「痩せたい」「絞りたい」そんな思いから、炭水化物や脂質を徹底的にカットしていませんか?確かに一時的な体重減少は見込めるかもしれません。でもそれは筋肉や健康までも削っているサインかも!ボディビル元世界チャンピオンの鈴木雅さんとAthleteBody所属ボディビルコーチの本橋直人さんが脂質や炭水化物との上手な付き合い方を教えてくれます。
筋トレ初心者の落とし穴⑤
「減量」というキーワードで検索すると、本当にたくさんの減量法がヒットする。その多くに共通するのは、炭水化物や脂質の量を制限するというものだ。しかし、効果を期待するあまりに極端な制限をするのは好ましくない。
健康的な生活を送るためには、脂質を制限しすぎてしまうことはよくないようだ。ボディビルダーの減量というと、鶏胸肉、米、ブロッコリーというテンプレートが思い浮かぶが、これだけではやはり脂質が足りないだろう。DHAやEPAなどの必須脂肪酸を含む魚料理を加えるか、サプリメントの活用を考えてみると良い。
脂質が健康維持に大切であることが分かった。それでは、総摂取カロリーのうち、実際にどのくらいの割合を脂質から得るようにすると良いのだろうか。

「減量中ならば総摂取カロリーのうち15〜25%、増量中なら20〜30%程を脂質から摂取するのが一つの目安となります」(本橋)
減量中で摂取カロリーが2000キロカロリーなら、脂質から摂取する分は300キロカロリーになるということだ。減量をしている方は、脂質が足りているかを見直すきっかけにしてもらいたい。
炭水化物はどうだろうか。

「炭水化物を2日間制限したグループでは、制限しないグループと比べてスクワットの挙上回数が減ったという報告があります」(本橋)

「炭水化物が不足するとストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。そうすると交感神経の過活動が起こり、睡眠の問題が生じることがあります」(鈴木)
炭水化物を控えるダイエット法がブームになった時期が過去にあった。その当時の印象から、炭水化物は控えた方が良いと思っている方はまだまだ多いだろう。しかし、効率的なボディメイクを目指すならば、炭水化物をうまく活用していかないといけない。炭水化物と脂質の両方に言えることだが、まずは自分がどのくらいの量を普段から摂取しているのかを知ることから始める。そのためには、食事内容をメモしたり、計算のためのアプリを活用したりする方法が考えられる。慣れないうちは計算や入力に難しさを感じると思うが、自分の状態を客観的に知るためにも続けてみよう。そしてそのデータを元に、炭水化物や脂質の過不足がないかを見直していくと、情報に惑わされないボディメイクができるはずだ。
回避法!
すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2019年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在トレーナーとしては主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる。他にもアスレティックトレーナーや理学療法士に対して身体の原理原則をいかにトレーニングに落とし込むかといった指導にも携わる。
もとはし・なおと
1982年11月1日生まれ。埼玉県出身。AthleteBody.jpで活動中のパーソナルトレーナー。トレーナー歴17年であり、ここ10年は体組成改善に専門で取り組む。特にここ5年はボディビルやフィジークといった競技者のクライアントを多く指導している。久野圭一選手や昨年の日本クラス別で活躍した藤井貫太郎選手も指導を受け、指導前後の変貌振りがSNSで話題となった。
取材・文:舟橋位於 撮影:北岡一浩、舟橋賢、中島康介 Web構成:中村聡美
「脂質は身体の中で作られる種々のホルモンの材料になります。また脂質の中には、ヒトの身体の中では合成できず、体外から取り入れないといけない必須脂肪酸と呼ばれるものもあります」(本橋)