グッズごとに様々な使い方があり効果も多岐にわたるが、のめり込みすぎて、コンディショニング自体が目的にならないようには気をつけたい。あくまでも、コンディショニングで身体の動きを整えた先にトレーニングがあるという意識は失わないようにしよう。
うまく使えない筋肉を活性化!
1. マッサージガン

自分の身体の中でどの筋肉が過緊張しているか、促通していないかを把握し、その部分に押し当てる
【狙い】
筋肉が張っている部分に使用して筋肉を緩めたり、促通させたりするのが主な狙い。また、緩める場合は部位により筋肉の停止部に使用することで効果が高くなる
【実際の効果】
自分の場合は小胸筋が短縮しやすく、そのせいで姿勢が悪くなったり肩甲骨が上がったりしやすい。小胸筋の停止部である烏口突起のあたりにマッサージガンを当てることで、短時間でも効果を感じやすく、手でほぐす場合と比べて不快感が残ることもない
・筋肉を緩ませる目的ならば強い振動で行わない
・促通を狙う場合は、逆に強めの刺激を短時間で与える
・振動が奥まで届くタイプのマッサージガンを選択する
〝短時間〞で関節可動域向上が期待できる
2. コンプレフロス

巻きたい部位に適度に一周巻き付けてから、1.5倍程度に引っ張りながら重ねて巻いていく。巻いた状態で雑巾絞りのようにして筋の癒着を取ったり、関節を動かしたりする
【狙い】
自分の場合は下腿の内旋が出にくいため、すねが内側に動くようにコンプレフロスを巻いて、後脛骨筋・腓骨筋などを刺激し筋のリセットを行う。マッサージガンと異なり、広い範囲に素早く効いてくる感じが得られる点が特徴
【実際の効果】
短時間で広い範囲にアプローチできる。下腿にコンプレフロスを巻きながら、距骨(足首にある骨)の周りにも巻き動作をする可動域を確保することができる。部分的にというよりは、広範囲に使用することで全体の動きが改善することを感じられる
肩甲骨を正しいポジションへ戻す
3. A-wear

基本は中指と小指にはめて使う。足指バージョンもある
【狙い】
スマホの使用やデスクワークが続くと、肩が内旋して猫背になりやすいが、A-wearで姿勢の修正がしやすくなる。また、モビリティドリル等の実施時にも着用することで、コンディショニングメニューの効果を高められる
【実際の効果】
中指と小指にはめて使うことで尺骨側が刺激でき、末梢である手からの情報入力ができる。A-wearの着用によって肩関節の外旋がしやすくなり、肩甲骨を良いポジションへと戻したり、姿勢を良くしたりする効果が望める。また用途によっては人差し指にプラスし使用することもある。コンディショニング時にはつけっぱなしにし、日常生活の段階からも使っていけると良い
ニーインしない身体に近づく!
4. ループバンド

❶脛の部分にバンドを装着する
❷バンドの張力に抵抗して、ニーインしないようにランジ動作をする
【狙い】
外力を加えることで、ニーインしないようにしたり、膝が安定した状態を作ったりできる。その結果として、股関節も安定して刺激が入りやすくなる効果がある
【実際の効果】
ニーインして脚が内側に倒れてしまうクライアントに使ってもらっている。外力が加わることで重心を正常に取りやすく中殿筋や小殿筋を活動させやすい。股関節を正しく動かすための意識づけもできる
内転筋を活性化し筋トレ効果UP
5. ループバンド&ボール

❶膝あたりにループバンドを巻く
❷両足の間にボールを挟み、膝を外に開くように動かす
【狙い】
ボールを足の間に挟んでエクササイズすることで、股関節、寛骨の位置に制約をかけ、内腹斜筋や内転筋などが活動しやすい状態を保つ狙いがある。押しつぶしながら転がすような使い方もできるため、空気を調整し、頭の下に置いて頸部のモビリティドリルの際などにも活用できる
【実際の効果】
ボールを両足で軽く挟み、膝を開いていく。このようにしてアイソメトリックの負荷をかけていくことで、筋肉を促通させる効果が狙える。促通がしっかりできると対象の筋肉が動かしやすくなり、トレーニングの効果もより高めることができる
※身体の左右非対称性や姿勢の不均衡を改善するためのエクササイズや治療アプローチ
〝全ての土台〞の足裏が整う
6. ナボソ ニューロボール

感覚が鈍い部分に当てて、重さを与えるようにする
【狙い】
足底の感覚が鈍いところにボールを当てて使用することで、感覚が入るようにする。自分の場合はかかとに感覚を入れたいため、ボールをかかとに当てた状態で荷重する。また長母趾屈筋のストレッチ効果も狙え、足裏全体をほぐす目的でも使える
【実際の効果】
ニューロボールを使った後は、母趾球、母趾頭、小趾、かかとがしっかりと床についた感覚が得られる。スクワット等で加重された場合も、それらの部位に負荷が乗っている状態が維持できる。そのため、かかとがつぶれずに足首が立った状態で動作できる
バランス機能を高めパフォーマンス向上を助ける
体幹・肩安定のための使い方も
7. ナボソ キネシスボード

