フィットネス HYROX

兄弟で挑んだ71分の全力疾走——HYROXがつないだ“家族の絆”【HYROX WARRIORS no.18】

世界的に話題のフィットネスレース「HYROX(※)」で活躍する選手に迫るコーナー。第18回は、株式会社Cocochii&Co.の代表取締役・共同代表を務める鍵野友莉夏(かぎの・ゆりか/26歳)さんを紹介する。

※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。

【写真】兄弟で健闘を讃えあい、笑顔で写真に収まる鍵野さん
鍵野友莉夏さん

「また一緒に何か出たい」——兄弟でHYROXに挑んだ理由

鍵野さんが運営する 「Cocochii(ココチ)」 は、無理のないペースで身体を動かすことを通じて、日々の活力や前向きな変化を生み出すことを大切にしている。

運動を“頑張るもの”や“競うもの”として捉えるのではなく、自分に合ったペースで続けることで、心が前向きになり、メンタルの安定や日常の活力につながるものとして捉え直す。その考え方を社会に広げていくための取り組みだ。

「運動は、メンタルを前向きにするうえで本当に優れたツールだと思っています。だからこそ、特別な人だけのものではなく、誰もが気軽に取り入れられる形で届けたい。運動する人が増えれば、前向きに人生を歩む人も増え、その連鎖で社会全体が少しずつでも明るくなっていくと信じています」

一方で鍵野さんは、競技として運動に取り組んできた経験も持つ。レースに挑戦し、全力を出し切る時間そのものは、今でも大きな楽しみの一つだ。

「たまにレースに出るのは、今でも心から楽しいです。でも、ずっと頑張り続けることを前提にすると、運動は続かなくなってしまう。だからこそ、気軽に、楽しみながら身体を動かすことを大切にしています」

そんな鍵野さんがHYROXに挑戦した背景には、家族との思い出があった。

以前、兄とともに海外のスパルタンレースに出場した経験があり、家族で応援し合った時間が強く印象に残っていたという。

「『また一緒に何か出たいね』と兄と話していたことが、今回の兄妹ミックスダブルス挑戦のきっかけになりました。普段は一緒にトレーニングをすることもないので、家族の絆を深める機会としても、とても貴重な時間だったと思います」

競技経験や得意分野が異なる兄妹だからこそ、役割分担は自然と明確になった。

有酸素系が得意な鍵野さんがランをリードし、バーピーも多めに担当。一方で、パワー系に強い兄はスレッドプッシュやスレッドプルといった高重量種目をほぼ一手に引き受けた。

「スレッドはほぼ兄に任せました(笑)。それ以外の種目は、どちらかのスピードが落ちたら交代する形で、できるだけ均等に進めることを意識していました」

兄妹で積み重ねた準備期間——「初めてだから一緒に学ぶ」

HYROX出場を決めるまで、2人のトレーニングスタイルはまったく異なっていた。

「私はクロスフィット、兄はボディメイク中心のトレーニングをしていました。特に兄は下半身のトレーニング経験が少なく、HYROX特有の動きには不安もありました」

そこで2人は、HYROX専用クラスを設けているジムでレッスンを受講。競技ルールの理解から動作の習得まで、一から一緒に学んだ。

「初めてのレースで分からないことだらけだったので、一人じゃないことがすごく心強かったです。ミックスダブルスは男性重量が基準になるので、しっかりとパワーをつけるトレーニングにも重点的に取り組みました」

“できる準備はすべてやる”。そんな姿勢で臨んだ準備期間を通じて、兄妹で過ごす時間も自然と増えていった。お互いの得意・不得意を理解しているからこそ、衝突する場面は全くなかったという。

限界の先にあったもの——71分が生んだ達成感と絆

レースで最も印象に残っているのは、後半に差し掛かり、心身ともに限界を感じた瞬間だった。

「かなりきつくなったタイミングで、兄と声を掛け合いながら一緒に乗り切れた瞬間が一番印象に残っています。ここまで本気で兄を応援したのは初めてでしたし、兄から大声で応援されるのも新鮮でした」

結果は、目標としていた90分を大きく上回る71分。年代別では日本人の中では2位という好成績も残した。

「本当に満足のいくレースでした。練習から本番まで一緒に過ごす中で、兄妹のコミュニケーションも自然と増えましたし、家族の中でも共通の話題ができたことも嬉しかったです」

兄妹や友人、パートナーとともに挑戦することで、競技以上の価値が生まれる——そのことを、鍵野さん自身も実感している。

「次はもう少しタイムを縮められたら嬉しいですね。でも何より、“楽しむこと”が一番だと思っています」

兄妹で同じ目標に向かい、楽しみながら挑んだHYROX。 それは単なるフィットネスレースではなく、家族の絆をあらためて実感する“ウェルネスな体験”でもあった。

運動を通じて心が前向きになり、日々の活力につながっていく——鍵野さんが「Cocochii」で大切にしてきた価値観は、このHYROXの挑戦の中にも表れていた。

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文:林健太 写真提供:鍵野友莉夏

執筆者:林健太
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロで出場。

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