ナチュラルオリンピアオーバーオール3位という活躍を見せた竹下竜陛選手。岡田隆氏のYouTubeでは異次元の絞りと評されるほどの仕上がりが目を引く。トレーナーとしても人気な竹下選手から読者にも実践しやすい減量法を聞いた。
取材・文:塚本建未 撮影:IRONMAN編集部 写真提供:竹下竜陛 Web構成:中村聡美

━━選手としてもトレーナーとしても減量で注目を浴びている竹下選手。減量においてまずはどのようなことを気にされていますか。
竹下 減量は、摂取エネルギーと消費エネルギーのカロリー計算が必要になります。消費エネルギーの設定に必要な基礎代謝の計算は、ネットで調べると計算ツールが複数ヒットしますので、そこに年齢、身長、体重などを入力して、おおよその基礎代謝を算出できます。その基礎代謝に想定される運動量をかけてトータルの消費エネルギーを計算します。一般の方だと週4〜5日の運動頻度の場合で、基礎代謝の1.5〜1.6倍程度が、消費できるエネルギー量になります。その数字と摂取エネルギーの収支がマイナスになると体脂肪の減量が期待できるのです。
━━競技に向けた体重管理にピリオダイゼーションは取り入れていますか?
竹下 ピリオダイゼーションを取り入れていた時期もありましたが、今は摂取カロリーの増減は年間を通じて200〜300㎉くらいの範囲に収まっています。大会の2〜3カ月前から徐々にエネルギー収支をマイナスにしていく感じですね。とにかく食べて体重を80㎏まで増量させたこともありましたが、実際には筋肉量は多分2〜3㎏ぐらいしか増えていないという経験から、今は増量も8㎏〜10㎏程度に留めています。今年からは、より増減を押さえて4〜5㎏の範囲で体重をコントロールしていますね。

━━減量ではどんな運動をされているのですか?
竹下 私の場合は、減量期だけでなく増量期も含めて有酸素運動を行っています。具体的には筋力トレーニング後に大体20〜30分、トレッドミルで有酸素運動を行います。強度は心拍数100〜110ぐらいのいわゆるファットバーンゾーンに設定しています。ウエイトトレーニングも含めて、年間を通して運動内容に大きな変化はないですね。昨年までは増量期と減量期で運動内容も分けていましたが、現在はエネルギー収支を合わせるために微調整をするのみにしています。
━━なかなか運動の時間が取れないクライアントには、どのようにアドバイスされていますか?
竹下 例えば、医療職や介護職などのシフト勤務の方には日常生活動作(ADL)で消費エネルギーを増やすようにアドバイスしています。最寄り駅より一駅前で下車して家まで歩く、車を使わずに買い物するといったように、筋力トレーニング後に有酸素運動をしなくても、日常動作の中でトータルの消費エネルギーを増やすことは可能です。自分のライフスタイルに合わせて、習慣として減量のための運動を日常に落とし込めるような仕組みを提案させてもらっていますね。習慣にまで落とし込めたクライアントさんは成功されている方が多いです。
━━栄養面も同じように1年を通して変化はないのでしょうか?
竹下 摂取カロリーは2800㎉前後で年間を通してほとんど一定です。減量期は基本エネルギー収支をマイナス100〜200㎉になるようにし、減量末期は摂取カロリーを2000〜2200㎉にして調整していきます。増量期は、逆に収支がプラス100〜200㎉になるようにします。大会の開催時期から逆算して2〜3カ月かけて減量していくイメージですね。現在は、5月開催のINBA上海大会に向けて減量期に入っており摂取カロリーは2400〜2500㎉になっています。この大会で結果を出せれば、11月にラスベガスで開催のナチュラルオリンピアへの出場権を獲得できるので、同じように大会1〜2カ月前に減量期に入ると思います。
━━食材のこだわりについて教えてください。
竹下 毎日の食事で使う食材も、ずっと変わっていません。タンパク質は、鶏胸肉・鯖缶・全卵・納豆、脂質はオリーブオイル・全卵・納豆・豆乳、糖質は玄米・雑穀米、その他の栄養素はわかめ・干ししいたけ・ブロッコリー・ほうれん草といったように、食材も固定しています。
━━サプリメントは?
竹下 昨年まではプロテインを飲んでいましたが、今はマルチビタミン&ミネラル以外、サプリメントは摂取していません。競技の世界にいると、一般の方と栄養に対する考えが少しズレてきてしまうように感じます。例えばクレアチン、マルトデキストリンといったサプリメントをおすすめしてみても「私には必要ない」といった反応になることが大半です。私は一般の方にも実現可能なフィットネスを普及していきたいので、私自身も競技者特有のアプローチではなく、一般の人にも実践できるアプローチを取っています。
━━食材の調理はどのようにされていますか?
竹下 調理は朝に行い、昼用の弁当と夜用の食事もまとめて作ります。味付けは塩だけのものが多く、家にある調味料も塩と醤油のみですね。使う食材もほぼ決まっています。「なんで、そんな食生活を続けられるのですか?」と尋ねられることもあるのですが、毎回の食事が本当に美味しいと感じているので、苦にはなっていないのです。その代わり、食材にはこだわって、素材そのものの美味しさで継続できるようにしていますね。
竹下選手のある日の食事メニュー
━━クライアントにも、同様の食事メニューを提案されているのですか?
竹下 私の考えに共感してくれる方には同じ方向性でアドバイスさせてもらっていますが、全員に私と同じ食事メニューを当てはめることは困難ですので、消費と摂取のエネルギー収支をある程度守ってもらえれば、それ以上は細かな食事管理を強いることはないですね。気合いだけで乗り切ろうとしても難しいので、体重管理を無理なく日常の習慣に落とし込むのが大切です。
━━疲労管理についてはいかがでしょうか。
竹下 減量末期で疲労度が増すと自律神経系のメンテナンスも必要になってきます。そこで重要になるのが睡眠です。睡眠時間を確保できないと、パフォーマンスが低下します。大会直前は追い込む意識が強くなって無理を重ねてしまいがちですが、疲労度によっては1日完全にオフにして睡眠をしっかり取ることも大切です。私の場合、睡眠時間は8〜9時間です。大体21時から22時には就寝、朝は6時に起床していますね。
━━減量において重要なのは睡眠時間も含めて規則正しい生活ということでしょうか?
竹下 結果が出なかったときに原因を分析するために、規則正しい生活と決まった食事・運動メニューが大事だと思っています。トレーニング頻度は週7日ですが、時間は1日45分程度にし、その分、睡眠時間や休養も多めに確保しています。減量を気合いで乗り切ろうとすると、競技生活もつらさが増してしまいますので、こうした休養面で管理することも重要だと思いますね。
生涯現役のフィットネス人生

