2025年5月31日、神奈川・カルッツかわさきで開催された、60歳以上のためのスペシャルフィットネスイベント『還暦スター誕生』。出場者の挑戦する姿や人生そのものが舞台に輝きを添えるこの大会で、初の栄冠を手にしたのが高井綾子(たかい・あやこ/65)さんだ。
この日、高井さんは「ウーマンズレギンス60歳以上の部」で見事優勝、「ドリームモデル60歳以上の部」でも3位に入賞と、努力が最高の形で実を結んだ。
「もう嘘みたいな結果で感動しています! 特にウーマンズレギンスは、これまで4位以内にも入ったことがなかったので、本当に驚いています」
本格的にトレーニングを始めたのは、なんとわずか1年前。それまで20年以上ジムに通っていたものの、自己流のトレーニングに限界を感じ、昨年6月からパーソナル指導を受け始めた。
「昨年のゴールデンウィーク、アメリカにいる息子たちに会いにいくという、私としてはすごく大きな目標を達成して、ふと『次は何をしよう?』と思ったんです。それで思い浮かんだのがパーソナル。自己流では自分にとって何が本当に必要なトレーニングなのか、よく分からなくて」
ジムで指摘されたのは、まさかの「お尻、ぺったんこだよね」のひと言だった。
「細くて体重も増えにくい体質なんですが、下半身の筋トレは全然してこなかったので……。それでお尻づくりを頑張るようになりました。背中や肩の筋肉をつけるとウエストが細く見える、なんていうことも知らなかったので、1年で身体が劇的に変わったと思います」
挑戦のモチベーションとなったのが、コンテストという目標だった。昨年11月に地元・静岡大会でコンテストデビューを果たし、今年の川崎大会でも健闘。だが、地方大会では50歳以上のカテゴリーで、10歳以上若い選手たちと競うこともしばしば。結果に悔しさを感じることもあったという。そんな中で出会ったのが「還暦スター誕生」という舞台だった。
「トレーナーの先生が『60歳以上限定の大会があるよ!』と教えてくれて、同年代ならハンディが少ないかもと。ところが、ふたを開けたら27名もエントリーしていて、地方大会よりむしろ厳しい(笑)。だからこそ、優勝できたのはまさに奇跡のようでした」
成果の裏には、ポージング技術の積み重ねもあった。
「今回は、大円筋や肩の出し方をコーチに教えていただくなど、半年以上かけてマッスルコントロールを習いました。そうした筋肉の見せ方も含めて、評価していただけたのかなと思います」
年齢を重ねた今だからこそ、トレーニングの魅力と大切さをより実感できると高井さんは言う。
「この年齢で身体が変わるとか、自分の中の何かが向上することって、なかなかないこと。それが本当に励みになるので、同世代の方たちにも、ぜひトレーニングをお勧めしたいです。筋肉は、使わなければどんどん落ちてしまいますし、大会に出なくても、体型をキープしたいという気持ちで前向きに取り組むだけでも素敵なことだと思います」
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:藤村幸代 撮影:中島康介