怪我や病気はいつ何時起こるか予測できないものだ。それはアスリートでも例外ではない。専門家に相談、受診し、適切な治療で乗り越えたビキニフィットネス選手、町田加奈子(まちだ・かなこ/46)選手の体験談には多くの学びがあるのではないだろうか。
「2024年5月。特に何かをしたわけではなく突如股関節に痛みが出て、日に日に酷くなり、歩くこともフィットネスバイクを漕ぐこともできなくなりました」
突然の股関節の不調。町田選手はクリニックへ駆け込んだ。
「これは普通ではないな…と東京スポーツ&整形外科クリニックで股関節博士の宇都宮啓先生に診察していただき、『股関節唇損傷』という怪我であると伝えられました。状態はかなり悪く、今を逃すと内視鏡手術はできなくなり、人工関節手術しかなくなると言われました。内視鏡手術って簡単なのかな?と考えていたのですが大間違いで、人工関節手術よりもリハビリ期間は長く、『3カ月はアウタートレーニング禁止!入院も1週間』とのことで驚きました」
クリニックの紹介で、どの程度で復帰できるのか、どのくらいリハビリが必要かなど、じんどう接骨院アスリートの畑中仁堂先生にもみてもらい、具体的な相談をした。
「仁堂先生に、『すぐ手術!そしてすぐ復帰できる!いい筋肉している!』と前向きに言っていただき、諦めかけていた『9月のオールジャパンに出る!手術もする!』とそこで覚悟を決め、6月18日に宇都宮先生に内視鏡手術をしていただきました」
専門家の助言に後押しされ、手術を決断した町田選手。
「『傷が目立たないように』『すぐに復帰できるように』、通常の2倍以上の時間をかけて手術してくださったそうです。おかげで、退院後すぐに歩くこともでき、少しずつトレーニングも再開できました」
こうして挑んだ9月のオールジャパンフィットネスチャンピオンシップス45歳以上160cm以下級では2位に入賞することができた。怪我、手術を経験する中で「できる範囲でベストを尽くせたことがよかった」と町田選手は言う。
「もともとは目標に向かって進むときに完璧な準備ができないならやらない!という考えでしたが、100か0かではなく70%でも気持ちが切れることなくしっかりやり切れたことが精神的に成長を感じた部分でした」
町田選手は12月の世界選手権にも出場し、マスターズ45歳~49歳で7位の成績を収めた。現在取り組んでいることがあるという。
「エラーを出さないためのインナーの強化、左右差の改善など、メンテナンスやリハビリのような地味なことをコツコツとやっています。怪我の防止はもちろん、それがポーズをとったときに大きな違いとなって出るのではないかと考えています」
最後に今年の目標を聞いた。
「オールジャパンに出場し、自分の満足のいく身体に仕上げることです。毎年同じ目標ですが、まだ満足できたことはありません。2025年も今までと変わりなく自分の身体と向き合っていきますが、旅行やパートナーのサポートなど、プライベートの比重も増やし、視野を広げてボディメイクをしていきたいと考えています。目標のためにプライベートを犠牲にせず、目標があるからプライベートがより充実する!を意識していきたいと考えています」
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材:あまのともこ 撮影:中島康介、中原義史(世界選手権)