登録者数240万人を超えるヨガ界のトップYouTuber、Marikoさんがヨガとフィットネスを融合させた専門誌『Yoga&Fitness vol.14』に初登場。
美しいポーズと温かい解説で、動画を通して多くの人々の心と身体に寄り添っているMarikoさん。 現在、妊娠8カ月、間もなく第三子をお迎えするMarikoさんに、ご主人のTomoyaさんと二人三脚で開設したYouTubeチャンネル『B-Flow』について、ご自身の経験を踏まえたマタニティヨガの効能、 さらにヨガと「今」を大切にする生き方についても伺いました。
ヨガの学びを深め動画で共有
その繰り返しで気づけば10年
━━動画では美しいポーズやフローも印象的ですが、長くクラシックバレエをされていたそうですね。
Mariko まさに「それしかしてこなかった」と言えるほど、幼いころからバレエ一筋という生活でした。バレエ団を退団した後、20代半ばで一度目の結婚をしたのですが、それを機に名古屋へ移り住んだんです。
━━名古屋ではバレエの指導を?
Mariko そうですね。漠然と「働こう」と思ったときに、やはりバレエしか経験がなかったので。最初は近くのフィットネスジムでスタッフとして働き始めて、徐々にバレエを教える機会もいただきました。そのジムでは、さまざまなヨガのクラスが開催されていて、それがヨガとの初めての接点ですね。ヨガの指導のスタートは岩盤ヨガでした。
━━岩盤ヨガは当時、かなりブームでしたよね。
Mariko それもあって、岩盤ヨガのインストラクターを募集していたんです。その後は離婚を機に30歳目前で東京に戻り、バレトンやヨガの資格なども取りながら、独自にインストラクターとして指導を続けていました。
━━Marikoさんご自身は、最初にヨガと出会ったときから一生続けていきたいと?
Mariko 実は、ヨガの真価を深く理解したのはYouTubeを始めてからなんです。最初は、どちらかというとヨガをストレッチの一環として捉えていたところがあったんですね。でも、YouTubeを始めると、視聴者の方々からいただくコメントを通して、ヨガのさまざまな効果に改めて気づかされて。たとえば「不眠症だったのが、動画を実践してぐっすり眠れるようになった」とか、「うつに悩んでいたけれど、心がスッキリしてきた」とか。
━━コメントのなかには「心療内科の先生にこの動画を勧められた」というご意見もありましたね。
Mariko そういう方もいらっしゃいますね。肩こりなどの身体的な不調はもちろん、それ以上に心の悩みを抱えている方々がこれほど多くいらっしゃるんだと。そこから、ヨガについての学びをさらに深めたいという思いが強くなりましたし、学んだことを動画でアウトプットして、たくさんの方と共有し、その分また新たな学びを得て……の繰り返しで、今に至ります(笑)。
夫婦二人三脚で挑んだYouTube
コロナ禍がくれた大きな転機
━━ご主人のTomoyaさんと始められたYouTube『B-Life』。今春には『B-Flow』と名称を変更されましたが、ヨガ関連チャンネルでは圧倒的な人気ですね。
Mariko 来年で10年になります。最初のきっかけは、第一子を妊娠したときでした。妊娠を機にフィットネスジムの契約をすべて終了し、ちょうどその頃、夫も会社を退職して起業準備に入っていたんです。夫はそれ以前からYouTubeをビジネスのツールとして研究していて、「これからは個人の時代になる。自分たちの価値をオンラインで届けよう」と提案してくれました。最初はカメラに話しかけることに違和感がありましたが、「カメラの向こうに、いつもの参加者さんがいると思って話してごらん」と声をかけられ、少しずつ慣れていきました。
━━配信の方向性についてもTomoyaさんが導かれたとか。
Mariko はい。当初は私がやりたかったバレトンをメインにしていたのですが、夫が視聴データを分析して「ヨガの方が圧倒的に伸びる」と断言してくれて。最初は半信半疑で交互に配信していたのですが、ヨガの数字が明らかに良くて……。そのとき、初めて「私たちのヨガが誰かの力になれるのかもしれない」と感じました。今のようなYouTubeでの成功は、あのとき夫が軸をぶらさずに提案してくれなければ絶対に 実現していなかったと思います。ビジョンを持ち、数字で裏付けて私を導いてくれたことに、心から感謝し ています。
━━動画配信を続けるなかで、特にターニングポイントになった出来事はありましたか。
