今、フィットネス界で最もタフで、最もエキサイティングなコミュニティがここにある。性別、年齢、そしてハンディキャップ。あらゆる境界を溶かし、老若男女が等しく「自己ベスト」を追い求める熱狂のステージ、それがHYROXだ。5名の完走の先に見た景色をインタビュー。
取材・文:林健太 写真:本人提供 Web構成:中村聡美
車椅子でも挑めるレースへ
パラクライマーの新たな挑戦
パラクライマー
平井亮太 38歳
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なぜHYROXに挑戦した?
僕は車椅子ユーザーですが、以前から「車椅子でも挑戦できるスパルタンレースのような大会があればいいのに」と思っていました。そんな時にHYROXを知り、横浜大会の様子をSNSで見ていたところ、海外で車椅子ユーザーが出場している写真を見つけました。「車椅子でも挑戦できるのか」と驚いて調べ、日本でも参加できると知った瞬間に「やりたい、絶対やる」と決めました。普段はパラクライマーとして活動しているため、長時間動き続けるトレーニングはしておらず、心肺機能や持久力には不安もあります。それでも「できるかできないか」ではなく、やりたいと思える情熱があるなら挑戦すべきだと思っています。
逆に「ここは楽しかった!」と思えた瞬間は?
正直、競技中に「楽しい」と思える瞬間はありません。本当に楽しめるのは、すべてやり切って終えたときだけです。途中で妥協すれば後から必ず悔しくなりますが、全力を出し切り自分との闘いに勝てたと感じた瞬間には、大きな達成感と満足感があります。苦しいことを乗り越えた先にある喜びこそが、終わった後に笑顔になれる理由だと感じています。
レースを通じて感じた身体や心の変化は?
HYROXに向けたトレーニングを通して、身体も心も変化を感じています。坂道ダッシュや長距離ランニングを重ねる中で、少しずつ持久力やプッシュ系の力が向上してきました。競技中は手を抜こうと思えば抜ける状況の中で、自分に負けない選択を続けることで、メンタルの強さや集中力も少しずつ身についてきて、その積み重ねが自分を信用できる土台になっています。
日本にHYROXを広めたパイオニア
2児の母が挑む世界の舞台
HYROX日本代表キャプテン
佐藤美智子 48歳

なぜHYROXに挑戦した?
海外で話題になり始めたフィットネスレースの存在を知り、「これは日本でも必ず広がる」と直感しました。2023年5月に香港大会のWOMEN PRO部門に初出場し、総合2位という結果を残すことができました。ここから世界ランキングに食い込み、競技を通してフィットネスの楽しさや挑戦する喜びを多くの人に伝えたいと思うようになりました。
HYROXの魅力は?
HYROXはランニングとワークアウトが交互に続くハードな競技ですが、必ずしも全てを全力でこなす必要はなく、自分のペースで進めることができます。「まだできる、絶対できる」と自分に声をかけながら乗り越えた先には、大きな達成感があります。初心者からトップアスリートまで、それぞれの目標に合わせて挑戦できるところが魅力だと思います。

HYROXを通して感じたことは?
挑戦を続ける中で、多くの人との出会いがあり、環境も大きく変わりました。結果を出すことももちろんうれしいですが、振り返るとそこまでの過程にこそ大きな価値があると感じています。年齢や経験に関係なく、挑戦する舞台は自分で選ぶことができます。HYROXを通して、その一歩を踏み出す楽しさを多くの人に伝えていきたいと思っています。
夫と挑むHYROX
補い合う強みで表彰台へ
クロスフィット世田谷経営&トレーナー
森田光希 41歳

なぜHYROXに挑戦した?
最初はそれぞれシングルで出場する予定でした。しかし、フィットネス界で注目されているご夫婦がダブルスに出場すると聞き、「同じ舞台で勝負したい」という気持ちが芽生えてエントリーを変更しました。こうして夫婦で力を合わせて挑む新しいチャレンジが始まりました。
レースではどのような役割分担でしたか?
夫(太郎/42)はクロスフィットで鍛えたストレングスが強みで、私はランニングコーチとしての走力が強みでした。ランは私がリードし、スレッド種目などのパワー系は夫が担当。ローイングやウォールボールは夫、サンドバッグランジは私が中心になりました。唯一お互い苦手なバーピーブロードジャンプは、こまめに交代しながら乗り切りました。

HYROXを終えて感じたことは?
レースでは終盤に夫が足を攣るアクシデントもありましたが、結果はミックスダブルス40~44歳カテゴリで2位でした。数カ月のトレーニングを経て迎えるレースは本当に楽しく、終わった後も自然と夫婦の会話にHYROXの話題が増えました。
兄と挑んだHYROX
家族の絆を深めたレース
合同会社Cocochii&Co.共同代表
鍵野友莉夏 26歳

なぜHYROXに挑戦した?
以前、兄(30)と一緒に海外のスパルタンレースに出場したことがあり、「また一緒に何か出たいね」と話していたことがきっかけです。普段は一緒にトレーニングすることもないので、兄妹でミックスダブルスに挑戦できるのはとても貴重な機会でした。家族で応援し合った思い出もあり、今回のHYROXは家族の絆を深める挑戦でもありました。
兄妹でのレースはどうでしたか?
得意分野が違うので自然と役割分担ができました。私は有酸素系が得意なのでランをリードし、バーピーも多めに担当。パワー系の種目は兄が中心で、スレッドプッシュやスレッドプルはほぼ任せていました。どちらかのペースが落ちたら交代しながら、できるだけバランス良く進めることを意識していました。

HYROXを終えて感じたことは?
レース後半でかなりきつくなったとき、兄と声を掛け合いながら乗り越えた瞬間が一番印象に残っています。ここまで本気で兄を応援したのは初めてでしたし、兄から大声で応援されるのも新鮮でした。結果は71分で、目標の90分を大きく短縮することができました。次はもう少しタイムを縮めたいですが、何より楽しみながら挑戦することを大切にしたいと思っています。
元・新日本プロレスヒールユニット『TEAM 2000』
人気プロレスラーの挑戦
プロレスラー
AKIRA 59歳

なぜHYROXに挑戦した?
Instagramで偶然目にした動画がきっかけで、「自分も挑んでみたい」という情熱が芽生えました。2020年からクロスフィットジムに通い、Open Games(クロスフィットの大会)にも参加してきましたが、動きによっては思うようにパフォーマンスを発揮できないもどかしさも感じていました。
プロレスとのギャップについては?
不安はありましたが、やると決めたからには本気で挑みたいと思いました。ジムでのトレーニングに加え、自宅前の駐車場や近隣のランニングコースでもトレーニングを実施。本番を想定し、1kmのランとファンクショナル系エクササイズを組み合わせた独自のサーキットトレーニングなど、限られた時間の中で最大限の準備を重ねました。
HYROXを終えての感想は?
最初の1kmランを終えた後のスキーエルゴが、大きな壁のように感じました。開始早々、完走できるか不安になりましたが、5種目目のロウイングあたりから、漕ぐ一回一回、走る一歩一歩がゴールに近づいている感覚が強くなり、高揚感でいっぱいになりました。














