ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル「前田のまいにちセルフケア by GronG」(登録者は29万人以上※2025年2月時点)を運営する前田修平さん(NASM-PES、はり師・きゅう師)が科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝える本連載。第7回のテーマは「猫背」です。
ココがポイント
繰り返す、姿勢改善のために最も重要なのは「筋力の強化」である
何もせずして、良い姿勢が維持できないことは、あなたも心の奥深くではわかっているはずだ。「最近、肩こりがひどい」「なんか首が前に出ている気がする」「鏡に映った自分、なんか老けて見える」と悩んでいないだろうか。
猫背はただ見た目の印象が悪いだけでなく、肩こり・頭痛・腰痛といった身体の不調の原因にもつながる場合がある。美しい姿勢を取り戻すためには、どんなセルフケアが必要なのだろうか。今回は今日からはじめられる小さな運動を中心に、具体的な方法を紹介する。
猫背解消に必要な要素
猫背は「上位交差性症候群」という状態をわかりやすく言い換えたものだ。猫背をはじめとする姿勢不良は、筋肉のバランスが崩れることで起こる。主に肩や背中など頭を支える筋力の低下、胸や肩の前部などの柔軟性低下が考えられる。
解消するためには
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1筋力の強化(これが最も重要)
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2柔軟性の向上
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3上記1、2のための運動を継続すること
が必要になる。裏を返せば、自分の身体ひとつでできる方法は、これ以外にない。
【step1】猫背改善のための筋力強化
いくら柔軟性を高めても、いくら良い姿勢を意識しても、結果としてそれを支え続ける筋力が弱ければ、猫背の解消は叶わない。運動習慣がない方の場合、セルフケアの中で最も重要といっても過言でないのが「筋力強化のためのトレーニング」なのだ。トレーニングというとハードルが高く感じるかもしれないが、何も重いダンベルやバーベルを持ち上げる必要はない。図で示したように背中や首など、背骨周辺の筋肉を鍛えることで、姿勢を安定させる力が増す。
今日からできるセルフケア方法として、下記のトレーニングを取り入れてみよう。
あご引きエクササイズ
前方に突き出たあごや頭部の位置を後方に引くためのエクササイズ
・姿勢を正し、あごを上げる。
・姿勢を維持したまま、あごを鎖骨に近づけるようにして、首の前の筋肉を鍛える。
・10回×2セット
バンザイスクワット
弱った背筋群を鍛え、姿勢の維持をサポートするエクササイズ
・腰幅で立ち、つま先をまっすぐ前に向け、両手を上に伸ばす。
・両手を伸ばした状態をキープしながら、おしりを後ろに引きながらしゃがむ。
・背中が丸まらないところで3秒キープ
・10回×2セット
バンザイ片足立ち
身体の前面、背面にある姿勢保持のための筋肉をバランスよく鍛えるエクササイズ。
・片足を持ち上げ、膝を90度に曲げる。両手を上に伸ばす。
・足を持ち上げたまま、肘を曲げる。身体の真横で腕を曲げ伸ばしする。
・足を交互に入れ替えて、同様に腕の動きを繰り返す。
・10回×2セット
これら3つの動作により、背骨周辺の筋肉を少しずつ強化していこう。
【step2】柔軟性向上のためのストレッチ
鍛えて、弱い筋肉を活性化させた後、猫背解消の第2ステップは柔軟性向上だ。胸や背中の筋肉が硬くなると、肩が前に出てしまい、猫背を助長する。
小胸筋のストレッチ
・ひじと肩の高さが同じくらいになるように壁に手をつく。
・胸を開く方向に身体をひねり、手をついたままゆっくりと伸ばす。ある程度伸びを感じたら、軽く胸を張る。手の親指が上に向くように肩をねじると、さらにストレッチ効果が増す。
・30秒~60秒×2セット
肩回しストレッチ
・背筋を伸ばし、ひじを曲げて、手を肩に乗せる。
・ひじで円を描くように内側から外側にむけて回す。
・30秒×2セット
継続することの大切さ
ここまででトレーニングの重要性は、おわかりいただけただろうか。ストレッチは筋肉の柔軟性を高めるが、筋力を向上させることはできない。筋力を強化するには、負荷をかけたトレーニングが不可欠なのだ。
さて、問題はここから。姿勢を変え、それを維持するためには継続がカギとなる。運動の効果は継続すればするほど、身体にメリットをもたらしてくれる。仮に1回でもトレーニングとストレッチをした場合、「キツイなあ」と感じつつも、終わった後の心地よい疲労感や一時的な感覚の変化はあるだろう。
しかし、その感覚は持続するわけではない。ヒトの身体は繰り返しの動作によって、運動を学習しながら、姿勢や動作を修正するようにできている。たとえば1回英語を話しただけで、英会話ができるようにはならない。単語帳でひとつずつ単語を覚えたり、リスニングをしたり、実際に英語を話す場を設けたりを繰り返して、はじめて習得できるものだ。
運動も同じ。トレーニング、ストレッチなどさまざまな運動にコツコツ取り組んだ結果、よい姿勢を獲得できるのだ。
まとめ
行動科学によると、情報を得た人のうち実際に行動に移す人の割合は約10%程度と言われている。さらに行動に移した人のうち、継続できるのはそのうちの10%程度らしい。つまり全体の1%の人だけが猫背を解消できるという計算になる。あこがれているあの人や、何だか素敵なあの人は、結局何かしらの行動を継続しているはず。
「あこがれるのをやめましょう」という言葉は、決してトップアスリートだけの世界に通じるものだけではない。
エクササイズによる筋力強化、ストレッチによる柔軟性向上、それらセルフケアの習慣化は思い立ったその瞬間から取り組める。この連載を読んだだけでは姿勢は変わらない。あこがれているだけの自分を手放し、よい姿勢の自分になれるかどうかは、あなたの行動次第なのだ。
著者:前田 修平(まえだ・しゅうへい)
NASM-PES、はり師・きゅう師。ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル『前田のまいにちセルフケア by GronG』を運営。登録者は29万人以上(※2025年2月時点)。科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝えている。
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