Mariko やはり新型コロナの感染拡大でしょうか。配信のスタートは 2016年の4月なので、コロナ禍以前から活動していましたが、コロナによって外出を控える人が急増して、自宅でできる運動への需要が飛 躍的に高まりました。その時期に始めたYouTubeライブなどもきっかけになり、登録してくださる方が飛躍的に増えましたね。
━━視聴者の方の反応で、特に印象的だったことなどはありますか。
Mariko 皆さん、外出できない状況 にストレスを感じていらっしゃるようでしたね。でも、続けているうちに知らない方々から「本当にありがとう」など心温まる感謝のコメントをいただくようになって。動画の配信に何か意味があるのかなと思いながら始めた私ですが、コメントを通じて、自分たちの動画が誰かの役に立っていることを実感できたんです。
妊娠期に寄り添うマタニティヨガの効能
━━2021年には第二子となる息子さんの妊娠を機に『魔法のマタニティヨガ』(B-Life著/世界文化社)を出版されました。改めて、マタニティヨガの大切さについて教えてください。
Mariko 妊娠中に出てくる不調というのは、その周期、その周期で変わってきます。初期には、つわりがありますし、ホルモンバランスの影響 でメンタルの浮き沈みも出やすい時期です。中期は身体が日に日に変化 していく時期で、骨盤が広がりやす くなっていきますし、股関節痛や腰 痛など骨盤周りの不調も出てきます。 そして後期に入ってくると、かなり腎臓も圧迫されてきて、頻尿に悩まされたり、胃のむかむか感や便秘、不眠に悩まされたりする人も多いんですね。
━━時期によって妊婦さんの不調やお悩みもさまざまなのですね。
Mariko だからこそ、その時々で上手にヨガを組み合わせることで、不調の改善につながっていくと思います。不調を軽減するためのセルフケアという意識でヨガを取り入れていくと、すごく元気に、快適に出産を迎えられるのではないかなと。また、ヨガで呼吸を整えていたことが出産のときも役立ちましたね。
━━特にどの場面で、そう感じられましたか。
Mariko 一番分かりやすいのは、やはり分娩時ですね。たとえば、お医者様や助産師さんの指示するタイミ ングで適切にいきむことができたり、呼吸を調整して陣痛の波に乗れたり。ヨガを通して深い呼吸ができるようになる、あるいは自分で呼吸を調整 する力が身につくことは、日常生活 はもちろんのこと、こうした出産のシーンでの「分娩力」にも役立つんだなと実感しました。
━━呼吸のほか、ヨガの経験が出産に役立ったことはありますか。
Mariko 他にもたくさんあります。 ヨガを継続していると、股関節の柔軟性が格段に増しますよね。分娩時は場合によって、股関節を開いた姿勢を長時間保つ必要がありますが、 股関節が硬いと、その姿勢が辛いという方も多いんです。動画のコメントでも、股関節の柔軟性について語られている経産婦さんがけっこういらっしゃいました。
━━第三子の出産を控えていますが、二度の出産経験を踏まえ、今回特に意識されていることはありますか。
Mariko 骨盤底筋の強化は意識して行っています。出産で骨盤底筋が緩んでしまうと、骨盤のぐらつき具合も変わってきますし、元の状態に戻すのにも時間がかかってしまうんですよね。しっかり締めることができなくなってくると、尿漏れや入浴後のお湯漏れが起きてしまったりします。第一子のときにそれをすごく経験したので、改めて骨盤底筋の大切さを痛感しました。
妊娠中は「自分時間」で心も身体もリフレッシュ
━━妊娠期は、身体だけでなく心の不調に悩む方も多いですよね。パートナーに、つい当たってしまうという声もよく聞きます。
Mariko よく分かります。でも、私の経験からも、そこで「どうしてイライラしちゃったんだろう」と自分を責めるのではなく、「この感情になるのはホルモンバランスのせいだから仕方がない」と、まずは自分を受け入れることが大切ですよね。自分にとって心地いいことをするなど、日常のなかで意識的に〝自分時間〞を取り入れることも、自分を受け入れるということにつながっていくと思います。私の場合は、ヨガや軽い運動で汗を流すことでリフレッシュしています。
━━ただ、特に初めての出産では妊娠中の運動に不安を抱きがちです。
Mariko もちろん慎重になったほうがいいとは思いますが、それと、ただじっとしていればいいというのとは少し違う気もします。たとえば、軽いストレッチくらいでもいいので、身体を動かしていただくと血流改善につながったり、リンパの流れもよくなったりと、いわゆる「全身の血の巡り」がよくなるんです。それだけでも心身のリフレッシュにかなり効果的だと思います。
━━逆に、マタニティヨガを行う上で気をつけておきたいことは?
