引き締まった下半身、特に美しい後ろ姿に憧れる女性も多いだろう。「下半身を育てるためには何かを変えないといけないと思って、フリーウエイトでのトレーニングを始めたんです」と、国田海月(くにだ・みづき/25)さんは言う。
国田さんは営業マンとしてフルタイムで働きながら、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)のビキニフィットネス競技で活躍する選手。2024年度は前年度からの競技成績が飛躍し、注目度の高い選手だ。
そんな国田さんが教えてくれた「下半身の育成法」、そして「トレーニングへの向き合い方」とは。
ハムストリングを強化した2種目
中学・高校では中距離走をしていたバックボーンがあり、大学1年生(19歳)からボディメイクの道に進んだ国田さん。部活を通して「早く走る」ためのトレーニングを積み、大腿四頭筋は発達していたが、一方で後ろ側は発達の余地がまだまだ十分にあった。
「お尻の丸みは中学生のときから行っていたウエイトトレーニングで培ってきた素地がありました。ただフリーウエイトではなく、マシンでずっと同じ種目で筋肉を育ててきて。ビキニフィットネスに出場するための身体を作りこむには、これまでと何か変える必要があると考えました。そこでフリーウエイトのスクワットとリバースランジを取り入れたんです」
こういったフリーウエイト種目を取り入れたのは国田さんが大学3回生(21歳)のとき。最初は重さが持てなかったそうで、とにかくフォームを丁寧に、自分ができる限りの回数をこなしながら少しずつ使用重量を伸ばしてきた。
今でも下半身強化のためにこの2種目を積極的に取り入れている。ボリュームがありながらも引き締まった後ろ姿の秘密は、ここにあったようだ。
筋トレサイクルは柔軟に
「仕事柄、出張や会食が入ることがよくあります。何曜日にこの部位をやる!と決めてしまうと、どうしてもトレーニングができない日がある。そのためライフスタイルに合わせて、かっちり決めすぎず、前後で組み替えて柔軟にトレーニングしていますね」
フルタイムの営業マンとして働いている国田さんは、トレーニングルーティンの考え方をこのように教えてくれた。フルタイムで働いている営業マンだからこその組み方だ。また、その時期の課題に合わせて分割なども変えているという。
例えば、2024年のシーズンに向けて初期は「脚の前側」、「脚の後ろ側」、「背中&肩」、「肩&腹筋」の4分割で組んでいたが、シーズンが進むと下半身強化のために上半身は1日で収めてしまうという具合に。
真摯に自分の身体とトレーニングに励んできた国田さんだが、2024年の初春か初夏まで体調を崩していたという。「今年は大会出場を見送った方がいいかもしれない、と佐名木宗貴コーチとも話していた」と言うほど、症状は重かったようだ。
「とても悩みましたが、2カ月弱トレーニングも減量も完全に休みました。多分行っても今までのトレーニングはできなかったでしょうし、『休む』と言う選択をしないと自分の生活で一番大事な仕事にも支障をきたすと思って」
「休む」選択肢をとったことで、自然に競技と身体に向き合う時間ができた。国田さん曰く、「この時間があったから熱意を持って、ステージに立てた」そうだ。結果、JBBF主催の『オールジャパン』の身長別では2位、『グランドチャンピオンシップス』では6位入賞という飛躍した1年に。
今年の目標を伺ってみると、力強くこう答えてくれた。
「2025年シーズンの初戦は8月に行われるスポルテックカップです。昨シーズンは体調のこともあって、この大会の出場を断念しました。あのときから現在まで、スポルテックカップでの優勝を最重要の目標として捉えています。その後の目標もありますが、まずは1歩ずつ着実に。8月1日、優勝できるようしっかり合わせてがんばります!」
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピング講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:小笠拡子 撮影:中原義史・中島康介