストレッチが得られる点が、ブルガリアンスクワットの特に良いところだと思います。そのため、ブルガリアンスクワットを行うのであれば、重量を扱ってしゃがみは浅いというフォームではなく、軽いウエイトでもより深くしゃがむようなフォームで実施することを求めていってほしいです。

ブルガリアンスクワットの写真付き解説記事はこちら!↓
王道だがほとんどの人が間違えている!? 岡部友が教える尻トレ!パート❶【ブルガリアンスクワットの効果的な効かせ方】

ヒップスラスト

続いてはヒップスラストです。よくあるエラーとしては、ベンチの上に十分に身体が乗っておらず、腰椎が伸展したところからスタートしてしまうことがあります。肋骨が開いた状態で、腰椎の伸展と屈曲を利用してバーベルを上げ下げする動作は誤りです。肩甲骨下部をベンチに乗せるようにし、上半身は一連の動作の中でニュートラルな状態を維持できるようにしましょう。

正しいヒップスラストではお尻のみをターゲットにしたいので、お尻以外の膝や腰椎は動かないように固定する必要があります。膝が固定されて腰椎がニュートラルな状態から、お尻に力を入れて勝手にバーベルが持ち上がるというイメージが重要です。地点Aから地点Bに持ち上げようという意識ではなく、お尻の力を入れることで股関節が動き、動作が勝手に起こるという動きを意識します(わざとゆっくりするのも間違い)。そのため、正しいフォームでできているならば、速い動きにはならないはずです。スミスマシンを使ったヒップスラストで、「シャーッシャーッ」と音が鳴っている場合は、正しく動作できていない可能性があります。

ヒップスラストでお尻に的確に効かせるためのポイントとしては、お尻の最大収縮を得られるようにすることが挙げられます。バーベルを持ち上げたトップポジションでは、上半身から膝までが一直線になるようにしたいです。ただ単にバーベルを挙げようという意識だけでは、なかなか股関節を最大伸展させることができませんが、「自分の限界地点まで股関節を伸展させよう」と思うと、上手く動作しやすいです。このとき、あくまでも動作の主体はお尻なので、太ももの力で持ち上げないように気をつけたいです。

その他のコツとしては、太ももを少しだけ外旋させることもあります。お尻の筋肉の起始部と停止部を考えると、外旋の動作を加えた方がより収縮感が得られます。間違えてはいけないのが、脚を大きく開くということではない点です。お尻を締めるようにして持ち上げつつ、若干脚が捻れるようなイメージだと良いですね。

ヒップスラストの写真付き解説記事はこちら!↓
シンプルそうで意外と多くの注意点アリ!岡部友が教える尻トレ!パート❷【ヒップスラストの正しい効かせ方】

バリエーション

お尻狙いのブルガリアンスクワットでは、とにかくお尻のみに集中したいので、身体を支えるために手を前方の台などについても構いません。身体を安定させる要素が増えればお尻に効かせやすくなり、不安定になれば、より体幹の力が必要となります。お尻のトレーニングという観点であれば、片手に高重量のダンベルを持って、もう一方の手は軽く支えることに使う考え方も全く問題ありません。目的に応じて使い分けましょう。

また、スミスマシンで行うブルガリアンスクワットも、身体がぐらぐらしにくいのでおすすめです。ダンベルよりも高重量が扱いやすいのも良い点ですね。バーベルを担ぐ位置がハイバーポジションだと上手くヒンジ動作が出せないので、ローバーで行うことをおすすめしますが、肩に問題があってローバーができない場合は、自重かダンベルのブルガリアンスクワットが良いでしょう。

おかべ・とも
1985年12月6日生まれ、神奈川県出身。株式会社ヴィーナスジャパン代表取締役。高校卒業後、アメリカで運動生理学、解剖学を学び、フロリダ大学在学中に、プロアスリートに指導できるスポーツトレーナーが保持する資格NSCACSCSを取得。女性専門ジム「SPICE UP FITNESS」を東京、大阪、名古屋の5店舗で運営。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演し大きな反響を呼んだ。

-筋トレ
-, , , ,


おすすめトピック



佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手