Mariko お医者様の指示に従うことは大前提として、一番は無理をし過ぎないことでしょうか。心拍数が上がりすぎると全身に酸素が行き渡らなくなる可能性があるので、呼吸が安定しているくらいのペースで行うことが大切です。お腹が張ってきたなと感じたら、たとえ決めていたことの半分しかできていなくても、躊躇せずに休んでくださいね。
過去と未来より「今」を満たす
━━YouTubeも来年で10年、また、第三子をお迎えするなど節目となる時期を迎え、何か新しいチャレンジや目標などはありますか。
Mariko 私自身は、特に大きな目標は持っていないんです。産後には、以前から生活に取り入れているピラティスを、より積極的に取り入れていこうかなというくらいで。
━━ご主人は未来志向で、戦略的にさまざまな施策を導入されてきたと伺っています。一方で、Marikoさんは「今を大切にする」ことを軸にされているそうですね。
Mariko はい。夫は常に未来を見据えて行動しています。YouTubeの立ち上げや、バレトンからヨガへの転向、カレンダープログラムやLIVE配信、オンラインサロン、メンバーシップまで、チャンネルの成長につながるすべての取り組みは、彼のビジョンがあったからこそ生まれました。私は、その流れの中で、自分にできることを丁寧に積み重ねてきただけです。
━━「今を生きる」という価値観は、いつごろから意識されるようになったのでしょうか。
Mariko 若いころは未来に大きな期待をかけすぎてしまって、うまくいかないことがあると深く落ち込んでいました。でも、離婚や再出発を経験する中で、日々の暮らしを大切にし、「今この瞬間を満たすこと」が未来につながるのだと気づくようになりました。
人とつながり、流れに身を任せる
「B-Flow」という生き方
━━ブランド名の『B-Flow』にも、「今を生きる」ことの大切さが込められているように感じます。
Mariko 『B-Flow』という名前は、夫が考案してくれたものなんです。「Beinyourflow(自分の流れに身を置く)」という意味で、周りに流されるのではなく、自分にとって価値のある活動に没頭している状態を表しています。実はこのコンセプト自体も、彼が深く考えてくれていました。自分の情熱や才能を活かせる場所で、生き生きと過ごしていく。そのビジョンが、私たちのチャンネルや活動の指針にもなっています。私は人との縁や環境に恵まれて進んできましたが、その背景には、夫が描いてきた道筋が常にありました。
━━まさに二人三脚の歩みですね。Marikoさんご自身も人とのつながりをとても大切にされているのでしょうね。
Mariko そこは本当に大切にしたいところで。やりたいことがあるとすれば、自分たちのスペースを持つことで、今つながっている人たちと一緒に楽しめる場所、楽しめる時間を作っていけたら最高に幸せだなって。自分の活動や行動の指針としても、やはり実際に人とお会いしてお話している時間や、たくさんの方からいただいたコメントが原動力になっていますね。
━━最後に、ヨガやフィットネスについて、また健康について、読者の方にアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。
Mariko もしストレスを感じたり、何か心にもやもやしたことがあったりするときは、個人的に運動をお勧めしたいです。私自身が身体を動かすことが大好きだということもありますが、運動って「運を動かす」と書きますよね。少し身体を動かすだけでも、心身のリフレッシュに大きくつながりますし、それが自分の日々の充実感や、人生の満足感にもつながっていくと思うんです。無理のない範囲で、ご自身のペースで、ぜひヨガや身体を動かす習慣を取り入れていってほしいなと思います。
Marikoさんオススメ
骨盤底筋エクササイズ
出産時はもちろん、産前・産後にも大切や役割を果たす骨盤底筋群強化のエクササイズを紹介していただきました!
橋のポーズ
- ①あお向けになり両足を骨盤の幅で開いて両膝を立てる。
- ②肩から膝までが一直線になるイメージで、骨盤を後傾させながらゆっくり上げていく。
POINT
腰が反らないようにお腹を軽く締める。足裏でしっかり踏み込み、腿裏、臀筋、内腿の筋肉をしっかり使うことで骨盤底筋群が鍛えられる。
WARNING
仰向けの姿勢になると体調が悪くなるという方は控えてください。
花輪のポーズ(安産のポーズ)
股関節をしっかり開き、膝とつま先が同じ方向を向くようにしゃがんだら、背筋を伸ばし、肘と膝で押しあうようにして筋肉を拮抗させる。
POINT
この姿勢で息を吸いながら骨盤底筋を引き上げるイメージで膣を締め、吐きながらゆるめる。
WARNING
かかとが床に付きづらい人は姿勢が不安定になりやすいので、床に両手をついて行いましょう。
Marikoさんの
YouTubeチャンネル
Mariko
1981年、千葉県出身。10歳ごろからバレエ一筋でバレエ団の退団後、フィットネスジムでバレエ指導を務めながら、ヨガ、ピラティス、バレトンの資格を取得し、インストラクターとして活躍。2016年からご主 人のTomoyaさんとYouTube『B-Life』(現『B-Flow』)を始め、現在登録者数240万人と圧倒的な人気を誇る。
取材・文:藤村幸代 撮影:AP,Inc. ヘアメイク:平塚美由紀 Web構成:中村聡美