マッスルゲート選手 コンテスト

「64歳、夢は終わらない――“還暦スター誕生”で歌姫に輝いた女性の物語」

5月31日、神奈川・カルッツかわさきにて、ゴールドジムが主催するスペシャルフィットネスイベント『還暦スター誕生』が開催された。

その名の通り、1971年の番組開始以来、数々のスターを輩出した伝説のオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ)をベースに企画された本イベント。開会冒頭では、同番組の第3代司会者である石野真子さんが音声で祝辞を贈るなど、懐かしさとリスペクトに満ちた演出が光った。

イベントの目玉のひとつはゴールドジム主催らしく、60歳以上限定で行われたボディコンテスト。男女合わせて約60名が出場し、自慢の肉体美を披露した。また、還暦版“スタ誕”にふさわしく、歌やダンスのパフォーマンスも展開された。

なかでも注目を集めたのが「歌の採点部門」だ。カラオケ採点で競われたこの部門で初代“歌の女王”に輝いたのは、渡辺和子(わたなべ・かずこ/64)さん。抜群の歌唱力と伸びやかな歌声で松田聖子の『風立ちぬ』を歌い上げ、堂々の94.740点を獲得した。

【写真】渡辺和子さんの熱唱シーン

出場のきっかけは1枚のポスター。

「都内のゴールドジムでジャズダンスのスタジオレッスンに通っているんですが、あるとき、ジムの壁に貼ってあったこのイベントのポスターを見つけて。その瞬間、『こんなのがあるんだ、出なくちゃ』と思ったんです」

そう語る渡辺さん、実は10代のころに数々のオーディション番組に挑戦してきた過去を持つ。

「『全日本ヤング選抜スターは君だ!』という番組で最終決戦まで残ったこともあります。でも、そのとき優勝したのは、後にロス・インディオスの2代目女性ボーカルとなった嵯峨聖子さんでした」

悔しさをバネに、地元・岡山から上京。本格的に歌手を目指し、働きながら日本テレビ音楽学院に通う日々を送った。しかし、夢は思うように進まず、やがて歌の道を断念することに。

転機が訪れたのは30歳のとき。建設業界に飛び込み、営業職として1日60件の飛び込み営業をこなすなど、懸命に働いた。そして57歳のとき、一念発起して内外装工事を手掛ける会社を起業。事務作業はもちろん、営業から施工管理、時にはヘルメットをかぶり屋根に上って検査まで、何でもこなす日々を送ってきた。

「この30年間は、ただただ一生懸命に働く毎日でした。それこそ、歌う暇なんてなかったですね。それが、この大会のポスターをきっかけに昔を思い出して、『出なくちゃ』と心が動いたんです」

大会当日は緊張で声が裏返ってしまい、「肝心なときに実力を発揮できないのは今も昔も同じかな」と苦笑しつつも、長年封印してきた“歌”で優勝を手にした喜びはひとしおだった。

「歌で優勝できて、本当にうれしかった。いい機会をいただき、感謝しています」

後半生をどう充実させていくか、不安や戸惑いを抱える人も多いなか、渡辺さんが教えてくれたヒントは「身体を動かすこと」とシンプルだ。

渡辺和子さん

「ジャズダンスのスタジオレッスンや社交ダンスが本当に息抜きになっているんです。私でも『死んじゃいたいな』と思ったことはありますけど、踊っているうちに『振りつけを覚えなきゃ!』と夢中になって、いつの間にか気持ちも軽くなっているんですよ」

身体を動かすことで心も前へと進む。そして、前に進んだ心がポスターを見つけ、置き忘れていた夢への一歩を踏み出させてくれた。年齢を重ねても、身体も心も“動かし続けること”が人生に輝きをもたらす。渡辺さんの物語は、その大切な真実を私たちに教えてくれた。

次ページ:渡辺和子さんの熱唱シーン

取材・文:藤村幸代 撮影:中島康介

-マッスルゲート選手, コンテスト
-

次のページへ >



おすすめトピック



佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手