「筋肉を付けるには食べなきゃ」
そう考えて空腹でなくても食事を詰め込み続けた結果、食べることも、筋トレをすることもできなくなった――。そんな失敗を経験したのが、牧野秀美(まきの・ひでみ)さんだ。
現在は週3~4日、1回1~2時間の筋トレを続け、2026年マッスルゲート東京大会ではビーチビキニ163cm以下級で3位に入賞。初めてのボディメイクコンテストで表彰台に立ち、ジャパンカップへの出場資格も獲得した。
マッスルゲートの「ビーチビキニ」は、過度な筋量や絞りを求めるのではなく、ビキニが似合う健康的でバランスの取れた身体やステージ上での表現などが評価されるカテゴリーだ。
牧野さんが現在大切にしているのは、「頑張れば頑張るほどいい」という考え方から離れ、身体と相談しながら筋トレそのものを楽しむこと。その背景には、一度頑張り過ぎたからこそ経験した大きな失敗があった。
自分を追い込むボディメイクから、「楽しむボディメイク」へ。牧野さんの身体づくりに対する考え方を変えた経験とは。
「筋肉のため」と無理に食べ続けた結果……
牧野さんが筋トレと出会ったのは、ダイエットに関するYouTube動画がきっかけだった。
もともと太っていたわけではなかったが、思春期のころから「痩せたい」「体型を維持したい」という意識があった。動画を見るうちに筋トレに興味を持ち、自宅で自重トレーニングを開始。それまで夢中になれる趣味がなかったという牧野さんだが、少しずつ身体が変化することが面白くなり、気付けば筋トレにのめり込んでいった。
やがて目標も、単に「痩せる」ことから「筋肉を付ける」ことへ変わった。
そこで取り組んだのが増量だった。
「筋肉を付けるには食べなきゃと思って、とにかく食事量を増やそうと頑張っていました」
空腹ではなくても食べる。食事回数を増やし、身体が求めていなくても「筋肉のため」と食べ続けた。
しかし、次第に常に気持ち悪さを感じるようになった。それでも食べなければ筋肉がつかないと思い無理を続けた結果、最終的にはご飯をほとんど食べられない状態になったという。
食事ができなければ、トレーニングに必要なエネルギーも確保できない。
「筋肉をつけたい一心で頑張っていたのに、食べられなくなって、筋トレをすることすらできなくなってしまいました」
身体を変えるための努力が、いつの間にか身体を変えるためのトレーニングそのものを遠ざけていた。
「頑張るほどいい」から「楽しめること」へ
この経験が、牧野さんのボディメイクに対する考え方を変えた。
「無理に食べるのではなく、自分が無理なく続けられる量を意識するようになりました」
食事だけではない。現在は身体の変化だけを追い求めず、自分の体調と相談しながら、無理なく楽しく続けることを大切にしている。
目指しているのは、ただ細い身体ではなく、女性らしさを残しながら筋肉のついたメリハリのある身体だ。
「トレーニングで鍛え上げた身体の上に脂肪を落としたときの、引き締まり方や立体感に魅力を感じたことがきっかけです」
現在も狙った筋肉をきちんと使えているのかを意識しながら、フォームや身体の使い方を試行錯誤している。
かつては、ストイックに取り組むほど結果につながると思っていた。しかし、身体づくりは一度限界まで頑張れば終わるものではない。
完璧でなくてもいい。それ以上に、長く続けられること。そして筋トレを好きでいられることを重視するようになった。
初めての大会で3位「次の大会も楽しみたい」
そんな牧野さんがマッスルゲートへ出場することになったきっかけは、職場の上司から大会への出場を勧められたことだった。
以前から興味のあったボディメイクコンテスト。初舞台となったマッスルゲート東京大会では、ビーチビキニ163cm以下級で3位に入賞した。
「ずっと出てみたかったボディメイクの大会に出て、3位に入賞することができ、とてもうれしく思っています」
しかし、ここでも牧野さんのスタンスは変わらない。
「絶対に結果を出さなきゃ」と思い詰めるのではなく、身体をつくる過程はもちろん、「髪型はどうするか」「コスチュームはどうしようか」と考える時間まで含めて大会を楽しみたいという。
「次の大会も楽しんでいきたいと思います!」
かつては、頑張れば頑張るほど身体は変わると思っていた。その結果、無理に食べ続け、好きだった筋トレさえできなくなった。
「完璧にやらなきゃと思わなくても、楽しみながら続けることで身体も変わっていく。そんなボディメイクの楽しさを伝えられたらうれしいです」
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:FITNESS LOVE 撮影:北岡一浩











