近年、メキメキと頭角を表す期待の星たち。昨年から今年にかけて、「ファイナリスト」という壁を越えるために、 どんなことをしてきたのだろう。彼らの戦術の中に、「成長の秘密」が見えるかもしれない
取材・文:小笠拡子 Web構成:中村聡美
壁を超えるためのカギ
多関節種目の重量を伸ばしていくことに注力
井上貴文 2025年日本クラシックボディビルオーバーオール優勝

撮影:中原義史
Q.課題に感じていたことは?
扱える重量の許容量
やれているつもりになっていましたが、まだまだ頑張れていない部分があったんだ、と気づかされました。このことに気づかせてくれたのは、昨年の男子ワールドカップでさまざまなトップ選手に会ったこと。最も影響があったのは小澤亮平選手で、自分の「やれているつもりになっていた」という天井を突き破ってくれました。
Q.自分の身体を最も成長させてくれたのは?
体重比パフォーマンスUP!
男子ワールドカップでの出会いや情報交換などの経験も成長の要因としてありますが、「多関節種目の体重比パフォーマンス(※)をいかに伸ばしていくか」に重きを置いてトレーニングに励んだことです。見た目の分かりやすいところで言うと、脚の太さが変わりました。昨年の体重が最も重いオフシーズン時の脚と、今現在の体脂肪率が少ない状態での脚の太さを比べたときに、今の方が太いです。脚が強くなるということは、トレーニングのスタンディングの状態が強くなるということなので、他の部位もついてきたと思います。※自身の体重に対して、どれだけの筋力やパワーを発揮できるかを示す指標のこと
Q.トレーニング面で注力してきたことは?
使用重量の増加
前述したように「自分がやれているつもりになっていた」ことに気づき、対象筋に負荷が乗った状態で多関節種目の扱う重量を伸ばしたことです。今回のオフ期間は4カ月半という短期間でしたが、スクワットは150kgから170kg、ベンチプレスは130kgから140kgと扱える重量が伸びました。デッドリフトも少し伸びはしたんですが、もう少しオフの期間が欲しかったというのが本音です。
Q.食事面で変えたことは?
炭水化物量
去年のオフシーズンだとご飯は3合ぐらいでしたが、今年は4合半から5合にプラスしておにぎりやお餅を食べていました。昨年の減量期は1日せいぜいお米600gぐらいしか取っていなかったのですが、現在は朝300g、昼350g~500g、合間にお腹空いたらおにぎり1個、夜300g、寝る前にお餅を5個~8個と、かなり量が増えています。
Q.そのほか、変えたことや尽力してきたことは?
一流の方に聞く
ワールドカップのときに、鈴木雅さんに頭を下げて自分の課題を教えていただきました。そのときのメモは大切にとっています。その助言に基づいて、トレーニングをする前に整えてから入ろうか、と考えて行うようになりました。また、福岡にいるトレーニングパフォーマンスを向上させる先生に、足の裏の整え方や足底の使い方を習ったのも新たな取り組みの一つ。これでスクワットの数字が明らかに変わりましたね。
Q.一番の強みは?
観察力や再現性が高いのかもしれません
いのうえ・たかふみ
1991年生まれの34歳、福岡県在住。身長175cm、体重78.8kg(オン)、88~ 90kg(オフ)。普段はパーソナルトレーナーとして活動しており、趣味はファッションやゲームで、そちらにお金をかけたいタイプ。主な戦績:2024年IFBB男子ワールドカップ男子クラシックボディビル175cm以下級・オーバーオール優勝、2025年JBBF日本クラシックボディビル175cm以下級・オーバーオール優勝