
ボディメイクや健康のために筋トレやヨガを習慣にしようと励んでも効果よりも先に身体が痛くなって諦めてしまう、痛いけど無理に続けている……。そんな声を多く耳にします。
まずは身体を整えることが大切です。痛めやすい箇所としてよく挙げられる部位の「肩や首」と「腰」を改善し、筋トレ効果をアップすることができる、どこでもできるワークを2回にわたってご紹介。
今回は「腰」について。腰を守ることは身体全体のバランスを整えることにつながります。ぜひ実践してみてください。
[初出:Yoga&Fitness vol.15]強く、しなやかに痛めないカラダづくり 高野真利
肩や首と並んで痛めやすい部位として多く挙げられるのが「腰」です。「腰が張る」「反ると痛い」と感じたことのある人も多いでしょう。実はその原因は、局所的な筋力不足ではなく、身体全体の連動性の乱れにあります。腰は上半身と下半身をつなぐ〝要(かなめ)〞であり、わずかなバランスの崩れでも大きな負担がかかるため注意が必要です。
大きな要因となっているものとして、まず注目すべきは腹圧です。腹圧とは、呼吸とともにお腹の内側に自然に生まれる〝内側から支える力〞のこと。この力が弱いと背骨が安定せず、動作のたびに腰が反りすぎたり丸まりすぎたりします。また、骨盤も不安定になるため、筋肉の働きがアンバランスになり、痛みや張りが生じやすくなります。
さらに、背中や股関節の柔軟性も欠かせません。股関節が硬いと前屈やスクワットで腰が代わりに動き、腰椎への負担が増します。一方、背中が硬いと上体の動きが制限され、やはり腰に無理がかかります。
そして見落とされがちなのが胸郭の柔軟性です。胸周りが硬いと、反る・捻る動きで上半身が十分に動かず、その分の負担を腰が引き受けてしまいます。
このように、腰の不調は身体全体の影響を受けており、改善には全身へのアプローチが欠かせません。言い換えれば、腰を守ることは身体全体のバランスを整えることにつながります。ここで紹介するワークを実践することで、腰を守りながらトレーニングやヨガの効果をさらに高めることができるでしょう。
腹圧を高めて体幹を強化する
パヴァナムクターサナ
仰向けになって両膝を抱える。息を吐きながら、おへそを背骨につけるようにお腹を引き込んでいき、吐き切る。息を吸いながら緩める。上半身に力が入らないように気をつけて、10回ほど繰り返す。頭をあげるのがきつい場合は、ここまでにしてもOK。
息を吐きながら上半身を丸めていき、膝とおでこをつけて吐き切る。腕の力を使わず、骨盤底筋を引き上げて腹圧を高め、背骨一つ一つのスペースを広げるイメージで行うと、背中全体のストレッチになり、胸郭へのアプローチにもつながる。息を吸いながら上体を戻し、5回ほど繰り返す。
股関節の柔軟性を引き出す
アンジャネヤーサナとアルダハヌマナーサナ
四つ這いから右足を右手の内側に踏み込み、左足を少し後ろに引いて足の甲を伸ばす。両手の指先を立て、息を吸いながら上体を起こし、腰が反りすぎないように恥骨とへそを近づける。左足の付け根の伸びを感じるところまでお尻を下げる。
息を吐きながら右膝を伸ばし、股関節を引き込みながらお尻を後ろに引いていく。つま先を上に向け、腿の前の筋肉を引き締めて腿裏の伸びを引き出していく。膝が伸び切らなくても良いので、腰と背中を伸ばすようにする。息を吸いながら最初の姿勢に戻り、2つのポーズをゆっくりと時間をかけて3 ~5回繰り返す。左右を変えて反対も行う。
骨盤を安定させる筋肉を強化し左右差を調整する
アナンターサナのバリエーション

左体側を下にして、まっすぐ横になる。左肘をつき、側頭部を手のひらにのせ、右手は胸の前に置く。息を吐きながら、両足を遠くに伸ばすように持ち上げていく。左足の内腿や、右の脇腹を使う意識を持ち、体幹がぶれないようにして5呼吸ほどキープする。反対側も同様に行う。
NG
足が体より後ろにいってしまったり、肋骨が開いてしまうと、骨盤周辺や体幹の筋肉が上手く使われず、充分な効果が得られない。足を上げるのが難しい場合は、足を床につけたまま、まっすぐ横になる練習から始める。
呼吸から体幹を整える
「慢性的に腰が重い」「体づくりを始めたら腰を痛めてしまった」そんな声をよく耳にします。腰の不調は多くの人が抱える悩みのひとつです。
痛みを感じるとついその部分だけをほぐしがちですが、原因は腰そのものにあるとは限りません。体の一部が頑張り過ぎ、別の部分がうまく使えていないなど全体のバランスが崩れていることが多いのです。
「柔軟性があればケガをしにくい」と言われますが、それだけでは十分でなく、大切なのは体幹の安定です。体幹とはお腹、背中、骨盤、そして呼吸に関わる筋肉など体の内側すべてを含み、ここが安定すると腰への負担がぐっと減少します。
また、併せて重要なのが呼吸です。呼吸は誰もが自然に行う動作ですが、現代生活の中では浅くなりがち。深くゆったりとした呼吸を意識すると自然とインナーマッスルが働き始め、姿勢が安定し腰を守る土台が作られていきます。本来、人の体は自然な呼吸とともに、無理なく快適に動けるようにできています。その本来の機能を取り戻すことこそが、腰の不調を防ぎ、健やかに動ける体づくりの第一歩。まずは深い呼吸から始めてみてください。
たかの・まり
ヨガ、ピラティスインストラクター。Studio Pur(スタジオピュール)オーナー。某大手商社の営業として忙しい毎日を送る中でヨガに出合い、インストラクターに転身。ヨガ雑誌へのモデル出演や、CM映画でのポーズ監修、大規模なヨガイベントにも多数出演。ピラティス資格取得や単身NYにてヨガを学ぶ等、自分のスタイルを追及し続け、2022年【Studio Pur】を立ち上げる。体の使い方のみならず日常生活に生きるヨガとピラティスの教えを丁寧に伝えながら、働く女性の支援や動物愛護を視野に入れ、日々奮闘中。HP https://puryogastudio.com/
取材・文●高野真利 撮影●中原義史 Web構成●中村聡美