・母趾、小趾、かかとで真っすぐ踏み込む
・足底に加重をしっかりかけるようにする
・ボードに乗った状態で下肢三関節(股関節、膝関節、足関節)を曲げ加重を行う
【狙い】
足底から感覚入力することで、バランス機能を取るための筋にアプローチができる。特に股関節の支持に必要な中殿筋・小殿筋・内転筋、また膝や足首周りの安定に必要な筋の連動を高める。部分的なアプローチではなく、全体的なパフォーマンス向上の目的で使う。両足行うが、片側に特に問題があるなら重点的にやっても良い。
【実際の効果】
特に左の股関節の動きや膝の安定に問題があるため、それを意識して重点的に行っており、改善効果が感じられる。キネシスボードの上でスクワットを行うような使い方もできるし、自分の場合は、トレーニング時のインターバルでも使うことがある

肩や体幹の安定を目的とした、ベアクロール(※)的なエクササイズもできる。
※ベアクロール:四つん這いの姿勢から膝を床から少し浮かせた状態で、手と足を交互に動かして前進または後退するトレーニング
刺激を入れると〝即時〞で効果が出る!
脚に刺激を入れしゃがみやすさUP
8. ナボソ ニューロスティック

感覚が鈍い部分や使えてない部分に押し当てて動かす
【狙い】
ほぐすという意味合いよりは、自分の中で感覚がない部分に刺激を与えていくイメージで使用する。即時で効果が出るため、トレーニング動作の中で「この部分がうまく使えてないな」と感じたときに使っても良い。直接対象筋を刺激するというよりは、上腕二頭筋のトレーニングの際に前腕の伸筋群に違和感があるときに使用したりと、動作の中で違和感がある部分に使用することが多い
【実際の効果】
「握りやすくなる」、「動きやすくなる」といった実感がある。末梢を刺激した結果として、肩の位置が良くなったり楽になったりという効果も得られる。下腿に使った場合も、脚全体が改善し、しゃがみやすくなったり立ち上がりやすくなったりする効果が狙える
片脚動作の安定でスクワット効果UP
9. ナボソ ソックス

着用して、床をしっかりと踏むようにする
【狙い】
本来はリカバリーを目的としたグッズだが、自分の場合は脚や背中のトレーニングの際に着用している。これらのトレーニングでは足底の感覚がとても重要なので、それを感じるために刺激を入れていく狙いがある。履き続けることがきつい場合は使うシーンを選ぶと良い
【実際の効果】
中殿筋・小殿筋・内転筋のような、片脚での動作を行う際に身体を安定させる筋肉に特に刺激が入るように感じる。片脚でしっかり立つ感覚が身に付くと、スクワットなどのトレーニングをした際に、脚の筋肉全体に適切に刺激を入れられるようになる
インナーマッスルを活動させる!
10. ピラティスリング

❶大腿の間にピラティスリングを挟み込む
❷床に仰向けになり、骨盤を若干後傾させるために腰の隙間を埋める。(腹直筋で制御しない)
❸両側からリングを押しつぶし、股関節を内旋した状態で姿勢をキープする

両側から押しつぶすように
【狙い】
姿勢が悪い場合は、内転筋・恥骨筋・中殿筋・小殿筋が機能していないことが多い。ピラティスリングを用いてアイソメトリックで持続的に負荷をかけることで、インナーマッスルや使えていない筋肉を活動させる狙いがある
【実際の効果】
骨盤を後傾させたポジションで実施すると同時に、呼吸も意識する。鼻から吸って、ストローで細く長く吐くようなイメージでできると、インナーが働いて姿勢に必要な筋を刺激することができる。このとき、アウターで肋骨を締めないようにすることが大切
特定の部分が軽くなり安定する効果を実感
11. SEV(セブ)

首や足首に装着する
【狙い】
自分は頸部ヘルニアを持っており、そのために首回りが固くなるということが多い。こういった構造的な問題は解決していくことが難しいが、SEVを日常的につけることにより、少しでも楽になり動かしやすくなるようにする
【実際の効果】
つけることによって、身体の特定の部分が軽くなって安定感が増す効果を感じられた。自分の場合は特に左脚の感覚が悪いため、足首用の SEVによる改善効果を強く感じる
すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINK フィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2018年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在トレーナーとしては主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる。他にもアスレティックトレーナーや理学療法士に対して身体の原理原則をいかにトレーニングに落とし込むかといった指導にも携わる。
取材・文:舟橋位於 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美