コンテスト

サイドレイズ795回! 「時間が許されるのなら、ずっとジムにいたい」 ビキニフィットネスの新星が語るトレーニング愛

小倉あれず選手トレーニング歴わずか2年半で躍進を遂げた小倉あれず選手。ビキニフィットネス界で脚光を浴びる小倉選手の武器は丸みのある下半身。以前は弱点部位だったというが、いかにして改善したのか。そこにあったのは飽くなき探究心とトレーニングへの愛だった(ウエイトトレーニング専門雑誌『IRONMAN2024年3月号』より全文掲載)。

【写真】小倉あれず選手の丸みのある下半身

自己流ダイエットの失敗を経て

――ビキニフィットネスを始めたきっかけは、スポーツ引退後のダイエットだったそうですね。

小倉 小学校4年生から12年間、バレーボールを続けてきました。母が競技者だったこともあって「どうせやるなら強いところで」との勧めを受けて、地元のクラブチームから強豪校に進みました。

――「強いところで」との勧めをすんなり受け入れるあたり、身体を動かすのはもともと好きですか?

小倉 好きでしたね。バレーボールに出合う前はタレントスクールに所属していて、ダンス、歌、演技などをしていましたし、空手とスイミングもやっていました。

――幼少期からずっと生活のなかである程度の運動量が確保されていたのですね。

小倉 なので、学生時代も食事量に気を使わなくても自分の身体に頭を悩ませることはなかったのですが、競技を引退した途端どんどん身体が変わってしまったんです。特に下半身、大きなお尻と太い脚がコンプレックスになってきて、どうにかしなきゃ!とダイエットを始めたのですが……。

――うまくいかなかった?

小倉 体重を10㎏落とすことには成功しました。でも、食べずに動く方法だったので、食べたら元に戻ってしまう。そこから食べることが怖くなって拒食の症状が出た時期もあったので……うまくいっては、ないですよね。

――そこからトレーニングを始めて、ビキニ競技に出合った。

小倉 母が勤める整骨院に併設のジムがあって、やってみようかなと思ったんです。バレーボールをしている時は体幹トレーニングや有酸素運動くらいしかしてこなかったので、身体を変えるキッカケになるかなと。そこでビキニフィットネスの存在を知ったわけですが、大きな下半身というコンプレックスを生かせる世界があるとは思わず「ここが私の居場所かもしれない」と、ビキニに挑戦したいという気持ちからトレーニングを始めました。

筋トレは、自分だけの角度を探求

小倉 はじめは、ざっくり上半身と下半身で鍛え始めました。そのあと競技をもっと知りたくて、長瀬陽子さんとお話をさせていただいたところから急展開。当初は翌年の大会出場を考えていたのですが急きょ3カ月後、2021年9月の栃木オープンに出場することになって、トレーニングと減量とポージングを同時進行で進めることになったんです。

――筋トレや食事の知識は……。

小倉 自分で調べまくりました。3カ月という短期間だったのもいい方向に働いて、集中して取り組めたように思います。特に筋トレが楽しくて! 週6回、2時間以上やっていました……(笑)。

――取り組みは独学とのことですが、取材した脚トレも教科書的ではないものが多く見られました。

小倉 はじめは教科書通りに実践して、次にそれを土台として、身体を動かしながら本当に狙いたい場所に効く、自分だけの角度や方法を探っていくんです。見つけたらそれを逃さないように、とことん追求していくという流れです。

――「本当に狙いたい場所」とは、主導筋でしょうか。

小倉 そうです。いかに補助筋群を使わず、ピンポイントで主導筋に効かせられるか。例えば、今日はお尻とハムのトレーニングの日。大腿四頭筋の日は別に設けているので、できる限り疲労させないようにしたいわけです。

――頼るのは、自分の感覚。

小倉 人によって身体は違うじゃないですか。基本とされる動きが自分に当てはまるとは限らないですし、自分の身体は自分にしかわからないので、実際に身体を動かしながら時間をかけて探る必要があるプロセスだと感じています。

楽しく続けるコツは、気分優先

――トレーニングノートにある「1〜2種目は高重量を追って筋肥大、3〜7種目は中重量×ハイレップで筋密度を狙う」に沿ってメニュー構成していますか?

小倉 基本的には、そうです。仮にこの流れを逆にしてしまうと重量が扱えなくなってしまうので、はじめにガツン!と挙げることだけを考えて高重量を求めます。また、最初に強めの刺激を入れておくことで、後半に入ってからも効かせたい場所へ意識を向けやすい感じがします。でも、高重量、中重量、低重量と1週間ごとに分けて取り組む時期もあります。

――取り組みを変えるタイミングは、それも感覚でしょうか。

小倉 そうです(笑)。もちろんトレーニングノートを見返して全体のバランスは整えつつも、結構その時々の気分を優先しがちではありますね。理由は、やっぱり楽しんでやりたいからです。

――TO DOを定めないことが、

小倉選手にとっての「楽しい」につながりますか?

