4月6日(日)、門真市民文化会館ルミエールホールで開催された『マッスルゲート大阪大会』。全国で展開され、誰でも参加可能なボディメイクコンテストとして知られるこの大会で、高瀬春江(たかせ・はるえ/43)さんが短期間で身体を変え、ウーマンズレギンス163cm超級とウーマンズレギンスフィットネス163cm超級の2冠を達成した。
「筋肉に話しかける」ことで筋トレの質UP
高瀬さんにとって、今回の勝利は単なる勝利ではない。2024年の『マッスルゲート大阪高槻大会』では5位、同大会の『奈良大会』では2位と、順位を上げたとはいえ優勝の選手との間には、自分の身体と大きな違いを感じていた。
「あのときは完敗でした。バックステージで悔しくて悔しくて、大泣きしてしまったんです」
大会後は目標を見失い、年末までの約1カ月間、トレーニングのパフォーマンスもモチベーションも落ち込んでいた。そんな中で出会ったのが、新しいボディメイクの方法だったという。
「パーソナルトレーナーの方に、食事やトレーニング内容を一から見直ししてもらうようにしました。特に変わったのは、フォームを丁寧に行うということです。背中の場合は効かせるという感覚を掴むために、懸垂をしっかりとやりこむようにしました。はじめはアシストチンニングでようやく1回上がる程度でしたが、今ではアシストなしで5回できるようになりました」
重さを追うよりも、確実に10回できる重量で丁寧に。その積み重ねが、筋肉の質感とラインを変えていったという。好きな種目はベントオーバーロウというバーベルを使った背中のトレーニング。以前は20kgのバーだけでも扱い切れなかったが、今は片側7.5kgを加えても背中に効かせられるようになった。
「フォームってすごく大事です。小さな変化、例えば手首の角度をほんの少し変えるだけで、背中にしっかり入る。そんな小さなコツが、大きな違いになるんです」と高瀬さん。
また、「変な人と思われるかもしれないけど、筋肉に話しかけてます(笑)」と話す。
「クセで右肩が巻き肩になりがちなので『今からここを鍛えるよ~。正しい位置はここだよ~と自分の筋肉に声をかけながら意識を高めてます。正直ヤバい人ですよね(笑)」
さらに、苦手だった腕トレにも取り組むようになり、全身のバランスが整ってきた。「どの部位も全部大事」。そんな考え方も、今のトレーナーとの出会いから生まれたものだった。
「脂質は悪」誤った認識を改め身体の内側から健康に
食事の面でも意識が大きく変わったという。
どうしても「脂質を摂ったら太るのではないか?食事を増やしたら太るのではないか?」という印象が抜けずに、涙をこらえながら作業のように食べていた時期もあったという高瀬さん。しかし、現在はタンパク質、炭水化物、脂質のバランス(タンパク質2:脂質2:炭水化物6)を意識した食事に変更したことで、身体が引き締まっていき、自分のイメージが間違っていたことに気づいたという。また、ギリシャヨーグルトに果物やはちみつ、ナッツを加えて甘いものへの欲求も自然にコントロールできるようになった。
「脂質=憎いやつ、だった過去の自分から、脂質=必要なやつ、と思えるようになったのは、3カ月間の大きな成長のひとつです。食べることが楽しくなって、身体が軽くなって、周りからも変わったねって言われることが増えました。トレーニング方法も食事も見直したことで、他にも姿勢が良くなったり、肩こりがなくなったりといろんな変化も実感しています。見た目だけでなく、内側からの変化もすごくうれしく感じています」
高瀬さんの好きな童話は『うさぎとかめ』、好きな四字熟語は『積土成山(せきどせいざん)』。小さなことを地道に積み重ねることが、山のような大きな成果に変わる——─それが高瀬さんの信念だ。
「私、自分のことカメだと思っています。初大会から活躍できるような瞬発力もないし、自分自信にまだ自信もないです。でも、コツコツやってたら、気づいたときに『できた!』って思えるようになるかもしれない。今回の優勝で自分に少し『できた!』って思えるようになりました」
前回大会に流した悔し涙を乗り越えて、3カ月間のボディメイクの見直しで大きな結果を手にした高瀬さんの歩みは、これからもマイペースに、でも確実に続いていく。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材:柳瀬康宏 撮影:上村倫代
執筆者:柳瀬康宏
『IRONMAN』『月刊ボディビルディング』『FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。NSCA認定パーソナルトレーナー,ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、NASM認定コレクティブエクササイズスペシャリスト。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動。2019年より毎年ボディコンテストに出場中。