━━今年の大会に向けての意気込みを聞かせてください。
竹下 昨年、ナチュラルオリンピアのオーバーオールで3位になることができましたが、1位と2位の選手は、身長も高くバルクのある身体で、世界一を目指すのであれば大幅な増量が必要だと感じました。苛烈な戦いですが、フィジーク選手として世界一になりたいです。
━━大会以外で実現したいことはありますか?
竹下 競技者として世界一を目指す一方で、生涯現役でトレーニングを続け一般の方にフィットネスの素晴らしさを伝えたいです。私よりも才能がある選手が燃え尽き症候群になり、トレーニングから離脱していくのを見る中で、競技成績を出すことだけが全てじゃないと思うようになりました。仮に今思うように戦績が出せなくても、トレーニングを続けていれば、例えば50代で世界一になる道もあると思っています。なので、焦りがないというか、単年度の結果に対して執着はないのです。
━━最後に将来の目標についてお聞かせください。
竹下 フィットネス指導者として、INBAというWADA(世界アンチ・ドーピング機構)に加盟した団体で結果を残し、生涯ナチュラルでもここまで身体をつくれるということを証明したいです。競技で世界一になることと、一般の方にフィットネスの素晴らしさを伝えることの両立が今の課題です。今年6月ごろからボランティア活動で母校の小学校で私の考えた運動プログラムも実施できる予定です。フィットネスの普及という目標に向けて一つ前進できたこともうれしいですね。
竹下選手の減量を楽にする日常改革メソッド
エネルギー管理を日常の習慣に落とし込み、摂取カロリーをある程度固定化する
一駅分歩く、トレーニング後 20 分だけ有酸素運動するなど無理ない範囲で習慣化する
睡眠時間を削ってしまうようなトレーニング量ならば見直す竹下選手の減量を楽にする
たけした・りゅうへい
1990年10月30日生まれ。埼玉県入間市出身。身長167㎝、体重63㎏(オン)、67~68㎏(オフ)。INBA/PNBA メンズフィジークプロ。APF公認講師。2018年から本格的にトレーニングに取り組み、数年で数々のコンテストで優勝。初出場から4年目の2022年にAPFJAPAN CLASSICの Physique modelClass 30において優勝し2連覇を果たす。2025年はINBA Natural Proで3位の戦績を残す。トレーナーとしても活躍しており、近年はメディア出演なども目立つ。