小倉 例えば、私はルーマニアンデッドリフトが好きで、ハマると何セットでもやりたくなってしまうんです。でも、1回につき3セットと定めると「もうちょっとやりたいのに!」と窮屈に感じます。気持ちを抑え込んで、満足していないのに切り上げて別の種目に移るのが小さなストレスとして蓄積されてしまうので……。だから10セットやりたい!と思ったら、やるようにしています。

――気持ちのままに動いた結果、これくらいやり続けた……みたいなエピソードはありますか。

小倉 一昨年、脚が弱いと講評を受けて、あまりに悔しくてレッグエクステンション何時間できるか(歩けなくなるか)ゲームに挑戦して、1時間半やりました。あとは全種目100レップチャレンジもやったことがあるのと、こないだサイドレイズを数えたら795回でした。トレーニングが好きなんですよ。時間が許されるのなら、ずっとジムにいたいです。

――脚が弱いとの講評は、今では考えられないですね。

小倉 本当に悔しかったので、脚トレを週3回+筋肉痛がなければ毎日必ずトレーニングの最後にレッグエクステンションとレッグカールを3セットの間、重量を追いまくるようにしました。あまりに苦しくて、泣きながら、時には吐きながら、でも必ず未来の自分に生きてくるはずだと信じてやりましたけど、正直この時は脚トレをするのが怖いくらいでした。

――先ほどの「楽しい」と、矛盾がありませんか?

小倉 トレーニング中は本当に苦しくて辛くて怖いのに、終わってみると「楽しい」なんです。こんなに苦しいこと、頑張っちゃった私すごくない?みたいな(笑)。

――とことん追求するスタイルはバレーボール時代から、ですか?

小倉 バレーボールも好きでしたが、実は練習中はずっと窮屈な感じがあって、今のように自由に自分のやり方で楽しむ雰囲気とは違いましたね。当時は、何に窮屈さを覚えているのか自分でもわからなかったんですけど、トレーニングを始めてから「私は、ほかの人と少し違う考えをする傾向にあるんだな」と感じるようになって、つまりは団体競技よりも個人競技のほうが向いていたんだな、と感じているところです。

――ところで、それほどまで追い込んで疲労は蓄積されませんか?

小倉 減量末期はしんどかったです……。帰ろうと車に乗り込んだままジムの駐車場で寝落ちたことがありました(笑)。でもビキニ競技のために取り組むことは、すべて自分が好きでやっているので、疲れてもキツいとは感じないです。むしろ、こんなに楽しんでやっているのだから目標を必ず達成させようってモチベーションアップにつながっています。

――メンタルがブレそうになる瞬間はありませんか。

小倉 ありますよ。減量期間もそうですし、去年のスポルテックで結果が出せなかった時は、筋トレをする気も起こらなかったです。そういう時は一旦全部を止めて、心が落ち着いてから再開します。生活のすべてを競技にかけてはいるものの、あくまで趣味。それが原因で周囲に迷惑をかけるのは違うなと思うので、壁にぶつかったら、一旦リセットをかけて、普通の人間に戻る時間を作ります。

自分の可能性を誰よりも信じる

――競技歴2年半で世界トップレベル。短期間で好成績を残した要因をどう分析していますか。

小倉 キャリアが浅い事実に甘えないことかなと思います。審査に競技歴は関係ないじゃないですか。なので、立ち居振る舞いや表情などのステージングから、キャリアの浅さが見えないような努力を心がけています。例えば、去年は誰よりも長い時間ヒールを履いたと胸を張って言えます。トータル、みんなの6年間ぶんくらいの時間は履きました。

――競技にかける時間の差を埋めるための努力ですね。

小倉 あと、私は現状に満足することがありません。初戦で優勝した時も昨年のグラチャン3位もアーノルド4位も、自分を褒めたことがないんです。自分の可能性を誰よりも信じて「私なら絶対にここまでいける!」と日々、自己対話を繰り返しているのも、要因のひとつかもしれません。

――では「私なら絶対にここまでいける」と掲げる、今シーズンの目標をお聞かせください。

小倉 出場大会、すべてで優勝。ティアラが欲しいです。

――最後に小倉選手にとってのビキニ競技、トレーニングとは?

小倉 宝物です。競技とトレーニングを始めなかったら出会えなかった素敵な人がたくさんいますし、今までの人生で自分自身を好きだと思うことはなかったんですけど、ビキニのステージに立っている時の自分だけは、大好きなんです。そんな自分にこの人生で出会えたことに感謝をしています。

※小倉あれず選手のトレーニングは、発売中の『IRONMAN2024年3月号』に掲載している。

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取材・文:鈴木彩乃 撮影:舟橋賢 大会写真:中島康介

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佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手