仕事、結婚、そして育児。人生の節目を重ねながらも、10年間トレーニングを続けてきた選手がいる。
公務員として働く池田開人(いけだ・かいと/30)さんの日課は、4歳の娘が眠りについた後、21時頃からジムへ向かうことだ。
「娘を寝かしつけてから、トレーニングをしています。遅いときは22時頃になることもあります」
「近さ」を優先したジム選び
限られた時間を有効に使うため、自宅から最も近い24時間営業のジムを選んだ。
「本当はゴールドジムなどにも行きたい気持ちはあります。ただ、時間が限られているので」
「時間がなくてもトレーニングさえできればいいと思って、最寄りのジムを選びました」
移動時間を減らし、トレーニングに集中できる環境を整えている。
快進撃は止まらない
その積み重ねが実を結び、2025年の『ゴールドジムJAPAN CUP』クラシックフィジーク175cm超級で優勝。
その前の2023年は、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の関東クラス別ボディビル選手権75kg超級で3位、日本クラシックボディビル選手権180cm以下級でも3位入賞を果たすなど、全国レベルの舞台で実績を残している。
今回出場したマッスルゲート東京ベイ大会では、ボディビル一般の部75kg超級優勝と快進撃を進めている。
美しさと大きさ、その両方を追い求めて
池田さんにクラシックフィジークとボディビル、それぞれの魅力を聞いた。
「クラシックフィジークは、古代ギリシャ彫刻やミケランジェロのダビデ像のような芸術的な身体を追求する競技だと思っています。ただ大きいだけではなく、誰が見ても美しいと思える身体ですね」
特に好きなポーズは、アメリカの往年の名選手であるフランク・ゼーン(Frank Zane)のバキュームポーズだという。
一方で、ボディビルについては「圧倒的なデカさ」が魅力だと語る。
「誰が見ても一目で『デカい』と分かる筋肉量や、極限まで絞った身体。限界を超えた先にしか、あの巨大な肉体は作れないと思います」
憧れは鈴木雅選手
池田さんが憧れのボディビルダーとして名前を挙げたのは、鈴木雅選手。日本ボディビル選手権9連覇を達成したレジェンドだ。
今回のフリーポーズでは、鈴木選手が2010年の日本ボディビル選手権で初優勝を果たした際に使用した、アメリカのロックバンドSurvivorの楽曲「Man Against The World」を選曲した。
逆境に立ち向かう強さと揺るがない意思を歌ったこの楽曲は、仕事と育児を両立しながら、夜遅くまでトレーニングを積み重ねる池田さんの歩みとも重なる。
継続を支える習慣
池田さんがトレーニングを続けるうえで欠かせないのが、毎回の記録だ。
「前回の自分を超えるという気持ちが大切です。そのためにも、トレーニングノートをつけることをおすすめします」
100円ショップのノートに、日付や重量、回数などを手書きで記録している。
手書きを選ぶ理由は、集中力を保つためだ。
「スマホだと通知を見てしまったりして、集中力が途切れることがあります。手書きなら余計な誘惑がなく、トレーニングだけに集中できます」
トレーニングは1時間前後。長くても1時間半で終える。仕事と育児の合間を縫うからこそ、短時間で質を高めることを常に意識している。
「時間が限られているので、いかに短時間で質の高いトレーニングをするかが勝負です」
夜9時から始まるトレーニングは、今日も昨日の自分を超えるための挑戦であり続けている。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
理工系出版社で数学書の編集者として勤務。
ゴールドジムでボディメイクに励み、ボディビル競技に挑戦中。
競技者としての経験を生かし、FITNESS LOVEでトレーニングやボディビルに関する取材・執筆を担当。
徳島県徳島市出身、神奈川県大和市在住。
取材・文:久米大郎 写真:北岡一浩











