2025年5月31日、神奈川・カルッツかわさきで開催された、60歳以上のためのスペシャルフィットネスイベント『還暦スター誕生』。フィットネスの祭典でありながら、出場者の背景や人生そのものが輝光を放つこの舞台で、「ドリームモデル60歳以上の部」の栄冠を手にしたのが南乃梨子(みなみ・のりこ/61)さんだ。
「ドリームモデルに憧れて、昨年から挑戦を始めましたが、予選2回を通過しての優勝は初めて。僅差で金メダルに及ばずという大会もあったので、自分の課題を一つひとつ見つけながら、コツコツと取り組んできました。その成果が出て、本当にうれしいです」
身長161cm、かつては65kgあったという体重。何度もダイエットに挑戦してきたが、「自己流では56kgの壁を越えられなかった」と振り返る。そんな南さんが本気で自分の身体と向き合うようになったのは6年前のこと。家業を手伝いながら、パーソナルトレーニングを受け始めたのが転機だった。
「一念発起してパーソナルに通い始めたら、半年ほどで体重が40kg台に。それからはトレーニングやボディメイクが本当に楽しくなって、今も楽しく継続できています」
今回の大会に向けた準備は順調に思えた。しかし、本番の3カ月前、左膝を負傷。「立ち上がることもできず、ヒールでの練習も困難」なほどだったという。それでも南さんは諦めなかった。支えとなったのは、ドリームモデルの提唱者・安井友梨さんからの温かい励ましと的確なアドバイスだった。
「5月に参加した友梨さんのセミナーで、昨年骨折から復帰されたときの経験や、そこから得た食事・メンタル面の工夫を親身に教えてくださいました。アドバイス通りに食事を整えたら、1カ月足らずで体調も回復。友梨さんの励ましに応えたいという想いが優勝につながったのかもしれません」
数年前、南さんは角膜の損傷により失明の危機に直面した経験を持つ。その経験が、実はドリームモデル挑戦の原点にもなっているという。
「移植手術を経て視力を取り戻すことができたのですが、そこから思うようになったんです。『60歳で大会に出て、フィットネスでメディアに載ってみたい』って(笑)。私にとっては本当に大きな転機になりましたね」
南さんには、深く心に留めている言葉がある。「すべてが必然であり、良いことも悪いことも常にセット。大変なことを経ない限り、美しい花は咲かない」。安井友梨さんのこの言葉が、さまざまな困難を乗り越え、花を咲かせた南さんの生き方にも重なる。最後に、同世代へのメッセージを尋ねると、南さんは晴れやかな笑顔で語ってくれた。
「生きがいを見つけて、目標を見つけてトライしてみてほしいです。60歳を超えても、まだ、どんなことだってできると。私は自分がまだ50代だと勘違いするようにしているんです(笑)。思い込みも、時には大事ですよね」」
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:藤村幸代 撮影:中島康介