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森弘子に学ぶ!女性のための栄養学 vol.15 小豆とあんこはボディメイクの味方

森弘子

森弘子もり・ひろこ
ボディフィットネス東京大会4連覇、日本代表としてアジア大会などの国際大会に出場。トレーナーとして活動する一方、フィットネスジムのコンサルティング、サプリメント開発を行う。

※Woman's SHAPE&Sports vol.31に掲載された「森弘子に学ぶ!女性のための栄養学 vol.15 小豆とあんこはボディメイクの味方」をWEB用に編集したものです。

洋菓子より脂質やカロリーが低く、短時間でエネルギーをチャージできる和菓子。トレーニング前後の糖質補給に活用している方も多いと思います。今回は、和菓子に欠かせない「あんこ」とその素材の「小豆」を健康・ボディメイクのための栄養摂取という観点からひも解きます。

赤飯はパワーフード

小豆料理と言えば赤飯。古来より「赤」は邪気を払う色と信じられ、祝いごとなど特別な日に供されてきましたが、小豆と米の組み合わせは栄養的にみても優れており、赤飯に限らず綿々と受け継がれる食習慣には、経験則に基づく先人の知恵があることを感じます。

小豆はビタミンB類、なかでも糖からエネルギーを作り出す際に欠かせないビタミンB1を多く含みます。ビタミンB1が不足するとせっかく摂った糖質をエネルギーに変換できず疲労感の原因に。「江戸わずらい」と呼ばれた脚気が江戸時代から昭和初期にかけて流行ったのも、胚芽や糠に含まれるビタミンB1を取り除いた白米を主食にしたことが原因でした。

もともと赤飯は「赤米」を用いて作られていましたが、白米が一般化した江戸時代後期から、赤米の代用として小豆と白米が使われるようになりました。偶然の符合とはいえ栄養の側面から見ればビタミンB1を多く含む(豚肉に匹敵する)小豆と餅米を一緒に蒸す赤飯は、まさに病魔を寄せ付けない養生食たり得るものだったかもしれません。

また、アミノ酸の利用効率を良くするという点でも、米と小豆の組み合わせはベストマッチです。米のたんぱく質は、リジンやトリプトファンが基準値を下回るため、アミノ酸スコアが100に及びません。しかし小豆はリジンやトリプトファンを多く含みます。そのため米に小豆を組み合わせることで、米のたんぱく質の利用効率が高まるのです。

小豆は米の潜在力を引き出すまさに名脇役。小豆が主に東アジアの米文化圏で食されていることと、符合するように思います。

小豆の栄養機能性

小豆には多様な機能性があります。ここでは①アンチエイジング②プレバイオティクス③体重コントロールの観点から小豆の機能性をみていきたいと思います。

①アンチエイジング

活性酸素(呼吸で取り込んだ酸素の一部が通常より高い反応性を持った物質)は体内で殺菌・免疫・代謝に関わる重要な役割を果たす一方、過剰に生成されると細胞膜を酸化させてシミ・シワなど皮膚の老化や癌や心疾患など病の原因となる酸化ストレスを引き起こします。私たちの体は本来この酸化に対する防御機能を持っていますが、年齢を重ねるとその力が低下するため、抗酸化力のあるビタミンA、C、E、ポリフェノール、カロテノイド等を多く含む食品を積極的に摂る必要があります。

小豆の赤色の正体は、ポリフェノールです。詳しくは、カテキンとシアニジンといった2つのポリフェノールが繋がったカテキノピラノシアニジンAによります(※1)。

小豆は赤ワインのおよそ2倍にあたるポリフェノールを含有しています(※2)。小豆のポリフェノールはクロロゲン酸、カテキン、プロアントシアニジンなどで構成されており、強い抗酸化力を発揮しますが、ポリフェノールは水溶性なので小豆の煮汁にその多くが流れでます。昔から小豆の煮汁は消炎・利尿・緩下薬、むくみ対策などに利用され、漢方の処方でも用いられていますが、近年では血糖値抑制作用やアポトーシス誘導能があることが報告されており、その機能性が注目されています。特にフラボノイドとその配糖体が多く(※3)、小豆煮汁加工飲料の4週間摂取によって血中LDLコレステロールを低下させた報告や小豆煮汁の摂取によって血清中のトリグリセリド(中性脂肪)が抑制された報告などもあります。

ちなみに、つぶあんとこしあんについてポリフェノール量・SOD(活性酸素から細胞を保護する酵素)様活性および培養細胞における活性酸素の抑制効果を検討した研究報告によれば、つぶあん・こしあんともにポリフェノールは残存し、抗酸化活性があったものの煮汁には遠く及ばず、人間の体に対する健康効果の予測はできないと言うことです(※4)。自分で小豆を調理する場合は、ぜひ煮汁も有効利用しましょう。

