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なぜ今、トレーニーが腸活に夢中なのか?100年の研究が導いた“トレーニング効果を底上げする”科学的アプローチ[後編]

前編では、筋肉づくりにおける腸内環境の重要性について科学的根拠を交えて解説。効率的な栄養吸収、疲労回復、メンタルヘルスの安定など、腸内環境がトレーニング効果を最大化するための“隠れた鍵”だったことをお伝えした。

後編では、長年にわたり消化と栄養について研究・開発を続けてきた企業の専門家たちの解説をもとに、なぜ今、腸活が注目されているのか、また約100年にわたる研究の歴史を通じて、現代のトレーニーが求める理想的な腸活アプローチがどのように生まれたのかを明らかにしていく。

腸活ブームの背景にある科学

「筋肉づくりにタンパク質は欠かせない」というのはトレーニーなら誰もが心得る“常識”だ。しかし、ただ量を増やせばいいかといえばそうではない。

「一生懸命タンパク質を取っても、お腹を壊してしまう方は少なくありません」と指摘するのは、『わかもと製薬』ヘルスケア開発部の鈴木信之部長だ。

「量重視」のアプローチがかえって消化不良や腸内環境の乱れを引き起こし、ひいてはトレーニングの停滞を招く。多くのトレーニーが、この消化不良こそが筋肥大の重大なボトルネックだと、体感として気づいている。

それにしても、なぜ今「腸活」がここまで広く世間の耳目を集めているのか。理由の一つは科学の進歩にある。「脳腸相関」研究の進展により、腸は単なる消化器官ではなく、免疫・メンタル・疲労回復といった全身の健康に深く関わっていることが明らかになってきた。

「腸内環境の重要性がエビデンスとして示されるようになったことは、腸活をブームから“根拠ある健康管理法”へと押し上げた大きなきっかけです」と鈴木氏は語る。

時代とともに進化した健康アプローチ

そんな現代の腸活ブームを、腸内環境研究の歩みと製品進化の歴史を紐解きながらより深掘りしてみよう。

実は、日本ではかなり早い時期から腸や栄養に関心が持たれていた。その代表例の一つが、実に100年近く前から研究を続けてきた『わかもと製薬』であり、腸活主力商品である「強力わかもと」も時代のニーズに応じて腸活の概念やアプローチを変えながら進化してきたという。

「製品研究の出発点は1926年(大正15年)までさかのぼります。戦前、国民の栄養状態は良好とはいえず、特にビタミン不足が深刻な問題でした。そこでビール酵母を活用した製品開発が行われたのです」(鈴木氏)

酵母には豊富なビタミンB群やアミノ酸、ミネラルが含まれており、1929年(昭和4年)に栄養剤として発売された「わかもと」は栄養不足に悩む当時の人々の健康を支えていった。

食生活の変化に対応した進化、そして腸内細菌研究の成果を取り入れた完成形へ

時代が進むにつれ、日本人の食生活も大きく変化していく。食の欧米化が進み、それに伴い消化不良を訴える人が増加した。

「この変化に対応するため、消化酵素に富む麹菌の研究が本格化していきます。この麹菌が加えられたことで、『わかもと』は栄養補給と共に“消化サポート”という新たな価値を提供することになるのです」(鈴木氏)

1955年(昭和30年)頃からは、腸内環境を整える「乳酸菌」の重要性が注目されるようになり、製品にもさらに乳酸菌が配合されるようになった。こうして誕生したのが、酵母(栄養補給)・麹菌(消化サポート)・乳酸菌(整腸作用)という3つの天然由来成分を組み合わせた「強力わかもと」だ。

「現在の製品は、消化・整腸の効能と、酵母由来の栄養補給の両方を兼ね備えています。こうした複合的な効能を持つものは今の承認基準内では新しく作れない、非常に特徴的な存在です」(鈴木氏)

約100年の研究が生んだ「トリプル効果」という解決策

長年の研究と改良の末にたどり着いたこの3つの成分は、まさに現代のトレーニーが抱える「プロテイン問題」にダイレクトに作用する。

・麹菌由来の消化酵素 → タンパク質や炭水化物の分解を助け、胃腸の消化負担を軽減する
・乳酸菌 → 腸内環境を整え、栄養の吸収効率を高める。未消化タンパク質による腐敗を防ぎ、腸内をクリーンに保つ。
・酵母 → ビタミンB群やアミノ酸を供給し、分解された栄養を筋肉へ合成し、エネルギーへ変換する代謝プロセスをサポートする。

つまり「食べたものを無駄なく、漏れなく力に変える」という、トレーニーにとって理想的な土台を整えてくれるのだ。

さらに効果的な活用法について、鈴木氏はこうアドバイスする。

「おすすめのタイミングは食後です。胃酸のpHが上がり、食物が胃腸にある状態で消化酵素や乳酸菌が働きやすくなるからです。実際、このタイミングで活用しているボディビルダーやアスリートの方々から、確かな効果を実感した声が多く寄せられています」

約100年前、栄養不足に悩む人々のために始まった研究が、今や“高たんぱく時代”を生きる現在のトレーニーの課題解決に役立っている。人間の身体の基本構造は変わらない。変わるのは時代と食生活、そしてそれに応じた科学的アプローチだ。

科学に裏打ちされた腸活は、トレーニング効果を底上げするための“新常識”となりつつある。

取材・文:藤村幸代 写真提供:わかもと製薬

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