8月23日(日)、石川県・金沢市文化ホールで行われた「第30回日本クラス別男子ボディビル選手権大会」。85kg以下級を制したのは、消防士として働く近藤孝仁(こんどう・たかひと/36)選手だった。今大会が今シーズン初戦。昨年までと比べて仕上がり体重が2~3kg増えていたことから、大会前には不安もあったという。
【写真】近藤孝仁さんのバルクと絞りを兼ね備えた肉体美

「今までより仕上がり体重が2、3kg上がっていて、『絞れてないのかな』という不安がありつつ今日を迎えました。でも実際ステージに上がったら、まあまあ及第点は取れていたかなという気はします」
結果は85kg以下級優勝。自身の成長を、日本一という形で証明した。
減量しても「米の量は絶対に下げない」
1年で大幅に身体が大きくなった要因について近藤選手が真っ先に挙げたのが、食事だった。
「食事は絶対に下げない」
減量開始時から1食400gほどの米を1日4回取っており、途中で調整を挟みながらも、最後まで食事量を大幅には落とさなかったという。
減量というと食べる量を削っていくイメージも強い。しかし近藤選手の場合、身体を動かすためのエネルギーを確保しながらコンディションを作っていった。
その結果、減量中もトレーニングの使用重量を落とさずにシーズンを進めることができた。
ベンチプレスは130kg前後。スクワットは190kgでセットを組み、デッドリフトは床引きで220kg。
「ベンチプレスはそんな強くないです」
本人はそう笑うが、減量中にもこれだけの重量を扱い続けたことが、筋量を維持したまま昨年以上の身体を作る一因になったと考えられる。
本業は消防士、現在は「予防係」
ステージで175cmの身長をバルクと絞りを兼ね備えた筋肉で覆い、注目を浴びた。そんな近藤選手の本業は公務員の消防士だ。
現在は消防隊として現場に出る仕事から離れ、「予防係」として勤務。消火器や誘導灯などの消防設備に関わる業務を担当しているという。
現在は基本的に24時間勤務ではなくなり、生活リズムやトレーニング、食事を以前より管理しやすくなったことも身体づくりにはプラスに働いたようだ。
「大会が終わったら美味しいものを食べたい」がない
近藤選手のボディメイクで特徴的なのは、食事に対する考え方だ。
本人はそれを「食事に対する幸福度を下げている」と表現する。
「みんな大会が終わったら美味しいものを食べたいとかなると思うんですけど、その感覚があんまり僕にはなくて」
もともと食事に無頓着だったわけではない。それどころか、以前は現在とはまったく違う生活を送っていた。
「元々、米を食わないで酒しか飲まないような生活だったんです」
酒はどの程度飲んでいたのかと尋ねると、
「記憶なくすまでですね」という答えが返ってきた。
しかし、ボディビルを始めて食事の重要性を実感すると生活は一変した。
「基本、米と胸肉しか食べない生活に落とし込んだら身体も変わって。別にその生活で幸せを感じるようになってきたんですよ」
かつては記憶をなくすまで酒を飲んでいた近藤選手が、今では米と鶏胸肉を中心とした食生活を日常として受け入れている。
本人いわく、現在は「食事がきつい」という感覚もほとんどない。
むしろ減量中に米を減らしすぎれば、自分にとっての満足度が下がる。そのため必要な量を食べながら絞ることが、ストレスを抑えることにもつながっている。
「短い脚」がボディビルでは武器になった
身体に関する意外なコンプレックスもあった。
「脚が短いのがコンプレックスでした」
しかし、筋トレを始めてボディビルという競技に出会うと、その見方は180度変わった。
「脚が短いと、ボディビルっていう観点にすると太く見える。それで脚が強みにもなってきたので、めちゃいいんじゃないですか」
かつて嫌だった身体的特徴が、競技では武器になった。
食生活も、仕事も、自分の身体に対する見方も、ボディビルを始めたことで変わっていった。
そして今年、仕上がり体重を昨年から2~3kg増やし、日本クラス別85kg以下級の頂点に立った。
最後に読者へ伝えたいことを尋ねると、少し考えた末に返ってきた言葉はシンプルだった。
「ボディビル最高だから、やりましょう」
記憶をなくすまで酒を飲んでいた消防士は、今では米と鶏胸肉を食べ、200kg前後の重量と向き合い、日本一の身体を作り上げた。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
文・撮影:FITNESS LOVE編集部










