筋トレは「若い人のもの」と思い込んでいないだろうか。現在59歳、来年4月に60歳を迎える髙田礼子(たかだ・れいこ/59)さんは、身長171.5cm、コンテスト時52.5~53kgというスレンダーな身体をボディメイクで保っている。「先月・先々月は月4回しかジムに行けなかったんです」というが、それでも体型の崩れを最小限に抑えられた理由は、日常を“軽いトレーニングの場”に変える工夫と、年齢に合わせた“絞りすぎない”発想にあった。
筋トレや運動を始める理由は人それぞれ。なにも目標は「大会出場」でなくていい。むしろ多くの中高年には「毎日5分の〇〇」「次の健康診断までに姿勢を良くする」といった“小さな到達点”が効果的だろう。
髙田さんは普段の買い物ついでの散歩を有酸素に、帰り道の重い荷物を筋トレに変える。自宅では広背筋・大円筋・ハムストリングに力が入っているかを“見て・触って・確かめる”マッスルコントロールを反復。大会に出なくても誰でもでき、筋肉への刺激はもちろん、トレーニングフォーム習得や可動域の感覚づくりに役立つ。
「家で背中を広げる練習をして、ちゃんと広がるか触って確認します。ハムストリングに力を入れて筋肉が出るかチェックするだけでも、日々の『使える筋肉』は変わります」
年齢を重ねるほど、ただ体重を落とすだけでは“若々しさ”から遠ざかるかもしれない。中高年に必要なのは、適度に筋量を残しつつ体脂肪を整える設計だ。髙田さんはここ数年、「いかに絞り過ぎないか」に舵を切った。数字の上下より、見た目の立体感と健康感を優先する。結果として胸の厚みや背中のVシェイプが際立ち、コンテストでの評価も上がったと話す。
「昔の写真を見ると、痩せてはいるのにラインのきれいな身体には見えませんでした。恐らく脂肪が多くて筋肉が少なかったんだと思います。今は筋肉量が上がって脂肪が少ない。当時と体重は同じでも、身体のメリハリも大きく違うと感じています」
また、髙田さん食事のポイントはいたってシンプル。「食べ過ぎない」「脂質に気をつける」の二本柱だ。極端な制限ではなく、余分な油を減らす工夫を徹底。たとえば、豚肉中心の食事でもフライパンにオイルを追加せず、肉から出た脂で野菜を一緒に焼く。パスタのように油を足さないと美味しくなりにくい料理は食べる頻度を落とす。一方で、素材由来の脂は“必要量”として受け入れる。すると、オフでも体重は53kg~54kgで安定し、コンテスト期には体脂肪だけがスッと下がる。
「脂質はゼロにしません。外食が多い人ほど無自覚に脂質を取りすぎていると思うので、まずは余分な油を減らす。それだけでも身体は変わります」
もう一つ大切なのが、日々の運動を続けられる仕組みだ。多くの挫折は「週に5回筋トレを続ける!」などといった、いきなりハードな目標設定をしてしまうことが原因となる場合が多い。無理のない目標設定を髙田さんは勧めている。
「週3回のジムが無理なら、週1回+自宅5分でいいんです。買い物の荷物を左右で持ち替える、皿洗い中につま先立ちを入れる、信号待ちで腹式呼吸を3セット――日常の行為に“負荷のひと工夫”をのせるだけで十分健康維持につながります」
「年齢は言い訳にしていいと思います。若い時の体力や柔軟性はない。だからこそ自分に合った強度とルールを選ぶべきです」
最後に、筋トレを始めて人生にどのような良いことがあったかを伺うと、髙田さんは「メンタルが強くなった」と即答した。
「トレーニングをやってきた分だけ『このくらい大丈夫』と思え、基準値が上がったように思います。また、コンテストを通じて出会ったかけがえのない仲間たちも、筋トレを始めて良かったと思える一つですね」
今日の買い物、今夜の台所、鏡の前の5分。その一歩が、健康を維持する確実な歩みになる。
取材・文:FITNESS LOVE編集部