優勝以外、知らない男。初めて大会に出場したのは2022年の兵庫県オープン大会。そこから今年に至るまで、出場した大会は全て優勝を飾っているのが奇 埈成(きい・しゅんせい/24)という男だ。
9月29日(日)、岡山県で開催された『JBBFオールジャパン フィットネス チャンピオンシップス 2024』は、今年の奇選手の初戦だった。
「去年は初めてのオールジャパンだったので緊張していましたが、今年は緊張しなかったです。去年より“成長を見せる”こと、そして10月6日(日)に行われるグランドチャンピオンシップス(以下、グラチャン)に向けて、ここでしっかり獲りたいと思っていました」
その言葉通り、メンズフィジーク180cm超級で1位を獲り、去年に続いて2連覇。その結果に本人は「まずは安心しました」と顔をほころばせながら話してくれた。去年と比べ、一回りサイズアップしたように見える、と伝えたら奇選手自身も成長を感じているとの答えが。
「特に僕のいる階級はみんなフレームが大きいです。そこに対抗しながら、重視されているアウトラインは残してフィジークらしさを保つ。全体的にバランスよく大きくしていくことができました」
ステージ上の彼の顔は柔らかな表情を浮かべているが、首から下は驚異的に引き締まり、力が抜けることがない。いつ見ても筋肉のセパレートがはっきりと浮かび、素晴らしい仕上がりだが、奇選手は来週のグラチャンに向けて、「もう一段階コンディションを上げていく」という。
グラチャンは彼にとっての初舞台だ。去年、出場をしなかったのは「自分の身体に納得がいかなかった」ことが理由だが、今年はグラチャンでのTOP6 入りを狙う奇選手。
「今回の優勝で慢心せず、緊張を切らさないように残りの1週間を過ごします。そして後悔がないように全てを出し切ることに全力を注ぎたい。身長の階級差がなくなるので、他のトップ選手たちとどう見えるのか、僕自身も楽しみなんですよ」
メンズフィジークには、オールジャパン176cm以下級で4連覇・グラチャンで2連覇をしている伊吹主税選手という存在がいる。「優勝以外、知らない男」はどんなステージを魅せてくれるだろう。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材:小笠拡子 撮影:中島康介