②プレバイオティクス

腸内環境を整えて健康を維持するには、プロバイオティクス(ビフィズス菌・乳酸菌など)と共に、プレバイオティクス(オリゴ糖・食物繊維など)が必要です。

小豆は100g中12gもの食物繊維を含み、一般的に食物繊維豊富な食品として思い浮かぶ、さつまいも(3.8g/100g)やゴボウ(5.7g/100g)に比べてもかなり食物繊維量が多く、さらに驚きなのは、小豆は加熱をすることで食物繊維の含有量が33・5g/100gまで増えます。茹でることで食物繊維が増えるのはでんぷん質の豆類の特徴で、これは「あん粒子」を形成することによります。小豆の細胞(子葉細胞)内で熱変性したタンパク質によってでんぷんがコーティングされ、あん粒子が作られます。これによりでんぷんは細胞内に閉じ込められ、人間の消化酵素では消化できない食物繊維同様の「レジスタントスターチ」になります。これが小豆を加熱することで食物繊維が増えるメカニズムです。

このように食物繊維が大変豊富な小豆を摂取すると、「セカンドミール効果」が期待できます。セカンドミール効果とは、1日の中で最初に食べる食事(ファーストミール)が、次に食べる食事(セカンドミール)の血糖値に影響を及ぼすという理論です。ファーストミールで食物繊維の多い食事を摂ると、消化・吸収を遅らせて食後の血糖上昇を抑えるだけでなく、次の食事における血糖値も上がりにくくなるのです。

③体重コントロール

血糖値が急激に上昇するとインスリンが過剰に分泌され、体に脂肪をため込みやすくなります。よってダイエットのためには血糖値の急上昇を避けることが大切です。先に述べたように小豆はセカンドミール効果で血糖値の上昇を抑えますが、砂糖を使ったあんこを食べた場合でも、同様の効果が期待できるという研究報告があります(※5)。

A=発酵小豆80gと食パン6枚切り1枚を食べるグループ、B=市販粒あん80gと食パン6枚切り1枚を食べるグループ、C=食パン6枚切り1枚のみ食べるグループ、D=欠食のグループ、以上の4グループにおける食後の血糖値変化を比較したところ、食パンのみ食べたグループ、および欠食したグループ(C・D)に対して、発酵小豆(発酵あん)および市販つぶあんを摂取したグループ(A・B)の方が食後血糖値が上がりにくいという結果が得られました。また、発酵小豆と市販のあんにおいては食後の血糖値上昇に有意な差はなく、さらに昼食(セカンドミール)摂取後の血糖値変化についても、欠食した場合と比較すると、発酵小豆もしくは市販粒あんを摂取をした場合の方が、最高血糖上昇値が有意に低かったものの、発酵小豆と市販粒あんの間に有意差は認められなかったということです。甘いあんこでも血糖値上昇が抑制できるというのは少し驚きで、砂糖使用の有無に関わらず小豆が発揮する血糖値コントロールの力は注目に値します。

小豆のポリフェノールに血糖値の上昇を抑える作用があることを明らかにした報告もあります。三重大学と井村屋株式会社の共同研究は、小豆および煮小豆に含まれる糖分解酵素を抑制する(血糖値の上昇を抑える)成分を複数特定し、そのうちの一つが加熱されても活性を失わず、より効果的に働くことを明らかにしています(※6)。

こうした研究報告を考え合わせると、和菓子が洋菓子よりも太りにくいのは、単に脂肪分が少なくカロリーが控えめなだけではなく、小豆の特性に起因する要素が働いているのかもしれません。

注目の「発酵小豆」

最近「発酵あん」が注目されています。砂糖を一切使わずに小豆を麹発酵することで、優しい甘さを引き出したヘルシーなあんこです。発酵あんの糖組成は発酵によって生じたD-グルコース(ブドウ糖)がほとんどなので(※7)、体に素早くエネルギーをチャージできます。トレーニング直後に摂取するなら、スクロース(二糖類)が多い普通のあんこよりメリットがあるのではないでしょうか。

