5月4日、アクトシティ浜松中ホールで『マッスルゲート浜松大会』が開催された。ビキニフィットネスマスターズ部門で見事2位という結果を手にしたのは、杉岡あい(すぎおか・あい/43)さん。大会出場までのトレーニング内容や減量方法について話を伺った。
大会への挑戦のきっかけは、「人生でのやりたいことリスト」だったという。
「40歳までにやりたいことリストに、“親が経験したことを子どもの私も経験する”というのがあったんです。父は元競輪選手で、常に日本一を目指して努力してきた人。小さいころからその姿を見て育ちました。でも、その“本当の苦労”を、私はまだ知らない。ならば、自分も身体を酷使するような挑戦をして、日本一を目指してみようと。女性らしさや美しさも求められるこの競技で、日本一を目指そうと決めました」
杉岡さんのトレーニングは、重量を追い求めるのではなく、正しい動きで丁寧に回数をこなすことを重視したものだった。
「トレーニング頻度は、基本週4~5日ですが、うち週1日はパーソナルです。時間は1時間ぐらいです。内容は基礎中の基礎を徹底的にやりました。重量よりも丁寧にフォームを崩さず回数をこなすというのを心がけていました」
「食事に関しては、クリーンな食事で10kg増量しました。小麦粉、乳製品、油、砂糖はほとんど取らず、減量期も同様の食事内容で炭水化物の量を調整していきました。代謝が落ちやすい年齢なので、食事を見直すことで計画的に体重を落とせました」
そんな中、杉岡さんは過去に大きな試練を経験していた。
「実は、ちょうど1年前の浜松大会の直前に両膝を負傷していました。出場はできたものの、次の日からは車椅子生活に……支えてくれる人たちに本当に迷惑をかけてしまいました」
原因は、身体のケアを怠っていたこと。そこで杉岡さんは、トレーニングの根本を見直す決意をした。
「痛みを薬でごまかさず、電気治療・マッサージ・鍼などを取り入れて、原因を探るところから始めました。リハビリは足先の接地から徹底的に見直し、パーソナルトレーナーに常に補助してもらいながら“怪我をしない動き”を1年かけて身につけました」
そうして挑んだ今回の大会。無事にステージに立てただけでなく、2位という結果も手にした。
「ステージに立てたことがまずうれしくて。あぁ、生きてるなって感じました。怪我がきっかけで、本当に自分と向き合うことができたんです。これは人生で初めての経験でした」
身体と心に真剣に向き合い、復活を果たした杉岡さん。今後の目標についても、力強く語ってくれた。
「上手に歳を重ねて、深みのある身体を作りたい。そして、自然体でいながら父のように“トップを目指す人生”を、何年かかっても続けていきます」
諦めるのではなく、自分を信じて向き合い続けたからこそ手にできた今の姿。杉岡あいさんの姿勢は、何歳になっても挑戦できるという強いメッセージを私たちに投げかけている。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
執筆者:佐藤佑樹
主にFITNESS LOVEで執筆中。自身も大会へ出場するなどボディメイクに励んでいる。料理も好きで、いかに鶏胸肉を美味しく食べるかを研究中。
取材:佐藤佑樹 撮影:上村倫代