「中学3年生のころから、この大会で優勝することだけを目指して頑張ってきました。本当に悔しいです」
8月16日(日)、京都府京都市の京都テルサで行われた『第21回 全国高校生男子ボディビル選手権大会』の表彰式が終わり、涙ながらにそう語るのは広島県立大門高等学校3年の甲斐清十郎(かい・せいじゅうろう/17)選手。170cm以下級で惜しくも2位となった。
【写真】ベンチプレス140kg! トレーニング歴4年の高校生ビルダー甲斐清十郎選手の迫力ある大胸筋を含むステージ写真6枚

まだ17歳ながら、3年前のジュラシックカップ(※)ルーキークラスでは9位、昨年の全国高校生男子ボディビル選手権では3位に入賞するなどの大会出場歴経験を持つ甲斐選手にとって、高校最後の夏となる今年の全国大会優勝への思いは人一倍強かった。
※トップボディビルダーとして活躍したジュラシック木澤さんが主催するナチュラルボディビルディングコンテスト
「これだけこの大会にかける思いが強かったにもかかわらず、仕上がりの面で反省するところが多かったです。本当に不甲斐ないと感じています。2位という結果は自分の弱さから生まれたものだと思っています」
17歳とは思えないほど厳しく、自身の結果を受け止める。ただ、その悔しさの裏には、高校生活の多くをボディビルにつぎ込んできた背景がある。
ジュラシック木澤の「中学生でも出てください」の一言で大会へ
甲斐選手が筋トレを始めたのは中学2年生の夏休みだった。
「夏休みにずっとダラダラしていて、身体の見た目と健康のためにトレーニングしないとな、と思って軽く始めました。そしたら気づいたらハマっていました」
当初は大会どころか、本格的に筋肉を大きくすることさえ考えていなかった。転機になったのが、YouTubeで目にしたボディビルダー・木澤大祐選手だった。
「2021年の日本選手権での木澤さんのマスキュラーポーズを見て、『マジでかっこいい!』と思ったんです。そこから健康目的だったトレーニングが、筋肉を大きくするためのものに変わっていきました」
それでも大会出場は、まだ先の話だと思っていた。ところが2023年、ジュラシックカップのルーキークラス募集を知る。
「木澤さんがYouTubeで『中学生でも筋肉自慢するためにどんどん出てください』みたいなことを言っていて。それを聞いて思い切って出場しました」
その当時はまだ14歳。ジュラシックカップでは最年少のボディビルダーとして出場した。友人たちは配信を見ながら応援してくれたという。
「みんなが『すごい!』と言ってくれたのは印象に残っていて、このままボディビルを頑張ろうと決めたんです」
そこから4年間、甲斐選手はステージに立ち続けてきた。今年、最も力を入れたのは胸と背中。
「胸と背中は週2回ずつやっていて、4回合わせると週120セットくらいはやっていました」
1回のトレーニングは約2時間。日によって25〜45セットほどをこなし、扱える範囲で前回よりも重い重量を狙っていくようにしているという。甲斐選手は「基本的なトレーニングしかしていないので、そんなにすごいことはしていないです」と笑うが、胸と背中だけで週120セットは十分に仰天だ。
「この成果が特に現れたのが胸でした。昨年のオフにはベンチプレスの1回最高重量が110kgだったのですが、この一年で140kgまで伸ばすことができました。ステージ上の写真を比べても、かなり胸の厚みはついたと思います」
受験とボディビルの両立の難しさを痛感 「自分を責めすぎない」
高校生ならではの難しさもある。
「今年は大学受験を控えていて、勉強とボディビルの両立に苦しみました。正直メンタルがかなりきつかったです」
そこで学校の先生と面談を重ね、一年の中で優先順位を変えることにした。増量期はエネルギーがあるうちにトレーニングも勉強も全力で行う。一方、減量が進んで勉強に集中できない時期は、できない自分を責めない。そして大会が終われば、今度は受験へ集中する。
すべてを常に100点でこなそうとせず、時期によって優先順位を変えることが、甲斐選手なりの両立法だった。
周囲との関わりにも、ボディビルを通じて変化があったという。
「心に余裕がある時期に、ちゃんと周りを見て行動して、感謝を伝えることを意識しています。そうすれば、自分が減量できつくなったときにも周りが理解してくれると思うんです。大会に向けて頑張れば頑張るほど、周りの支えのおかげで自分がいることを実感します。周りの人もすごく思いやりを持って接してくれて、僕の周りはすごく優しい世界になっているなと思います」
日本一だけを目指してきた大会での2位。悔しさは簡単には消えないだろう。
しかし今は、まず大学受験へ気持ちを切り替える。
その先に掲げるのは、自分の身体を成長させ続け、ボディビルを楽しむこと。そして大学生のうちに、日本ジュニアボディビル選手権のオーバーオール優勝、さらに地方大会での優勝を目指す。
週120セットのトレーニングも、厳しい減量も、それ自体が目的ではない。
「ボディビルを楽しむことが第一です!」
高校日本一をあと一歩で逃した17歳は、悔しさを抱えたまま、それでもボディビル競技そのものを心から好きでいる。身体を成長させるためには『好きだ』というシンプルな気持ちが最も大切なのかもしれない。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
執筆者:柳瀬康宏
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。
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取材・文:柳瀬康宏 写真:中原義史
-JBBF選手, コンテスト
-JBBF, 全国高校生ボディビル選手権