先にも述べたように、血糖値上昇抑制という観点では、砂糖を使ったあんこに対する発酵あんの優位性は認められていません。また、発酵した小豆を対象にした研究論文はまだほとんどなく、私が調べた限りでは発酵あんの健康効果に関するエビデンスはあまり見当たらないのですが、麹による発酵という過程を経ているので、発酵食品一般の効果を期待することはできるでしょう。麹には、アミラーゼやリパーゼ、プロテアーゼをはじめ、30種類以上もの酵素が含まれていて消化吸収の促進や腸内の善玉菌を増やす働きがあります。小豆の食物繊維によるプレバイオティクスと相まって、腸内環境への好影響が期待できそうです。

※1 2019年に名古屋大学などの研究グループによって、小豆の赤色色素として発見された。それまでは小豆の赤はアントシアニンが主成分だと考えられていた
※2 小豆100gあたりポリフェノール300~600mg。参照「アズキ新品種のポリフェノール含有量と新規調理法によるその変動」ホクレン農業協同組合連合
※3「アズキ熱水抽出物の成分とその抗酸化能」堀由美子 他 昭和大学薬学部)
※4「小豆餡のポリフェノール量,SOD様活性および培養細胞における活性酸素の産生抑制」東京慈恵会医科大学 日本食品科学工学会誌第62巻第7号2015年7月
※5「発酵小豆摂取が食後血糖値上昇に及ぼす影響 -発酵小豆のセカンドミール効果について-」
※6「小豆に含まれる糖代謝酵素阻害成分」井村屋株式会社・開発部研究チーム、三重大学・生物資源学研究科・栄養化学研究室)
※7「発酵あんの開発と物理化学的特性」日本食品科学工学会誌第71巻参照

ヘルシー!おいしい!ふたつのあんレシピ

発酵あん森弘子

【材料】(作りやすい分量)
小豆…150g、米麹(乾燥)…150g(板状の場合はバラバラにほぐしておく)、小豆のゆで汁(足りなければ水を足す)…200ml、塩…少々

【作り方】
①茹でた小豆(下記レシピ参照)と煮汁を分け、60℃まで冷ます。煮汁は計量し、200ml用意する。足りない場合は水を加える。小豆が熱いと米麹の糖化が進まないので、60℃に冷ますこと。水分が少ない場合も糖化が進まないので、水分量に注意する。
②炊飯器に①の小豆、米麹、塩を加え、混ぜ合わせる。
③炊飯器に内釜をセットし、ぬれぶきんをかけ、フタを開けたまま8~10時間保温する(ヨーグルトメーカーで行うと簡単。設定温度は60℃)。
④4時間以上経っても水分がない状態の場合、60℃の湯を少し加える。炊飯器のフタを閉めると70℃前後の高温になり糖化を妨げるので、必ず開けた状態で保温する。
※仕上がりは粒状(上画像左上)。潰すとまた違う食感が楽しめます(上画像右下)

茹で小豆【材料】(市販小豆1袋分)
乾燥小豆…200~250g【作り方】
①小豆をたっぷりのお水でやさしく洗う。
②大きめの鍋に小豆を入れて、たっぷりの水を加えて強火で加熱する。
③沸騰したら煮汁を捨てアクを取る(=渋切り)。
④小豆に対し4~5倍の水を入れて加熱、沸騰したら弱火で煮る。40~50分、指で潰せるほど豆が柔らかくなるまで煮る。
※味付けする場合は、小豆が完全に柔らかくなってから砂糖を加える

ボディメイクのための小豆レシピ

発酵あんフルーツぜんざい森弘子

【材料】(3人分)
発酵あん…好みの量、好みのフルーツ…好みの量、米粉(白玉粉、団子粉でも)…100g、絹ごし豆腐…150g

【作り方】
①団子を作る。米粉と絹ごし豆腐を良く混ぜて、好みの大きさに丸める。沸騰した湯に入れて、浮いてくるまでしっかりと茹でる。茹で上がったら冷水にさらす。
②団子、発酵あん、フルーツを盛り合わせる。

小豆入りハンバーグ森弘子

【材料】(2~3個分)
合挽き肉…250g程度、玉ねぎ…1/2個、茹で小豆…80g、卵…1個、塩…小さじ1/3、胡椒…少々

【作り方】
①玉ねぎをみじん切りにして、レンジで4分加熱もしくはフライパンで炒める。
②ひき肉に茹で小豆と塩を加え粘りがでるまでよく混ぜ、①の玉ねぎ、卵、塩、胡椒を入れてよく混ぜる。
③2~3個にわけて成形する。
④フライパンで両面軽く焦げ目がつくまで焼き、水50mlを加えフタをして蒸し焼きにする。
※つなぎのパン粉は不要。甘い小豆が苦手な方、肉料理のカロリーをダウンしたい方におすすめのレシピです

文・写真・レシピ_森 弘子

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