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ショルダープレスを進化させる!最強トレーニング「Zプレス」の効果とは【体幹ごと鍛えろ】

ダンベルトレーニングZプレスは、デッドリフトやスクワット、ショルダープレスにおいて重要な役割を果たす機能を強化できるエクササイズ。股関節や体幹の働きを高め、姿勢制御にも効果的です。正しく行うための注意点やコツを詳しく解説します。

※IRONMAN 2024年10月号に掲載された「検証!ファンクショナルエクササイズ」をWEB用に編集したものです。

股関節と体幹の機能を高める三角筋のエクササイズ “Zプレス”

デッドリフト

写真1 股関節のヒンジが必要なデッドリフト

デッドリフト(写真1)のフォームで必要な身体の主な機能は、「ヒンジ動作」です。ヒンジとは蝶番のことを指します。このヒンジ動作はデッドリフト、スクワット、ベントオーバーロウイングなどのエクササイズで非常に重要な機能です。

つまり、トレーニングの達人になるには、このヒンジ動作が正確にできるかどうかが重要なポイントになってくると言っても過言ではありません。

ところで、ヒンジ動作は下肢及び広背筋の種目だけで行われるのでしょうか?

シーテッドのショルダープレス

写真2 同じく股関節のヒンジが必要なシーテッドのショルダープレス

実は、肩(三角筋)のエクササイズも正確に行うためにこのヒンジ動作が要求されます。写真2はシーテッドのダンベルプレスですが、この種目においても股関節でヒンジが形成されることで、体幹がしっかり立ち、体幹の筋の動員が大きくなります。ヒンジができていないと写真3のように体幹が自立できず、背もたれに頼ったフォームになります。したがって、体幹の機能が高まらないままエクササイズを行うことになってしまいます。これでは、腹腔内圧が上手く利用できないので、当然ダンベルを挙げる出力は弱くなります。

ヒンジが正しく行われていないショルダー プレス

写真3 ヒンジが正しく行われていないショルダー
プレス

つまり三角筋を鍛えるショルダープレスでさえ、ヒンジ動作は必要になってくるのです。そしてヒンジ動作を上手く使い、股関節や体幹の機能を高めながら三角筋を鍛える効果のあるエクササイズが、今回紹介するZプレスです。

Zプレスを行う際に最初に必要な要素が、ヒンジ動作と同様、股関節の柔軟性です。ハムストリングスが硬いと、このエクササイズを行うことは不可能になります。

そしてもう一つ大事なのがやはり体幹の強さです。体幹は骨盤が直立した状態で、背もたれがない非常に不安定な姿勢を保持することが求められます。このとき大事なものが腹腔内圧です。

通常、三角筋のトレーニングは、背もたれのあるアジャスタブルベンチやショルダープレスマシンを使って行われます。身体を固定する面(基底支持面)が大きいほど身体が安定するので高重量が扱えるからです(写真2)。

ただし高重量が扱える反面、体幹を支えることをシートにもたれることに頼っているので、これらの種目で発揮できるようになった筋力が、日常生活やスポーツで使えるかどうかは疑問が残ります。

なぜなら腹腔内圧を正確にかけることができなくても、ある程度の高重量エクササイズができてしまい、これでは日常生活やスポーツと条件が異なってしまうからです。つまり機能的なトレーニングではないとも言えてしまいます。

機能的な身体を得るためには、基底支持面を小さくする必要があります。そして不安定な状態を故意に作ることも有効です。特に長座の姿勢はハムストリングの緊張が骨盤を倒そうと負荷をかけるので、人によっては非常に不安定なエクササイズになります。

そのための一つの手段としても、Zプレスは有効になります。

ただしZプレスを正しく行うには条件があります。それは次に紹介する「ウォールエンジェル」を行える機能を持っているかということです。これは、股関節の可動域と体幹の安定、肩関節の可動域を必要とするエクササイズです。Zプレスの説明に入る前に、まずはウォールエンジェルについて解説していきます。

●ウォールエンジェル

ウォールエンジェル

写真4 ウォールエンジェルのスタート姿勢、殿部を壁につける

長座位の姿勢で腰を壁につけた状態になります(写真4)。その状態で腕が壁から離れないように肩関節完全屈曲まで上げていきます(写真5)。

ウォールエンジェル

写真5 ウォールエンジェルのフィニッシュ姿勢

エクササイズの最中、もし殿部が壁から離れる、もしくは腕が壁から離れる場合はZプレスを行う機能が不足していることを疑います。ただしこのエクササイズ自体が矯正エクササイズにもなるので、できない場合もトレーニング前に行うことをお勧めします。

●Zプレス

Zプレス

写真6 Zプレスのスタートポジション

長座位の姿勢でダンベルを持ちます(写真6)。体幹を立て腹圧がかかった状態(息を吸ってお腹が太くなる感覚)を作り、その状態でダンベルショルダープレスを行います(写真7)。

Zプレス

写真7 Zプレスのフィニッシュポジション

どうしてもハムストリングが硬く、この姿勢が行えない場合は、写真8のように開脚した状態で行う方法もあります。この場合は内転筋の柔軟性も求められます。

Zプレス

写真8 開脚で行うZプレス

Zプレスを正しく行うことは、多くのトレーニーにとってとても難しいでしょう。しかし、このエクササイズを行えるようになれば、通常のショルダープレスの動作の質を改善する効果もあります。ぜひZプレスにチャレンジしてください。

井上大輔(いのうえ・だいすけ)

兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCA CSCS/NPO 法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本選手権第6位。

文・写真:井上大輔

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