「やれることは全部やってきた」。初めてのボディコンテストでカテゴリー表彰を控え、THE RAMPAGEのパフォーマー、後藤拓磨(ごとう・たくま/27)さんは、準備してきた日々をそう振り返った。
タンニングで黒く仕上げた精悍な顔つきには初舞台に挑んだ覚悟がにじみ、トレーニングの話に応じる姿には、純粋に筋トレを愛する一人のフィジーク選手の横顔があった。
10月18日(日)、東京都の武蔵村山市民会館で開催された「APF ALL OUT CHAMPIONSHIPS 2026」。後藤さんは、フィジークモデルのファーストタイマー+174.5cm、ニューカマー+172cm、クラス20+171cmで優勝し、デビュー戦で3冠を獲得した。結果を知る前に語っていたのは、身体づくりへの夢中な思いと、初めての舞台で感じたファンの存在だった。
【写真】後藤拓磨さんのバキバキに割れた腹筋

「自分はどこまで通用するんだろう」
もともとトレーニングが好きだった。特に昨年からは、「完全に筋トレにどっぷりはまっちゃった側の人間」と自身を表現するほど、筋トレに熱中するようになったという。
YouTubeなどでレベルの高い選手たちの姿を見るうちに、競技への関心が芽生えた。身体が変わってきた実感もあり、自分もその舞台に立ってみたいと思うようになった。
「戦っている人たちの姿にすごく感銘を受けて。せっかくここまでトレーニングが好きで、身体も良くなってきたんだったら、どこまで通用するんだろう」
自分の身体には、どれほどの可能性があるのか。今、どの位置にいるのか。それを確かめたいと思ったことが、出場のきっかけだった。
複数の団体を検討する中で、APFの盛り上がりにひかれ、今の自分に合うと感じて出場を決めた。9月にはSNSで「優勝します」と宣言。パフォーマーとしての活動と並行して、一人の競技者として身体を磨いた。
5カ月かけて作り込んだ身体は「作品みたいなもの」
大会に向けた減量期間は5カ月。食事を調整し、トレーニングを重ねて準備した。ステージを終え、カテゴリー表彰を控えた時点で、やれることは全部やってきたと胸を張れたという。
減量にきつさを感じることはあった。それでも、振り返ったときに強く残ったのは楽しさだった。
「何より楽しくできたなというのが、自分の感想です」
ひとまずステージを終えた安堵とともに湧いてきたのは、「これ、終わってしまうんだ」という寂しさだった。
「せっかくここまで作り込んだ自分の身体、作品みたいなものが、まずは一旦ここで終わりを告げるっていうのが、すごい寂しい気持ちもあったりとかして」
大会に向けて身体を作り込む時間そのものに、それほど夢中になっていた。やり切れたかを尋ねると、「もう悔いがないですね」と答えた。
ファンの顔と声援が、不安を溶かした
充実した時間の一方で、準備の過程では孤独を感じることもあった。いろいろな人に支えてもらっていても、一人で向き合う時間は少なくなかったという。
ライブでステージに立ってきた経験は豊富だ。それでも、初めて挑んだフィジークの舞台には、普段のライブとは違う不安があった。
その気持ちを変えたのが、会場に駆けつけたファンだった。いざステージに出て、客席の顔を見て、声援を聞く。その瞬間、不安が一気に溶けたように感じたという。
「完全に僕のスイッチをオンにしてくれた」
ここまで本気で準備してきたからこそ、支えてくれる人の存在を、いつも以上に強く感じた。
「僕って、本当にいろんな人に支えられながら生きているんだな」
「一人でやっているんじゃないな」という感覚が、今回の挑戦でより強くなったという。ファンに伝えたい思いを尋ねると、まず会場に足を運んでくれたことへの感謝を口にした。
普段はグループのパフォーマーとして立つステージに、この日は一人のフィジーク選手として上がった。その挑戦の場にも届いたファンの声が、後藤さんの背中を押した。
「ファンの皆さんへの感謝の気持ちが、より強くなったなって思いますね」
【ワンポイント用語】
■THE RAMPAGE(ザ・ランペイジ):16人組ダンス&ボーカルグループ。2017年、シングル「Lightning」でメジャーデビュー。後藤拓磨はパフォーマーとして活動している。
■APF(エーピーエフ):Asia Physique Federationの略。フィジーク、ビキニ、ランウェイモデルなど、多彩なカテゴリーのボディコンテストを開催する団体。
■ALL OUT(オールアウト):トレーニング用品やフィットネスウェアなどを展開するブランド。今回の「APF ALL OUT CHAMPIONSHIPS 2026」のメインスポンサーを務める。
■フィジークモデル:サーフパンツ姿で、身体の形やバランス、適度な筋肉の発達、ポーズや立ち居振る舞いなどを審査する部門。
■ファーストタイマー:APFのフィジークコンテストに初めて出場する選手が対象のクラス。
■ニューカマー:初心者向けのクラス。APFでは、2022年以降に同クラスで3位以内に入賞した選手は再出場できない。
■クラス20:20~29歳の選手が対象の世代別クラス。
執筆者:久米大郎
数学書の編集者、フィットネスライター。都内の出版社に勤務する傍ら、自らもボディビル競技に取り組む。2024年マッスルゲート埼玉大会ボディビル65kg以下級3位、2025年東京ノービスボディビル選手権大会男子ボディビル55kg以下級2位。筋トレ情報サイト「FITNESS LOVE」では、競技者としての経験と編集者の視点を生かし、選手の挑戦や身体づくりの工夫を伝えている。徳島県徳島市出身、神奈川県大和市在住。
取材・文:久米大郎










