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筋トレ女子必見!高たんぱく・低脂質・栄養たっぷり&コスパ最強“鶏胸肉”が味方になる理由

鶏胸肉

筋トレ食材の定番・鶏胸肉。「高たんぱく・低脂肪」なのはもちろん、100gあたり70円以下で買える価格も魅力のひとつです。ただ「パサつく」「淡白すぎる」という難点も。ボディメイクのためだからと少々あきらめ気味に食べているということはありませんか?今回は、いっそうヘルシーで美味しいボディメイク食のために、鶏胸肉の魅力を再考し、調理のポイントと注意点をまとめます。

※Woman's SHAPE&Sports vol.27に掲載された「森弘子に学ぶ! 女性のための栄養学」をWEB用に編集したものです。

森弘子に学ぶ! 女性のための栄養学
最強ボディメイク食材〜鶏胸肉〜のトリセツ

筋肉作り食材としてのメリット

鶏胸肉(若どり/なま/皮なしの場合)100g中のたんぱく質量は23.3gです。厚生労働省が推奨する成人女性1日あたりのたんぱく質量は50g(トレーニングを積極的に行う人の場合はこれではとても足りませんが……)ですが、もしこれを鶏胸肉だけで満たすとしたら、215g=およそ胸肉1枚を食べれば良く、その場合の脂質は4gほどなので、リアルフードの中ではたんぱく質の摂取効率がとても良い食材です。
鶏胸肉のたんぱく質を構成するアミノ酸に注目してみましょう。一般的に動物性たんぱく質は必須アミノ酸9種類をバランスよく含み、体内でのたんぱく質合成に有効活用されやすい良質なたんぱく質です。鶏胸肉ももちろん必須アミノ酸9種類をバランスよく含み、なかでも分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれるロイシン、バリン、イソロイシンの含有量が多く、牛モモ肉や鶏モモ肉などと比べても豊富です。

BCAAの含有量

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

BCAAは主に筋肉で代謝・利用されるため、骨格筋にとって重要なアミノ酸です。特にロイシンは、その血中濃度と筋たんぱく質の合成速度に相関関係が認められており、筋たんぱく質合成のスイッチというべきmTORを刺激するため、体づくりにおいて重要なアミノ酸として注目されています。鶏胸肉のロイシン含有量はトップレベルで、こうした点でも最強のボディメイク食材と言えるでしょう。

ロイシンの含有量

日本食品標準成分表(八訂)増補 2023年

健康づくり食材としてのメリット

脂質は重要なエネルギー源ですが、動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸を摂りすぎると、血中コレステロールが増加し心筋梗塞などの循環器疾患のリスクが増します。これに対し植物性に多い不飽和脂肪酸は、細胞膜や生理活性物質の構成成分なので食事から摂取しなければいけません。鶏胸肉の脂肪酸の含有量を見ると、飽和脂肪酸0.45g、一価不飽和脂肪酸0.74g、多価不飽和脂肪酸0.37gで、動物性食品ながら飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸量が多いという特徴があり、生活習慣病を気にする方の食事にも取り入れやすいでしょう。健康面への寄与という点では、鶏胸肉に多く含まれる成分「イミダゾールペプチド」の抗疲労効果や抗酸化作用が注目されています。イミダゾールペプチドとは、2つ以上のアミノ酸が結合したペプチドで、動物の筋肉に(人間の筋肉にも)含まれています。鶏肉のイミダゾールペプチド(アンセリンとカルノシン)の含有量は豚ロースやマグロに比べてみるととても多く、こうした機能性も魅力のひとつです。

イミダゾールペプチドの含有量

「2019年度 国産チキンの訴求ポイントの科学的検証等検討会報告書. 一異なる条件で調理した時の鶏ムネ肉の肉質の解析-.」西村敏英(女子栄養大学 栄養学部)

食材としての美味しさ

鶏胸肉は脂肪分が少ないので、コクや口どけを楽しむことはできませんが、うま味成分の含有量は肉類の中ではトップクラス、つまり〝うまい〟肉なのです!食肉のうま味の正体は「グルタミン酸」と「イノシン酸」です。100g中のイノシン酸含有量を比べてみると、鶏肉150~230mg、豚肉230mg、牛肉80mg。グルタミン酸は鶏肉20~50mg、豚肉10mg、牛肉10mgです。うま味という点ではパッとしない牛肉、イノシン酸は豊富でもグルタミン酸が少ない豚肉に比べ、鶏肉は2つのうまみ成分を豊富に含んでいます。また、鶏胸肉と鶏モモ肉を比較すると、食鳥処理後2日間貯蔵した肉のイノシン酸量は、モモよりも胸肉の方が多いことがわかっています。

鶏胸肉を美味しく・安全に食べるには

この豊富なうま味を逃がさず調理できれば、鶏胸肉は「仕方なく食べる」というより、もっと食べたい食材になることでしょう。それには、加熱温度と加熱時間のコントロールが必要です。たんぱく質は50~60℃で凝固し始めます。高温で加熱するとたんぱく質が凝固して縮み、その結果保水ができなくなって肉の水分が滲み出ます。加熱した鶏胸肉が固くパサついてしまう原因はこれです。そして水分とともに大切なうま味も逃げ出してしまいます。これでは鶏胸肉の魅力は台無しです。水分を逃さずうま味を閉じ込めておくには、肉の中心温度が高温にならない調理を行う必要があり、その方法として人気なのが長時間かけて低温で食材に熱を入れる調理法です。ただしこの低温調理は加熱不足によるカンピロバクター食中毒のリスクに注意しなければいけません。内閣府の食品安全委員会は低温調理に警鐘を鳴らしています。

加熱の時間と内部(中心)の温度に注意を

「しっかりと加熱殺菌するには、63℃加熱なら肉の内部温度が63℃になってから、さらに30分間の加熱を維持する必要があります」(※内閣府食品安全委員会)安全に調理するには、63℃を維持して〝加熱し続ける〟ことが大切で、ネットなどのレシピでよく紹介されているジッパー付き袋などに肉を入れて湯に浸け、余熱を使って調理する方法は、肉の中心温度が十分に上がらないので止めるように警告しています。

手足、顔面の麻痺やギラン・バレー症候群の原因にも

カンピロバクターは鶏の腸管内に生息しており、食鳥処理時に肉に付着します。腹痛、下痢、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気等の症状が出、まれに手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があります。鶏肉に付いていた菌が調理器具や手指を介して他の食品に付き、それを摂取してしまうことでも食中毒の危険があるので、調理環境や道具の取り扱いには注意しましょう。(厚生労働省HP・東京都保険医療局「食品衛生の窓」参照)

■参考文献「2019年度国産チキンの訴求ポイントの科学的検証等検討会報告書.一異なる条件で調理した時の鶏ムネ肉の肉質の解析-.」西村敏英(女子栄養大学栄養学部)

森弘子
もり・ひろこ

ボディフィットネス東京大会4連覇、日本代表としてアジア大会などの国際大会に出場。トレーナーとして活動する一方、フィットネスジムのコンサルティング、サプリメント開発を行う。

文_森弘子 text=Hiroko Mori

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