「小澤(亮平)選手や横關(裕二)選手など、最も激戦区である175cm以下級で優勝という評価を頂けたのはすごくうれしいです」
昨年の世界王者は、安堵したような表情でそう話す。8月10日(日)、大阪・門真市民文化会館(ルミエールホール)にて『第17回日本クラシックボディビル選手権大会』が開催された。身長別、そして無差別級となるオーバーオールでの優勝に輝いたのは井上貴文(いのうえ・たかふみ/34)選手だ。
【写真】抜群のプロポーションを誇る、井上貴文選手のバランスが美しい肉体
「昨年の男子ワールドカップでは、正直思ってもいないような良い評価をいただけました。この経験が自分の天井を破ってくれるきっかけになったんです。今年は非常に短い準備期間となったものの、多関節種目の重さを抜本的に変えて、身体作りをしてきました」
競技の面で言うと「自分の周りにはボディビル競技をしている人がいないので、同じステージに並ぶ小澤選手や横關選手は自分を引き上げてくれる存在」だと言う。福岡県に住む井上選手にとって、小澤選手や横關選手がいなければ「上にいけなかった」。物理的な距離はあれど、切磋琢磨し合える存在がいたからこそ突き破ることができたのかもしれない。
そんな良きライバルたちの思いも背負って臨んだオーバーオール戦。「彼らの思いも背負ってオーバーオールは取りたかった」と思っていたそうで、見事に総合優勝という結果を手にした。
井上選手は午後から行われた『ジャパンオープン選手権大会』にもエントリー。連戦となるが、クラシックボディビルで得られた結果と、同じステージに立った仲間たちの思いも乗せて挑んだ。
「結果がないと通用しない大きさを持った選手が山ほどいる。その中で見てもらえるように頑張っていきたいと思います」
そう話していた井上選手は、ジャパンオープンでも2位という成績を収めた。次は9月7日の『日本クラス別選手権』。トップビルダーたちが名を連ねる80kg以下級での挑戦だ。
「かなり厳しい階級なので、悔しい思いをすることもあるかもしれません。ですが、それも大切なこと。後から『あのときは調子が悪かった』とカッコ悪いことを言わないように、自分のやれることをしっかりやっていきます」
王者はすでに挑戦者の顔つきになっていた。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
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取材・文:小笠拡子 撮影:中原義史